【短編】ある晴れた日の午後5
ディスプレイ変更とは、月に1、2回の頻度で本社からの通達があり、決められた服をメインディスプレイとして飾り、販売強化をしようと言うもの。
もっと詳しく言うとそのシーズンにその店が売り出したい物やテーマがわかるので、店長や副店長はこの指示書を元にお店のレイアウトや売筋を作るヒントにする。
指示書には、マネキン通称ボディに着せる商品名、色、全体レイアウトが記載されているので該当商品を店内から掻き集める事から始める。
大体は指定の通りの商品で展開出来るが、まれに欠品している場合は、代換商品を探すか、発注をかけなければならない場合がある。
今回は、問題なく全商品が揃った。
12月の中盤、クリスマス前の期間は、クリスマスディナーを彷彿とさせるエレガントでラグジュアリーな気品を漂わせるコーディネート提案である。
1体目:モックネックラメ入りシャギーKNT(ニット)(白)+千鳥柄フレアスSK(スカート)+フェイクレザーベルト+ロングブーツ
2体目:フェイクムートンCT(コート)(白)+パールボタンクルーネックカーディガン(赤)+タック入りテーパードPT(パンツ)+丸トゥパンプス
今回は店頭の入口の端と端に1体ずつ配置するようにした。
ボディは、首下から太もも付け根までを型どったもので、底面部からは支柱となる棒が伸びており、ボルトで固定されている。
このボルトを緩めて棒から外し、ボディを持ち上げて商品を着せていく作業なのだが、片手でやろうとするとわりと難しい。
独特の体勢を取り、ボトムスから素早く着替えさせていく様は多分職人芸に近いなといつも思いながら作業を進めていく。
やっと2体を着せ終えた所で、入口のネットが少し空いた。
「お疲れ様です。納品ですー」
台車の上に積まれた段ボール通称パッキン4段分が店内に入場してくる様を目撃して、私達は少しだけ、時が止まっていた。
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