小説【dimbud 1 ユイト】
「廊下に立ってなさい」が体罰認定されたのはここ数十年の話だと言われたけど、実際はなくなっていないと思う。
現に今、ぼくは立たされている。
2階のベランダは、通りから少し奥まった所にあってかつ僕の背丈だと外からは見えない高さになっている。これらを巧妙に利用したのはママの凄いところだ。
パパは、時々ぼくがベランダに閉め出されるのを知らない。いつか本当にピンチがくるまでは切り札として取っておこうとしている。
あと、裸足で放り出された時は頭に来たのでゲーム機で足が見える写真とベランダで青ざめている写真を取った。
何かあったらこれを提出する。
仕方がないからベランダの塀と手すりの間から外の様子を観察する。
散歩の人やランニングの人が通る程度だ。
この街は老人ばっかだというママの口ぶりを真似て声に出してみる。
「この街はジジババばっかだな!」
大きい声を出しても、通りからぼくの姿は見えないから、少し大きな気持ちでいる。
上の方に視線をやる人の場合はすぐに隠れて(そもそも見えないけど)その場をやり過ごそうとする。
けど、今日もやつがやって来たから、今日こそ物申してやろうとぼくはいきごんだ。
やつは、いつも青いウインドブレーカーに白い帽子だ。そして、歩き煙草をしていた。
やつはうちのベランダから見える位置にある側溝の穴にぎゅうぎゅう吸殻を押し込んでいた。
僕の家の前を汚すやつを、僕は許せなかった。
「おい!!」