#70 「都城市」って何者??ふるさと納税全国トップ市町村

ふるさと納税全国市区町村マップ(令和5年度)」(NHK)によると、令和5年のふるさと納税のトップは宮崎県の都城市だそうです。ひとえに、「返礼品の集客力が全国でナンバーワン」ということになります。ふるさと納税による受入額が193.84億円と凄まじい金額を集めています。


日経の「実質収支全国マップふるさと納税のリアル(20231225日公開2024925日更新)」によると、都城市は流出金額が2.6億円だったので補填金2億円弱も合わせて寄付金の実質税収額は193億円だったそうです。


都城市(人口16万人)と比べて人口がちょうど10倍の福岡市(160万人)は寄付金による受入額が19億円ですので「一人当たりの受入額」は、都城市は福岡市の100倍近くに上ります。凄まじい額ですね。これこそ地方活性化につながるものだと感じました。

実際、都城市の財政は活性化しているのか調べてみました。

令和66月財政状況の公表 [PDFファイル/423KB]」(都城市)によると、市の歳入は1364億円でそのうち194億円が寄付金による収入になっているようです。


市税とほぼ同額寄付金による収入があります。市税による収入が倍になったようなインパクトがあるようです。個人の家計で言うと、「給与が倍になった」のと近いと思います。

福岡市と都城市の財政資料を比較してみました。福岡市の令和5年度歳入にはふるさと納税の寄付金の項目は単体としては開示されておらず、「その他交付金」に含まれているようでした。寄付金による歳入が全体からすると微々たるものであえて記載する必要もない(なんなら寄付金の流出金を考えると寄付金という制度自体が赤字を生み出している)ようです。


福岡市と都城市の財政資料を比較するだけでも「寄付金」による収入のインパクトの大きさが伺えます。


では、「なぜ都城市がそんなに寄付金を集めることができているのか」「寄付金を集めたことで都城市のふるさと納税の品質は上がるのか」について調べて行きたいと思います。


1. なぜ都城市がそんなに寄付金を集めることができているのか


調べてみると関心のある事実だそうでして、様々な記事がヒットしました。

上記の記事によると、畜産と焼酎でずば抜けた特産があることがわかりました。なるほど。畜産と焼酎はふるさと納税と相性が良さそうです。

宮崎県の南西端に位置する都城市は、豊かな水資源を有することから農業が盛んで、2021年の市町村別農業産出額(推計)は、901億円で全国1位(3年連続)です。とくに畜産部門の産出額は764億円で、品目別でも豚が281億円、肉用牛が215億円といずれも全国1位となっています。また、市内には「焼酎メーカー売上高ランキング」(帝国データバンク調べ)において11年連続で日本一を獲得している霧島酒造株式会社があることから、全国有数の焼酎の産地としても知られています。

ふるさと納税で4度の全国1位 宮崎県都城市がLINE広告を始めた理由より引用


記事を読んでいると、かなり早い段階で戦略的にPRできていることがわかりました。


寄付金を集めたことで都城市のふるさと納税の品質は上がるのか


市場原理に則って考えれば、売り上げが10倍になれば、販売価格における原価の割合はおのずと増えていきそうなものです。しかし、ふるさと納税というシステムも同じなのでしょうか。あくまでも納税なので、利益をフルに畜産の生産性向上に充てることができないと思います。

懸念としては、想定よりも多くの注文をもらった時に品質を担保できるのか。畜産は生産量がスケールしづらい(すぐに生産量を倍にせることは難しい)ようなイメージがあります。

畜産の市況について読んでみると、畜産は環境問題もあったりするのですぐに飼育頭数を倍にすることは当然難しいようです。「ふるさと納税の注文が殺到しているので来年の生産頭数を倍にしてくれ」なんてことは当然できません。すると、都城市のブランド牛は、品切れするか価格が高騰することが予想されます。知名度はかなり上がったと思いますので、ブランド力によって単価は引き上がったと思います。これは地域にとってとても良い流れだと感じました。

まとめ

「寄付金を集めたことで都城市のふるさと納税の品質は上がるのか」という問いに関しては、通常の企業経営と違って利益余剰金を直接生産性向上に充てることができないふるさと納税のシステム上、期待はしない方が良さそうという結論に至りました。畜産に関しては生産量を短期間で増やすことができない制約もあります。

投資的な発想で言えば、リターンは返礼品の品質向上ではなく地域の活性化ですから、当然と言えば当然の気もします。

多くの市町村は返礼品による受入額が1億円を切っている中、都城市のように200億円近い資金を集めることができれば、その分地方として居住性は上がるかもしれません。将来移住を考えた時にこうした視点も良いかもしれないと思いました。

おしまい。

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