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#032 出生率対策を明るく虚構で乗り切る

出生率の話題が今月多かったように思います。真面目に考えても暗くなる話題ですね。

虚構新聞も興味深いリリースをいくつか出しています。どれもあながち非現実かといわれると微妙なラインではありそうです。1000年後に日本人は埼玉県に一人待機児童ゼロ、「半人っ子政策」で解決図る 政府方針

なんてことでしょう。人口ゼロの都道府県は来るのでしょうか。


私は思いました。どうせ虚構なら、「2024年の日本の出生率が12.0人になりました」ぐらいの大嘘を発表して「そんなバカな」みたいな明るい反応があった方が良いんじゃないかと。


ところで、

そもそも合計特殊出生率ってなんでしたっけ?


というのが気になったので調べてみました。


合計特殊出生率は調べてみると少し複雑な計算がされていて、「15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの」となるようです。


15歳の年齢別出生率 = 15歳女性が出生した子供の数 / 15歳女性の人口
16歳の年齢別出生率 = 16歳女性が出生した子供の数 / 16歳女性の人口


と順々に計算していき、最後に合計するようです。


つまり、

合計特殊出生率 = 15歳女性が出生した子供の数 / 15歳女性の人口 + 16歳女性が出生した子供の数 / 16歳女性の人口 + 16歳女性が出生した子供の数 / 16歳女性の人口 … 49歳女性が出生した子供の数 / 49歳女性の人口

となります。私は初めて知りました。一般的に「一人の女性が一生の間に生む子供の数」と解釈されるような気がしますが、この数式でそうなっているのか直感的には分かりづらいような気もします。


検算してみましょう。

X歳で必ず女性が1人産むと仮定した場合、


15歳の年齢別出生率 = 0 / 15歳女性の人口 = 0
16歳の年齢別出生率 = 0 / 16歳女性の人口 = 0

X歳の年齢別出生率 = X歳女性の人口 / X歳女性の人口 = 1.0

となり、合計特殊出生率は1.0になります。なるほど。なんとなく合計特殊出生率を理解しました。



合計特殊出生率10倍はどうしたら実現できるのか


虚構の出生率ですが、どうしたら実現できるのか考えて見ました。倫理的な指摘はご遠慮ください。フェルミ推定のようなことをしていきます。

15歳から49歳までの人口は、ざっくり男女100万人存在するとします。そうすると15歳から49歳までの女性(35年の幅)は、50万人×35年の1750万人います。2023年の出生数は72万人のようです。合計特殊出生率を10倍に上げるためには、単純に出生数を720万人にすれば良い(各年齢の女性の出産総数を10倍と仮定)ことがわかります。

もし1人の男性が救世主のように出生率を爆増すると仮定すると、1人の男性が700万人の女性と子供を・・・1年間を365日とすると1日およそ2万人と・・・

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240605/k10014471471000.html


これはとんでもない数字であることが分かりました。15歳〜49歳の女性が1750万人いる中で、40%以上となる720万人が出産する計算になります。育児は男性が行うこともできますが、出産は女性にしかできません。合計特殊出生率10倍の状態が3年続けば、もはや全ての女性が産前か産後に相当する事態になってしまいます。なんてことでしょう。女性の社会進出とか言っているどころの騒ぎではないです。もし出産して結婚するというパターンを適用するとなると、「全ての女性が結婚している」という条件も加わります。とんでもない画一的な倫理観をもつ社会となりそうです。


合計特殊出生率10倍の先の世界


このまま想像を膨らませることにします。出生数が10倍になると、当然ながら保育園のキャパシティが足りなくなります。保育園のキャパシティを増やした方が労働人口も増えるので国側も拡充したいですが、保育士人口を今の10倍にするためにはそれなりに待遇を改善するしかなさそうです。


高齢者割合も増えてきており医療費が嵩む中、保育士の待遇改善に充てる財源を考える必要がありそうです。国の歳出も膨れ上がりそうですね。出産一時金は10倍、育児休業給付金も10倍。子供手当の対象者も10倍。20年後に労働人口になったタイミングから税収が増えることが見込まれるとはいえ、一時的に育児関係の出費は増えそうです。


会社への影響はどうでしょうか。育児する担当(母か父か両方)は育児休暇を取ることになります。出生数が720万人ですので、最低でも720万人が育児休暇を取ることになります。15歳から49歳の男女は3500万人いますから、その20%に相当する人材が休職することになり、若い人中心の会社はそもそも立ち行かなくなってしまう可能性もありますね。


学校への影響はどうでしょうか。小学校の統廃合が話題になっていますが、出生率が10倍になると2クラスで済んだ学級は20クラス必要になり、途端に小学校新設がブームになるでしょう。廃校はリニューアルされて再度利用できる形になったり、公園に学校が建設されたりすることになるでしょう。


出生率対策を明るく虚構で乗り切る


未来を知ることは難しいですが、出生率を10倍にするのは財源とかの話ではなく、女性の数から考えてほぼ不可能と思われます。1750万人いる女性のうちで750万人が出産するわけですから、さすがに現実的ではありません。こうやって考えると、出生率1.74だった時代の25歳〜29歳の合計特殊出生率の数値の高さはすごいなと思います。25歳から29歳のタイミングで90%の女性が出産をしているということを意味しています。これは女性の社会進出を推奨する現代だと推進できないですよね。

平成23年人口動態統計月報年計(概数)の概況, 厚労省


ジェトロによると、アメリカの2022年の合計特殊出生率は1.67でほぼ横ばいなのだそうです。中でも気になったのが、高齢出産人口の増加です。

年齢別では30代以上の出生数が増加した。特に、35~39歳の出生数は1万3,412人(2.3%増)、40~44歳は7,526人(6.0%増)増加した。

2022年の米出生数は366万人、合計特殊出生率は1.67で前年からほぼ横ばい

20代の出産割合は顕著に減少している一方、30代以降の出産が増えているのだそうです。そうなってくると、30代40代でも出産しやすい環境づくり、リスク低減策などが今後の出生率対策には有効なのかもしれませんね。

おしまい

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