(5)共通テスト漢文の問題文を白文を読む練習に使ってみようのコーナー

今回は結構ためになります(自画自賛)。

大学入試共通テスト国語というのには謎の暗黙ルールがあって、それは「問題数は現代文古文漢文それぞれにつき〇個前後、本文の文字数は〇文字くらい。」という感じで、書いてある内容や中身の易しさ難しさよりそっちが重視されてるような面もあって、毎年の問題製作に携わる人らはほんと大変だろうなと思いますね。
そんなところもあって、途中の部分が省略されたりしていることがあります。書いた人らは千数百年後に入試で使われるなんて想像して書いてないですから、そんな都合よく入試製作者の期待する文字数でおさめてくれるわけもないので、そんな事情で中略があったりします。今回はせっかくですからそこも取り上げてみましょう。

共通テスト漢文の問題文を白文を読む練習に使ってみようのコーナー(4)|カワイ韓愈 / 카와이 한유|note
の続き

この文の内容はざっくりいうと「いい感じの臣下が君主になかなか取り上げてもらえないのはなんでじゃ。なんか方法はなかろうか。」についての話です。あと、このざっくりした内容が最初に提示されてるか否かで読解の難しさも変わってきます。例えばこれは道蔵(道教の経典)のどこの部分である、とか、大正新脩大蔵経のどの部分からの抜粋であるか、とか、『荀子』ならまあこんな内容だろう、『孟子』ならこんな傾向だろう、みたいな、書いた人が何時代のどういう思想傾向を持った人なのか、とか、そういうのもかなり重要ですが、大学入試共通テストくらいだとちゃんとそこらへんは説明されているので心配しなくてもいいです。あと、基本、文章は長ければ長いほど正確に読み取れると思います。省略された部分はこちら。

雖臣有慺慺之誠何由上達雖君有孜孜之念無因下知上下茫然兩不相遇如此則豈唯賢者不用矧又用者不賢所以從古巳來亂多而理少者職此之由也

これまでと同じように、似たような構造をみつけて並び替えてみるとこうです。
雖臣有慺慺之誠 何由上達
雖君有孜孜之念 無因下知
「雖」はその後半に逆の結果がくるという目印。 雖臣有慺慺之誠(家臣に慺慺之誠があっても)逆の結果として「何由上達」となり、同様に君有孜孜之念(君主に孜孜之念があっても)逆の結果として「無因下知」となる。
慺慺も孜孜も、意味なんかわかんなくていいです、検索すりゃいい。そんで今回覚えたとして、次回、二週間後に出てきて三週間後にも出てくれば、そりゃ憶えなきゃならん漢字です。1年くらい出てこなくて忘れたらまた調べりゃいいんです。一回で覚えなくていいです。私も一回じゃおぼえられない人です。

上下茫然 兩不相遇
如此 則 豈唯賢者不用
     矧又用者不賢
上下(今回は君と臣でしょう)茫然で兩(その二者)がめぐり会わない
如此(かくのごとくんば こんな状況ならば)
則は、前後を密接に結ぶ、ざっくりいうと当然の結果が後ろにくる目印なので、きっとその前提から引き起こされる当然の結果がこの下に書かれているだろうなあと考えます。マイナスな状況ならば「則ち!」→マイナスな状況がおこるのであります。そのマイナスなこととは、以下の、
豈唯賢者不用 矧又用者不賢
豈唯も「賢者不用」だけじゃなく、という目印、かなりどこにでも出てくる文字。もっとひどいことがそのあとにくる、それが「用者不賢」。つまり、賢者が用いられないだけじゃなく、用いられるやつが賢じゃなくなるのもいうまでもない。「矧」は「況(いわん)や~をや」と同義で使われています。読めない文字がありゃ辞書をひきます。辞書ひくのとても大事。
所以 從古已來 亂多而理少 者 
「所以(ゆえん)」も目印。昔からずっと亂多&理少なわけ(所以) は
職此之由也
「職此之由」は決まった形の使われ方をする文字列で、他にもいろいろパターンがあります。「職」を「専(もっぱ)ら」と読んだり、「職として」と読んでたりしてます。後ろの部分も倒置による強調、みたいな感じなんですが、そこらは調べながらでいいです。きっとこんな意味だろうと思ったらその意味に寄せて読んでいきます、漢文ってそういう感じです。意味の確定があって、そこで読み方を決める。

臣に慺慺の誠有りと雖も 何に由りて上に達せん
君に孜孜の念有りと雖も 下知に因ること無し
上下茫然として 兩つながら相遇はず
此くの如くんば 則ち 豈に唯に賢者の用ひられざるのみならん
           矧やまた用者の賢ならざるをや
古より已來、亂多くして理少なき所以 は 職ら此に之れ由るなり


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