逆襲のマイクロソフト//Revival Win
マイクロソフトの復権が顕著だ。
1995年からのIT革命を牽引したのは紛れもなくマイクロソフトである。
だが、2010年代にスマホが台頭するとPCにこだわったマイクロソフトは苦境に立たされた。
スマホアプリが主流になり、Microsoftお得意のパソコンソフトは下火になったためだ。
しかし、2020年代に入り再びMicrosoftが息を吹き返してきた。
このMicrosoftの復権を、個人情報商品化の観点から分析してみよう。
GAFA → GAFAM → MATANA
アメリカIT大手企業セグメントの略称が、マイクロソフトの浮沈を雄弁に語っている。
2010年代前半は「GAFA」と呼ばれていた米ガリバーIT企業セグメント。
グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンの頭文字をとってGAFAだ。
この中にマイクロソフトは含まれておらず、Windowsで一時代を築いたマイクロソフトも時代の荒波に飲み込まれたかと思われた。
だが2010年代後半になると、
「GAFA」ではなく「GAFAM」という呼称が飛び交うようになってきた。
これは「GAFA」にマイクロソフトの「M」を付け加えた造語であり、2010年代後半にマイクロソフトが復権してきたことがここから読み取れる。
さらに2020年代に入ると、
「MATANA」という呼称が聞こえてくるようになった。
このMATANAの嚆矢をつとめる「M」はマイクロソフトであり、ますますマイクロソフトが復活の度合いを強くしていることが見て取れる。
パソコン → スマホ → パソコン
1995年に始まったIT革命は人々の個人情報をひそかに商品化した。
ネットに繋ぐことで人々は個人情報商品を売却し、その分だけ各種サービスを安く利用できるようになっている。
例えば検索エンジン。
従来は有料の辞書で調べていた「わからない言葉の意味」をオンライン上の検索エンジンでは無料で調べることができる。
これは「何を知らないのか?」という個人情報を商品売却して、その対価として「わからない言葉の意味」を等価交換にて購入しているのだ。
これが1995年に始まった個人情報商品化の具体例。
1990年代後半からスマホが台頭する2007年までは、もっぱらパソコンが個人情報商品化の窓口を勤めていた。
ところが2007年にスマホが販売開始されると、状況が一変する。
人々はどこでも持ち歩いて使えるスマホでネットに繋がり、個人情報を24時間体制で売却するようになっていったのだ。
割を食ったのがパソコンとその関連企業である。
パソコンソフトによる個人情報商品の収集は下火になり、瞬く間にスマホアプリによる個人情報商品収集が本流になったため、パソコン界隈の企業は一転して冷飯を食わされる羽目になった。
その中で最も冷たい飯を食うことになったのが、何をいわんやマイクロソフトである。
マイクロソフトはワード、エクセルなどのパソコンソフトで間違いなく個人情報商品を扱う筆頭企業として世界に君臨していた。
だが、その成功があまりに鮮烈だったため、スマホへの移行が遅れてしまったのだ。
これが2010年代前半におけるMicrosoft低迷の原因である。
しかし、マイクロソフトの生命力は尋常ではなかった。
もはやマイクロソフト帝国は過去のもの、そういう声も聞こえ始めた2010年代半ばにマイクロソフトから復活の狼煙が上がっていたのだ。
スマホ個人情報市場の飽和
2010年代前半に急拡大したスマホ市場は、SNSの爛熟と相まって個人情報の商品化を激化させる。
「誰が」「どこで」「何を」「どのように」、「…」といった個人情報が次々と商品化され、IT企業に人知れず吸収されていった。
時にテキストデータから、
時に画像データから、
時に動画データから、
時にAIチャット会話データから、
個人情報の市場は急速に膨張していった。
だがこの個人情報市場への参入者は膨張スピード以上に多かった。
そのため、サービス供給が過剰になり、スマホによる個人情報収集は早い段階で飽和してしまったのだ。
すると、個人情報市場の重心は原点回帰してパソコンに戻ってきた。
パソコンソフトでしか収集できない個人情報に関心が戻ってきたのだ。
2010年代後半からスマホアプリ界隈にIT企業が一気に群がったため、スマホ経由での個人情報商品はあらかた食い尽くされ、まだ未開拓だったパソコン経由の個人情報商品へと関心が回帰したのだ。
結果、パソコン界隈で隠然とした影響力を有し続けていたマイクロソフトの企業価値が見直され、マイクロソフトは復活した。
人間の熟慮はパソコンの前に
確かにスマホアプリは24時間体制で個人情報を収集するのに秀でたツールである。
例えば、スマートウォッチによる個人の睡眠をはじめとした健康情報収集などはスマホあってのものだ。
しかしスマホアプリでは収集できないディープな個人情報というものがある。
人が熟慮して何かを成すのは、いまだスマホではなくパソコンの前だ。
だから人が熟慮したり集中している時の個人情報を収集するためには、パソコンソフトないしパソコン由来のアプリが必要である。
いま、IT企業が食指の先を探しているのがこのディープな個人情報なのだ。
人間の浅い部分の思考は概ね解明できた。
その証左がチェス、将棋など特定分野におけるAIの人間越えだ。
だが人間の深い部分の思考はいまだ未解明だ。
この人間の深い思考にまつわる個人情報商品が、いま大手IT企業セグメントにおける焦眉の急。
このディープな個人情報はスマホアプリで入手するのが難しい。
パソコンソフトないしパソコン由来のアプリが人間のより深い部分を知るために必要なのだ。
だから、そこに近い部分を握っているマイクロソフトは復活を果たした。
「Matana」と、米ITガリバー筆頭に謳われるほど、復権ぶりは目を見張る。
マイクロソフトの逆襲はまだ始まったばかりだ。
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