アレグロ/愉快な「つかしん」のヤバい仲間たち/03
「つかしん」は日本最古の大型ショッピングモールだ。
兵庫県尼崎市最北端で1985年に産声をあげて40年。
雨の日も風の日も、地元の人々に見守られてきた。
1985年とあまりにも誕生するのが早すぎたため、実質最寄駅の阪急塚口駅から徒歩16分となっており、使い勝手はお世辞にも良いとは言えない。
駐車場も隠れ家のアジトをモチーフにしたかのようなダークマターであり、土日は至るところで渋滞が頻発する。
このアクセスの悪さから、
当然、遠方からのお客さんの数は伸び悩んだ。
常に存亡が危ぶまれながらの40年であるが、毎日毎日エブリディで不死鳥の如く蘇っている。
だが結果には必ず原因がある。
つかしんが奇跡の40年を演じ続けられるる確固たる原因があるのだ。
それがヤバい仲間たちの存在だ。
今日はツカシンのヤバい仲間でも双璧と謳われる「大衆イタリア食堂・アレグロ」を紹介しよう。
つかしんの両腕
三成に過ぎたるものが二つあり島の左近と佐和山の城といったものだが、つかしんには過ぎたるものだらけである。
過ぎたるモノだらけのツカシンだが、二つの飲食店は特に別格だ。
1つが前回紹介した「津の田ミート」。
そしてもう1つが「大衆イタリア食堂アレグロ」だ。
全盛期のセリエA・ASローマでは司令塔の「トッティ」に注目が集まりがちだった。
だがモンテッラとデルベッキオという「両腕」がいたからこそ、トッティが輝けたのだ。
それと同様に、
つかしんは「津の田ミート」と「アレグロ」という「両腕」がいるからこそ、奇跡を毎日毎日演じられるのだ。
「つかしんの左腕」たる「津の田ミート」は庶民の味方であり、お値打ちな価格で良質の肉料理を近隣住民に供給している。
長きにわたり、ツカシンの盟友としてツカシン帝国式循環の心臓部を担ってきた。
「安く、美味い」で多くのお客さんを吸引し、つかしんの恒常化した窮地を救っているのだ。
当然、
「つかしんの右腕」たる「大衆イタリア食堂・アレグロ」もツカシン帝国式循環の心臓部を担ている。
「安く、美味い」で多くのお客さんを吸引し、つかしんの窮状を今日も救っているはずだ。
「大衆食堂」のレゾンデートルを「安く、美味い」で今日も魅せつけているはずだ・・・
壊れかけのツカシン帝国
青天の霹靂。
値上げである。
寝耳の水の値上げである。
コロナ前は「1100円」だった「マルゲリータセット」が「2046円」に「急上昇」している。
一体何があったのだろうか。
確かに原材料価格の高騰をうけ多少の値上げは受容されるご時世だ。
だが流石に1100円から2046円という「8割強の値上げ」はやり過ぎだろう。
昭和のプロ野球なら、
少なくとも、これくらいのヤジが飛んでくるのは覚悟しなければならない。
大衆イタリア食堂アレグロに一体何があったのだろうか。
のっぴきならない何かを嗅ぎつけた我々は、本格的に視察を開始した。
二重の罠
アレグロはコロナ前にはランチをセット価格1100円で施してくれていた。
だが本日メニュー表を見て驚いたのは、「ランチセット料金の別途設置」だ。
グランドメニューのメイン料理に「528円上乗せする」ことでランチセットが完成を見るというスキームである。
ここにステルス値上げのカラクリが垣間見えた。
以前は、
グランドメニューの「メイン料理の価格」だけでランチセットを堪能できた。
そこに528円が上乗せされてしまったのだ。
しかもだ。
グランドメニューの主菜価格も確実に値上がっている。
食べログの集合知は誤魔化せても、俺の目は誤魔化せない。
ガキの頃から面倒みてやっているオレは見逃さない。
これは二重の値上げである。
なんという狡猾な手口であろうか。
怒りでオレンジジュースを持つ手の震えが止まらない。
だが、最終的な結論は食べてからでも遅くはない。
我々は義憤をなんとか抑えて、食事に取り掛かった。
血の制裁
名刺がわりの前菜がやってきた。
アレグロさんの前菜はとにかくボリュームがある。
店員さんが、毎回しっかりと前菜のアレヤコレヤを微に入り細をうがち説明してくれるのだが、さっぱり理解できない。
今回も耳を傾けて聞いてみたが、言葉にもボリュームがあり過ぎてダメだった。
まあ、近隣住民はこの前菜ボリュームと懇切丁寧なプレゼンが普通だと思っているから、他のイタリアンに行くとスッゲエ物足りなさを感じてしまうのだ。
そんな感慨に耽っていると、真打ちのお出ましだ。
アレグロさんのピザは基本的に馬鹿デカいみたいだ。
「みたいだ」と書いたのには理由がある。
近隣住民はアレグロさんのピザサイズが「普通」だと思っているためだ。
いわゆる一つの「刷り込み」である。
よそ者から聞いたところによれば、「一回りは馬鹿デカい」らしい。
付言するならば「分厚さも一回り上手」である。
他店より前菜が潤沢で、プレゼンも懇切丁寧。
他店より主菜のサイズが一回り以上馬鹿デカい。
これがアレグロさんにとっては値上げの理由になり得るのだろう。
だが、
我々はこのまま手を拱いて溜飲を下げるわけにはいかない。
誰であろうと、
逆らったものには、
報復をさせてもらう。
それが我々の流儀。
最上部のピザ片を刮目しなければならない。
しっかりと目鼻立ちを整えておいた。
「ぼくのおとうさん」といった風情が出ていると自画自賛したいところである。
これが、
我々の、、怒りだ。
つかしん 奇跡の40年
つかしんは来年、2025年で40歳を迎える。
カウントダウンは始まっている。
40年前から約束された未来に向かって、ツカシンは走り続けてきた。
その原動力は繰り返しになるが、つかしんの脇を固める「ヤバい仲間達」だ。
前回紹介させてもらった「津の田ミート」と、
今回紹介させてもらった「大衆イタリア食堂・アレグロ」はまさにツカシンの両腕。
艱難辛苦の時代から、ずっとツカシンを支え続けてくれた盟友だ。
だが、どうだろうか。
今回のアレグロの値上げは、流石に「ヤバい」のではないだろうか。
きっと意外な近場で、我々に賛同してくれるサイレントマジョリティーがいるはずだ。