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1億皆るろうにの時代/21世紀 国民国家ハタン譚

21世紀になって故郷を持たない人が増えている。
「移り住む」というライフスタイルが増加して、「定住する」という従来のライフスタイルが傍流になりつつあるのだ。
これは国民国家という見地において極めて危険な現象である。


ヘブライ人はなぜ金儲けできたのか?

中世から近世、ユダヤ教を信仰するヘブライ人は中東からヨーロッパにかけて分散して住み、嫌われることが多かった。
よく言われるのが「ヘブライ人は商売が上手く富の独占傾向があったために忌み嫌われた」という言説。
確かにそれもあるだろう。
ヘブライ人は分散して住んでいることを利用して広域で情報ネットワークを構築し、他者よりも早く正確な情報を元にビジネスを優位に進めることができた。
だからヘブライ人は商売で富を蓄える傾向が強かったのだ。
そして、金持ちが嫌われるのは万古不易のアルアルである。

しかし、ヘブライ人が嫌われたのにはもっと強い要因がある。

ヘブライ人が多く住んだ街はことごとく衰退してしまったからだ。



ヘブライ人はなぜ嫌われたのか?

離合集散を余儀なくされたヘブライ人には、広域情報ネットワークという集団としてのビジネス資質がそなわった。
定住地を持てない見返りとしてビジネス資質が備わったのだ。

これから賑わう街、これから儲かる街、これから栄える街。
ヘブライ人には速く正確な情報に基づきカネの匂いを嗅ぎ取る嗅覚があった。
同様にして、
これから寂れる街、これから儲からなくなる街、これから衰退する街。
これらもヘブライ人は嗅ぎ分けて知ることができた。
当然、これから先においてビジネスで儲からなくなるとわかっている以上、ヘブライ人はその街から誰よりも先に離れていく。

結果、「ヘブライ人が多く住んだ街は衰退する」という法則が現地の人々の間に刷り込まれていった。

やはり人情として、誰かが立ち去った街がその後で急激に衰退してしまった場合。
自分たちの街が誰かによって「使い捨て」されたと感じてしまう。
ヘブライ人がその街を衰退させた訳ではなくとも、前後の文脈から現地の人々はヘブライ人を「犯人」のように扱った。

この「ヘブライ人が多く住み、ヘブライ人が立ち去った後にその街が急激に衰退する」という現象が、中世から近世における中東・欧州で幾度となく繰り返された。
結果、いつしかヘブライ人は「街の死神」として忌み嫌われるようになっていく。



余談としてのマニフェストデスティニー

ローマ、ロンドン、アメリカ東海岸、アメリカ西海岸、中南・・・

古代から中世そして近世近代の欧米において、繁栄から衰退に転じた主要な街を記せば上のようになる。
綺麗に東から西へと並んでいることがわかる。
マニフェストデスティニーは、いま太平洋を超えてどこに向かわんとしているのだろうか。



るろうにジャパンの問題点

時はくだり、現代日本。

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