さよなら赤い彗星
別れが近づいている。
14年連れ添った愛車とももうすぐお別れだ。
不遇の3代目ロードスター
2005年に販売開始された3代目ロードスターは不人気シリーズだった。
あまりに大きくなりすぎた車体とエンジン。
なんといってもシリーズ初の3ナンバーサイズというのがイメージを悪くしたのだろう。
だが、実際には最小回転半径などの詳細スペックを見てみると、旋回性能などは前シリーズを凌駕することがわかる。
「大きいがすばしっこい」の二律背反を実現したスーパーマシンがこの3代目なのだが、大衆にはそれがわからんとですよ。
子供たちにはバカうけ
ロードスターといえばオープンカー。
スイッチを押せば、あとは自動にて14秒で屋根が開放状態になる。
「そんな子供だましは今どき受けない」と鼻で笑う人も多いだろう。
まさにその通りだがその論法にはわずかな盲点がある。
子供たちにはバカうけ
子供たちの前だけではまさにロードスターだ。
子供だましの面目躍如である。
私なんぞは団塊ジュニア世代なので、ガンダムの変形やらに胸躍らせたのだが、
今の子供たちだって根源的には変わらない。
ロードスターの屋根がグイイイィィィィィィィイイイイインと開く様を見やると、
「お母さんアレ凄い!!!」
と子供たちは杓子定規に反応してくれる。
やはり変形モビルスーツは子供たちにとって偉大である。
サンライズとマツダは掛け値なしに凄い。
マクドのねーちゃんにもバカうけ
子供たちだけではない。
マクドのドライブスルーでも愛車がバカうけ歓待されたことがある。
あれはコロナの真っ最中。
店舗に入るのも人との会話すらも躊躇われて自重していた時期だ。
ドライブスルーでビッグマックセットを頼み、「ええいままよ」と意を決して受け取り口に赴いた。
すると、顔見知りのマクドねーちゃんが、
「今どき、ツーシーターって、渋すぎ、チョー受けるんですけど」
と今どき本当にそんな口調があるのかという話ぶりでバカ受け。
チョー受けるんですってリアルで初めて聞いたわ。
このように女子供にはまだまだオープンカーの神通力はある意味通用する。
やっぱ赤だろ
愛車のボディ色はシルバーと赤で迷ったのだが、
最後はガンダム世代の血が騒いで「赤にします」と口から決意表明が飛び出した。
やはり団塊ジュニア世代といえば機動戦士ガンダムであり、機動戦士ガンダムといえば赤い彗星シャア・アズナブルである。
3倍のスピードで接近したかと思えば、一機で10隻ぐらいの戦艦を沈めるヤバいヤツだ。
赤にも二色あり、淡いレッドと深いレッドの二つの選択肢があった。
淡いレッドは確かにシャア専用ザクの赤だったが、あまりに目立ちすぎる。
シャアはこんなものに乗って羞恥はないのか??
と思いながら淡いレッドは没にした。
深いレッドは見るからに渋く、大人の色気を感じさせていたので「この赤ならアリだ」と惚れてもた。
赤い車なんて一生乗ることはないと思っていたから、かなりの挑戦だった。
だが乗ってしまえばどうということはない。
今では自分の車が赤いことすら忘れてしまっている。
最近では車の存在そのものを忘れてしまっていた。
だから手放すことになったのだ。
今、自分の中でも「さよなら赤い彗星」の深淵が鮮明になった。
何事も言語化してみるものである。
走らないスポーツカーとコンパクトシティの密接な関係
14年で走行距離4万キロ。
14年かかって愛車は地球をわずか1周しかしていない。
車を日常的に乗り回している人ならばわかると思うが、極端に少ない走行距離だ。
一つの理由として、年をとって目の疲れが半端なくなったということ。
もう一つの理由として、ライフスタイルの変遷。
この二つの理由が極端に少ない走行距離の共犯だ。
特に最近ではライフスタイルの変遷というものを痛感する。
郊外に出なくても駅前でなんでも揃えることができるから、眼精疲労をおしてまで車に乗ろうと思わない。
今脳裏で振り返っているが、わけてもここ10年は遠出どころかそれなりの買い物を車ではしていない。
どうだろうか。
これは私だけでなく日本全国津々浦々で共有されている事象なのではないか。
ミニクーパーが欲しかった
本当は赤いミニクーパーが欲しかった。
団塊ジュニア世代といえばシティーハンター。
シティーハンターといえば赤いミニクーパー。
シティーハンターといえばGet Wildだと思われがちだが、それは重篤な事実誤認である。
その認識はヤバい。
シティーハンターといえば「失われた風景」一択。
歌をきかせたかった♪愛を届けたかった♪
想いが伝えられなかった♪
僕が住むこの街を君は何も知らない♪
僕がここにいる理由さえも♪
もしあの時が古いレンガの街並みに♪
染まることができていたら君を離さなかった🎵
ミニクーパーのサンルーフを開けっぴろげて、歌をうたってみたかった。
ボンネットに座って、
「・・・・・・・さあな・・・・・・」とすかしてみたかった。
だがBMWがいらんことしやがったから、俺の夢はすこし異形となって具現することとなった。
さよなら赤い彗星
赤い彗星シャア・アズナブルが躍動していたのは1980年代。
渡辺美里の活躍と軌を一にする。
気がつけば、あれから40年の星霜を経ようとしている。
もう赤い彗星などと囀っていては、キシリア様流にいえば笑われる。
心の中で「まだだ・・・まだ終わらんよ・・・」と呟き、涙をスイング・バイしながら愛車とともにディーラーに赴こう。
私に・・・出来るかな・・・