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リアルとアナログレガシーの逆襲/情報経済の臨界点


紙書籍が早くも見直されている。
絶滅が危惧されていた紙書籍だが、絶滅の遥か前で復活するという展開が濃厚になっているのだ。

デジタル書籍の危険性が周知されるようになったためだ。

デジタル書籍を始めとするいわゆるクラウドにあるデータは簡単に消失する。
消失までいかなくとも容易に書き換えられてしまう。
例えば、今や世の多数派はオンラインの検索エンジンによって言葉の意味を調べる。
だから言葉の意味とその先にある概念ひいては「世界」そのものもIT企業によって定義されてしまっている。

つまり、IT企業の胸三寸で「世界」が書き換えられてしまう。

これは甚だ危険な状態だ。
だがこの状態は簡単に回避できる。
デジタルデータではなく、アナログデータで大切なものを保存しておけば良いのだ。

この文脈においてデジタル書籍から紙書籍への回帰が起こっている。

デジタルからアナログへ、
フィクションからリアルへ、
虚業から実業へ、
情報経済から実体経済へ、

このように、
デジタル書籍から紙書籍への回帰は様々な文脈で語ることができる。
1995年に起こったIT革命。
それによって生じたデジタル化の潮流はわずか30年余りで極点に至り、その潮流を反転させることになりそうだ。


ブックオフという国宝


紙書籍の中でも、古い書籍いわゆる古本は価値が高い。
デジタル書籍化されておらず、IT企業によるコントロールが効かないためだ。
この貴重な古本を潤沢にそろえた企業といえば皆さんお馴染みの「ブックオフ」。

ブックオフはデジタル書籍ブームによって一時存続すら危ぶまれたが、ここのところ業績は好調だ。
だが実際にはBOOKOFFは好調どころの騒ぎではない。
その持てる古本は今や宝の山だ。

IT企業の統制が及ばない知の領域。
IT企業によって書き換えが効かない過去。


もはや希少となった桃源郷がブックオフには広がっている。
人々がオンラインの不安定情報を金科玉条のように崇める現代にあって、1000年経とうが真理を綴り続ける紙媒体書籍がブックオフには並んでいる。
だから今やブックオフは国宝だといっても過言ではないのだ。



「ブックオフ経営危機」に潜む二つの愚



ブックオフが経営危機だというニュースが度々流れている。
だがこのニュースには「小さな愚かさ」と「大きな愚かさ」がそれぞれ潜んでいる。

まずブックオフ経営危機というニュースに潜む「小さな愚かさ」とは、
「デジタル書籍におされ紙書籍が下火になっているからブックオフはヤバい」という短絡的思考だ。
思考のうち「考える」だけが突っ走って視野は狭窄、誰でも思いつく考えをトレースしただけでその後に「だが果たしてどうだろうか?」という吟味推敲すなわち「思う」は皆無だ。

次にブックオフ経営危機というニュースに潜む「大きな愚かさ」とは、
日本人が総じてバカばかりだという「油断」だ。
ブックオフ経営危機というニュース。
そこに潜む大きな愚かさ。
それは日本人がバカばかりだという「油断」。

どういうことだろうか?
説明しよう。

ブックオフが経営危機だという言説に明確な根拠の備わったものはない。
むしろブックオフグループの計算書類は総じてグループの好調を示している。
ブックオフ自体が自社の持つ古本類が宝の山だと認識しているかどうかは傍においても、ブックオフの業績は好調だ。
貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー、どれをとっても非の打ちどころがない。
税理士試験・簿記/財務諸表論二科目合格(一発!)の筆者が言うのだから間違いない🥴


ありもしないブックオフの経営危機を既成事実化し、ブックオフグループの株価が暴落したところを買い漁る。
弄せずしてブックオフにある膨大な古書を、言い換えれば日本の国宝をフラッシュトレードで手中におさめる。
これが大きな愚の狙いだ。
ただしこの狙いが成就するには一つ条件がある。
その条件が「日本人がバカばかり」という与件なのだ。



ブックオフ経営危機というニュースに潜む「小さな愚かさ」とは、ニュースを書かされるものの短絡的思考。
ブックオフ経営危機というニュースに潜む「大きな愚かさ」とは、ニュースを書かせる側の日本人へのリテラシー不足。

小さな愚と大きな愚の合作によってブックオフ経営危機のニュースが世に出て、日本から国宝が流出しようとしているのだ。




デジタル統制社会への反動

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