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貨幣経済の終焉/「情報経済」/逆襲の国民国家


貨幣経済の時代が終焉しつつある。

近代は貨幣によって秩序パクスがもたらされた時代だった。
人々は自分たちの労働力を売って貨幣に変え、その貨幣を用いて生活に必要なアイテムを買う。
人々は働くという生産行為によって世の中に必要なアイテムを作り出し、その対価である賃金で他者が作ったアイテムを購入消費して生活を成り立たせる。
分業することで各々が1つの得意分野に没頭して生産性が向上し、世の中全体の生産量が増加していく。
こうして、貨幣を媒体として世の中は豊かになっていった。

この貨幣媒体の円転滑脱な流通を支えたのが「主権国家」であり、ウェストファリア主権国家体制と貨幣経済の爛熟は軌を一にする。
近代においては、
国家が刀狩りを行い、「富と権力を分離する」ことで国民がどれだけ巨富を蓄積しても権力を暴力によって打倒できないようにした。
その上で国家権力をバックに労働力の商品化を半ば強制し、貨幣を世の中の隅々まで行き渡らせ、貨幣経済を機能させる。

これが20世紀に本流となった「貨幣による秩序」貨幣経済の基本構造だ。

だが貨幣経済はいまや斜陽しつつある。

かわって21世紀に入り急台頭しているのが「情報経済」だ。



国家ヘゲモニーの落日

主権国家が暴力装置と法の下に貨幣の価値を担保することで、貨幣経済は機能する。

例えば、無銭飲食をやらかしたオヤジ。
通報によってすかさず駆けつけた警察官によって取り押さえられ、無銭飲食オヤジは法によって裁かれカネは飲食店に還元される。
主権国家の警察官という暴力装置が法律を用いて貨幣の価値を担保したのだ。

無銭飲食を主権国家は許さない。

こうして、貨幣経済は主権国家があることで機能している。

だがもし仮に、主権国家が貨幣の価値を担保できなくなったら、どうなるか?


貨幣経済は機能しなくなる。


この「主権国家が貨幣の価値を担保できなくなり、貨幣経済が機能しなくなる」という流れ。
この流れによって21世紀の貨幣経済は機能不全に陥ろうとしている。

主権国家→貨幣価値担保→貨幣経済機能
主権国家→貨幣価値担保出来ず→貨幣経済機能不全

主権国家と貨幣経済は一心同体



ベーシックインカムの本質

ここからベーシックインカムを切り口に主権国家の機能不全というものを見ていこう。 

今年2024年8月に、アジアのご近所であるタイにて「国民の8割を対象に、ベーシックインカムをデジタル通貨前提で導入する」とアナウンスがあった。
これがどういうことかというと次の図のようになる。

  個人情報
   →
国民    国家
   ←
  カネの保証

ベーシックインカムの基本構造

デジタル通貨は人々の貨幣行為を逐一記録できる。
また現代においては「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「…」といった人間行為がほぼほぼ貨幣行為につけ変わっている。
したがって、デジタル通貨の導入によってタイ政府は人間行為すなわち「個人情報」を入手できるようになる。
この個人情報の対価として「カネを支払う」とタイ政府は暗に堂々と言っているのだ。

ベーシックインカムの本質は、個人情報とカネの交換取引にある。




個人情報がカネになる時代

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