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パンドラの踏み絵/生活保護改革とBIの相思相愛
生活保護の不正受給にまつわる議論が定期的に俎上にのぼってくる。
このニュースでは生活保護受給者の窮状を紹介しているが、コメント欄は「不正受給」にまつわる話題でもちきりだ。
「困窮者のために生活保護は必要だが、生活保護を必要としない人物も受給可能なのが問題である」
議論の最大公約数はこういったところだろう。
確かに貧富の格差が著しい21世紀日本にあって、生活保護は間違いなく必要だろう。
だが統治機構側の人的リソースやプライバシーの問題との兼ね合いから、「本当にその人物に生活保護が必要か否か」のチェックがぞんざいになっている点は否めない。
「生活保護を受給してパチンコ三昧」というライフスタイルもあながち都市伝説とはいえまい。
どうやったらこうした不正受給を抑止できるかといえば…
簡単だ。
本記事では生活保護不正受給問題をフックとして、「ベーシックインカム」についての理解を深めていく。
ベーシックインカムの本質が情報とカネの交換だという点に着目し、まだまったく知られていないベーシックインカムの問題点を指摘する。
その上で、国家がベーシックインカムを導入することの是非を明確に述べる。
結論を先取りすれば、国民国家は可及的速やかにベーシックインカム導入を検討しなければならない。
そうしないと、国民国家は早晩において破綻する。
それでは、生活保護改革というパンドラの箱を開けてしまおう!
デジタル通貨の導入
「デジタル通貨」を政府主導で導入すれば生活保護の不正受給は撲滅できる。
デジタル通貨とはオンライン空間において存在並びに流通する通貨であり、このデジタル通貨を用いて売買を行うとその履歴はクラウド上に完全記録される。
「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「いくらで」…といった個人情報がデジタル通貨導入によって詳らかになるわけだ。
このデジタル通貨導入を政府主導で行えば、国家が国民の個人情報を掌握できる。
結果、「本当に生活保護が必要なのか?」の判断を国家政府が容易に行えるようになるわけだ。
少し解説を加えよう。
我々は貨幣経済の中で生活している。
貨幣経済の中において、人々は人間的行為をどんどん貨幣取引に付け替えていく。
食物の融通、子供の教育、老人の世話…
↓ ↓ ↓
スーパー、塾、老人ホーム・・・
一昔前においてボランティア経済の中で完結していた人間行為が、どんどん貨幣取引に付け替えられてきた。
結果、いまや人間的行為のほとんどが貨幣取引によって完結している。
だから、貨幣取引を把握することは人間的行為を把握することとなる。
ひいては人間的行為とは個人情報の塊であるから、貨幣取引を把握すれば個人情報を掌握することができる。
したがって、デジタル通貨を政府主導にて導入すれば、貨幣取引に内包される個人情報を掌握することができるのだ。
生活保護を受給しながらパチンコに明け暮れていれば、それがつぶさに国家政府の知るところとなる。
結果、「本当に生活保護が必要なのか?」の判断を国家政府が正確かつ容易に行えるようになる。
「完全情報型の生活保護」が可能になるのだ。
タイのベーシックインカム
実はこの「完全情報型の生活保護」がタイで始まろうとしている。
2024年、
今年8月にタイ政府が「デジタル通貨前提で国民の8割にベーシックインカムを支給開始する」とアナウンスした。
タイ政府は「国民の商品売買履歴を把握する見返りに最低限の所得を保証しますよ」といっている訳だ。
貨幣経済の近現代において、
国民の商品売買履歴とはすなわち人間的行為の履歴であり、つまりは個人情報である。
「個人情報を把握させてもらう代わりに、最低限の所得を保証しますよ」とタイ政府は言っている訳だ。
個人情報
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つまり、ベーシックインカムの基本構造は上図のようになる。
BIとは個人情報と最低所得の交換取引なのだ。
とても簡単/不正受給撲滅
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