賢者のベーシックインカム/個人情報商品との蜜月
ベーシックインカムとは基礎所得保証のことを言う。
主に国家政府が国民にたいし基礎的な所得を保証する制度をベーシックインカムと言うのだ。
昨今このBIが喧伝されているが、果たして実現するのだろうか。
今日は、
ベーシックインカムの周辺事情を個人情報商品化の観点から考察してみよう。
結論を先取りすれば、
ベーシックインカム・基礎所得保証を国民国家の政府が行ってはならない。
ベーシックインカム
機械化によって雇用が失われている。
1900年代は機械化によって肉体労働が機械につけ変わっていたが、
2000年代のAIを中枢に据えた機械化は知的労働すらも機械に付け替えている。
そのため肉体労働だけでなく知的労働も減少し、我々の雇用は減少の一途を辿っていく。
当然、雇用がなくなっていく中、どのように食い扶持を得るのかという議論が深刻化していく。
そこで俎上に上がっているのがベーシックインカムだ。
雇用からあぶれた人々に、国家が最低限の食い扶持を保証する。
この方法論ないし制度をベーシックインカムと呼んでいる。
将来的に雇用が極限まで少なくなる世界において、人々の食い扶持を保証する制度。
それがベーシックインカムなのだ。
ベーシックインカムの財源は?
国家が最低限の所得を支給するのであれば、当然、その元手についての議論が必要になる。
国債を無制限に発行できる条件が整っている日本、アメリカなどはこの元手に不自由することはない。
だがそれはごくごく限られた国の話であって、その他大勢の国債発行に縛りがある国は財源を国債以外の方法にて確保する必要がある。
国債発行という魔法の杖を手放した国では、
「増税」が財源として候補に上がるはずだ。
だが将来的に雇用が失われ、所得がなくなる中での増税はあまり意味を持たない。
なぜなら例えば所得税を増率しても、所得がなくなっている世界では所得税を徴収できない。
なぜなら例えば消費税率を引き上げても、所得がなく個人消費が冷え切った世界では消費税を徴収できない。
だから増税というものは、将来的に雇用と所得が失われていく世界において、ベーシックインカムの財源にはなりえないだろう。
そもそもベーシックインカムとは?
ではどうすれば良いのだろうか?
国債発行権を放棄したドイツやギリシャは、どのようにベーシックインカムの財源をまかなえば良いのだろうか?
ここではベーシクインカムとはそもそも何なのかを考えてみよう。
事件に行き詰まったら原点に立ち戻って見たまえ、とは大昔に聞いたフレーズだが、なかなかに使える方法論である
ベーシックインカムとは、失業して雇用にありつける見込みのない人々に対する生活保障だ。
現在の生活保護を国民全般に拡大する制度だと言っていいだろう。
国民皆生活保護制度と言っても良いかもしれない。
では生活保護はその支給条件をどのように審査しているのか?
失業して雇用にありつける見込みがないことを審査している。
生活保護申請者の個人情報を精査して、その人が失業していることと当面において雇用にありつける見込みがないことを審査している。
たびたび生活保護の不正受給が問題視されるが、それはこの審査体制が不十分だからだ。
個人情報を一元化して収集するシステムが国家政府によって構築されていないからだ。
もし仮に個人情報を一元化して収集するシステムが国家政府に備わっていれば、
生活保護の不正受給はほぼほぼゼロになる。
受給者に少しでも怪しい行動があれば国家政府側が即座に対応できるからだ。
つまり、
国家が個人情報を24時間収集できる完全監視体制を構築していれば、生活保護の不正受給はなくなる。
裏返せば、個人情報を24時間体制で収集できなければ、国民皆生活保護制度たるベーシックインカムを機能させられない。
個人情報とベーシックインカム
つまり、
「個人情報の一元化収集」と「ベーシックインカム」は一蓮托生になっている。
国家が国民の個人情報を一元収集できているなら、ベーシックインカムは機能する。
国家が国民の所得状況・資産状況はもとより、「誰が」「いま」「どこで」「何を」「どのように」を漏らすことなく把握しているなら、ベーシックインカム《国民皆生活保護》は機能する。
個人情報商品化の時代
個人情報がインターネットによって商品化されだしたのが1995年。
それから30年が経過し、おおむね個人情報商品の掌握がなされた。
特に2020年から2024年の5年ばかしは意義の深い期間である。
それまでは人々の平時の個人情報商品しか出回っていなかった。
ところが2020年に勃発したコロナ事変によって、非常時の個人情報商品が出回るようになった。
結果、
「平時において人々がどのように行動するか?」
だけでなく、
「非常時において人々がどのように行動するか?」
までもが掌握されてしまったのだ。
二つを掛け算すれば、
「人間はどのように行動するのか」が押し並べて掌握・解明されたと言っても良いだろう。
さて、
今回の記事で問題となるのは、
「誰が個人情報商品を掌握したのか?」ということだ。
言うまでもなく大手IT企業セグメントだ。
インターネット回線の向こう側にいる大手IT企業セグメントが個人情報商品を掌握しつつあるのだ。
ベーシックインカムの担い手は?
先程述べたように、個人情報と引き換えにベーシックインカムは支給されるべきだ。
この個人情報をIT企業セグメントは掌握しつつある。
残念ながら国民国家がプラバシー云々と綺麗事を並べている間に、大手IT企業セグメントに個人情報を商品という形で掻っ攫われてしまった。
国家がベーシックインカムを支給するためには個人情報の一元化収集が不可欠だった。
ところが、大手IT企業セグメントに個人情報の一元化収集で大きく先を越されてしまった。
では、どうすべきか?
ひと足さきに個人情報の一元化収集システムを構築して、個人情報の掌握を完遂しつつある大手IT企業セグメントがベーシックインカムの担い手となるのが話の流れからいって自然なように思える。
まかり間違っても、国家政府がベーシックインカムの担い手になってはならない。
なぜなら、個人情報を掌握していない国家政府は人々を管理することはできないからだ。
このまま個人情報を掌握しないままに国家がベーシックインカムを支給するのは「国家のタダ働き」以外の何物でもない。
あくまで、
人々が差し出す個人情報の対価としてベーシックインカムは支給されなければならないのだ。
それが出来るのは今のところ大手IT企業セグメントしか見当たらない・・・
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