【俳句小説】抜け殻からサナギ #4
蝋燭をただ眺めてる夏安居
だんなさんは出張が増えていき、わたしは毎日母の入院している病院へ見舞いに行った。
ほぼすれ違い生活のわたしたち。そして母。
奇跡を待つなんていう甘い状況では無かったので、お見舞いと言うよりは、わたしと担当ドクターが打ち合わせの日々。
母は数年前に心臓の手術をして血液がさらさらになる薬を飲んでいたので、大きな手術はリスクがあると止められていた。
末期の膵臓癌と言っても、母は元気だった。三食の食事もぺろり平らげていたし、もしかしたら余命三ヶ月なんて冗談なんじゃないのと思ってしまうくらい。
母は、心臓を患った後、近所の俳句教室に通っていた。
季節の無い病室で、どんな景色を見ていたのだろう。病室でも俳句を詠みはじめていて、小さな字でたくさん書き留めていた。