「政治と行政の役割分担」から考える、DMOと行政の役割分担
2020年7月8日に、『橋下徹「知事を経験したからわかる熊本・蒲島知事の後悔」』という記事がプレジデントオンラインに掲載されました。
この記事を読んで感じたことなどを書いてみます。
政治と行政の役割分担
熊本で起こった水害を例に、熊本県知事が過去に「ダム建設中止」という「政治判断」を行ったことについて、その是非ではなく、その政治判断後に代わりとなる治水対策を行わなかったことについて、「最悪」ではないか、と橋本氏は述べます。
確かに、これまで長年積み重ねてきた行政のやり方や方向性を変える政治決断それ自体は、必要な場合がある。
しかしそのような判断をする場合には、これまでのやり方や方向性を転換した後の別の「計画」を行政的にしっかりと作る必要がある。
しかも、その別の計画を作りそれを実行する「期限」を設定することが最も重要だ。
自分も公務員なので、一度決めた物事を行政として変更するのは難しい、ということは十分過ぎるほど分かっています。
また、トップが変わって大きく方向性が変わってしまい、今まで積み上げてきたものが無かったかのようになってしまうことについて、違和感を覚えることもありました。
方向転換するのであれば別の計画が必要、という橋本氏の主張は、よく理解できます。
行政の方向性を決めたり、決断したりするのは政治だ。
しかしその方向性や決断を具体的に実行して形あるものにするのは行政だ。
これが政治と行政の役割分担である。
政治と行政の役割分担を、明確に述べられています。
知事経験者だけに、その言葉には説得力が感じられます。
政治家はこれまでの行政を変える派手な決断をすることを好む。
しかしそこには必ず行政的な裏付けが必要であり、その裏付けができないのであれば、政治は従来の行政計画を追認せざるを得ない。
行政の裏付けのない政治決断は、社会情勢の要請から後に必ず覆されてしまう。
ここでいう「これまでの行政」というのは、「前任者の方針」という意味も含まれていると思います。
選挙戦において現職や現職後継者を制して当選した場合、これまでの方針を変えたくなるのは致し方ないとも思いますが、行政的な裏付けなくパフォーマンス的に変えてしまうと、混乱を生じる可能性が高くなります。
DMOと行政の役割分担
ここで、DMOの議論でよく登場する「DMOと行政の役割分担」について考えてみたいと思います。
「役割分担を明確にすること」は、当然としても、理想的な役割分担はどうあるべきなのでしょうか。また、役割分担がともすれば不明確になってしまうのは、何が原因なのでしょうか。
そもそも、国がDMOを推進している理由の一つに、「専門人材の必要性」が挙げられます。
大社先生は、著書の「地域プラットフォームによる観光まちづくり」において、「行政が抱える構造的課題」を次のとおり指摘されています。
従来より指摘されている問題の1つが自治体職員の人事異動である。
「観光課の職員は、2~3年経つといなくなる。やっと人間関係ができ、これからというときに新しい人が来て、また一から地域の実情を説明するところからはじめなくてなならない」
と嘆くのは観光事業者の常だ。
これは行政の永遠の課題であり、クリアできない問題です。
ということは、本来的には予算や人員は「行政<DMO」であるべき、と言えるでしょう。
一方、行政は税金を財源とした「予算」を持っており、DMOは行政からの予算措置(補助金や負担金等)なしには運営できないところが大半です。
そして、条例等により「観光振興計画」を策定するのも行政です。
「計画」を作り「お金」を負担する、となれば、当然のことながら、口も出すことになります。
観光に注力する首長であれば、なおさらです。
この力関係が、DMOと行政の役割分担をややこしくする原因です。
しかし、そういった力関係が存在する中でも「行政<DMO」を実現するには、首長にDMOの本質を理解してもらい、「お金は出すけどやり方は任せる」といった太っ腹な対応をしてもらわなければいけません。
それができなければ、どれだけ役割分担の議論をしても意味がないと感じます。
ポイントは専門性
太っ腹な対応をしてもらえるかどうか、は、首長の問題ではありません。
DMO自身が、その専門性と実績をもって、首長を説得できなければいけない、と考えています。
それを考えされたのが、冒頭の橋本氏の言葉です。
「政治家がこれまでの行政を変える決断をするのであれば、必ず行政的な裏付けが必要である。」
裏を返せば、「これまでの行政に明確な裏付け」があれば、たとえ首長が変わったとしても変える決断ができない、ということです。
首長によっては、選挙公約に観光振興を盛り込む方もいるでしょう。
たとえ議論の末に誕生したDMOであっても、首長が選挙公約で見直すといえば、見直しありきでまた議論せざるを得なくなります。
しかし、DMOがその専門性を発揮して実績を積み重ねていれば、たとえ選挙公約であったとしても、変えることは難しくなるでしょう。
そこでポイントとなるのが「専門性」です。
行政にもたくさん優秀な方がいますが、必ず人事異動でいなくなります。
専門性の高い人材をDMOに揃えることが、DMOと行政の役割分担を明確にするための最も大事な部分だと思います。
とはいえ、結局はお金
DMOに専門性の高い人材が揃うことが理想ですが、そのためには、お金が必要となります。
その財源を行政から頼ってしまうと、たとえ首長の理解があったとしても、力関係が弱くなってしまうのはやむを得ません。
ということで、やっぱりお金の話になってしまうんですね。
海外のDMOは、宿泊税のような目的税であったり、TIDといった負担金がDMOの財源となっています。
日本でも宿泊税の議論は進んできましたが、それでも税金である以上、議会を通じて配分先が決められるため、必ずしもDMOの財源になるわけではありません。それに、宿泊事業者さんから同意を得ることが難しいところです。
そういったことを考えると、現実的には「会費収入」を地道に増やしていくことが、一番の近道なのではないか、と考えています。
「会費収入」は「会員数」と比例するので、要は、会員を増やしていく、ということです。
会員になっていただくには、会費以上のメリットが提供できるかどうか、にかかってきます。
ということで、三重県観光連盟は「№1観光Webメディアへの挑戦」を続けているんですよ、という話でした。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
それでは、最後に美しい三重の写真をご覧ください。
写真提供は、無料で素晴らしい写真を提供してくれる三重フォトギャラリーさんです。
こちらは、三重県亀山市にある「関宿」。
詳しくは、三重県の公式観光サイト「観光三重」の特設サイト『関宿を歩く 三重県亀山市の東海道関宿 観光・旅行情報サイト』をご覧ください。