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挿絵もグッドな江戸時代の雪国本『北越雪譜』 読み始めると止まらなくなる

雪国の暮らしを描いた『北越雪譜』(鈴木牧之)がほんと面白いです。『遠野物語』などが好きな人には特におすすめです。

『北越雪譜』は越後の豪雪地帯、いまの新潟県塩沢の辺りの暮らしを主に聞き書きで描いた江戸時代の名著です。雪崩や吹雪、とてつもない積雪の脅威にさらされて生きる人々の姿をテンポよく読ませます。雪で堰き止められた川が一気に溢れる洪水の様子、サケ漁、地場産業の機織り、正月の行事など、ルポ的な要素が満載です。著者の鈴木牧之は地元の人なので雪国のありようを熟知しているのです。

家族をオオカミに食べられた話や、冬眠中のクマに助けられた男のエピソード、握り飯をあげると荷物を運んでくれる山中の異獣などの奇談も加わります。事実かどうかわからない伝承の紹介も含めて、江戸時代の雪国の克明な「記録」になっています。

挿絵がまた良い。
たとえば大きなつららをソリにして遊ぶ子どもたち。

写真はいずれも『北越雪譜』(岩波文庫)より

そりを引っ張る子どもたちの表情がなんとも可愛らしい。

そばで見ているワンコのおっぱいに子犬が群がっているところまで描いている。

『北越雪譜』は江戸時代にベストセラーになったとも言われています。岩波文庫版も初版が1936年で、すでに70刷に達するロングセラー。わたしも若いころに読んで好きになり、今でも手元に置いて、おりに触れてつまみ読みしています。
江戸時代の文章なので最初はとっつきにくいかもしれませんが、話が面白いので引き込まれてしまいます。短い章ごとに読み切りなのもありがたいです。

冬に部屋にこもって読むもよし。これを持って雪の越後を旅するのもおすすめです。


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