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【猛暑の青森で雪見】鴻池朋子や小島一郎の展覧会で涼む

7月下旬に青森に行ってきました。予想外に暑い。地元のタクシーの運転手さんもびっくりしていました。でも青森県立美術館で開かれている企画展では東北地方の「雪」を堪能することができましたよ。

ひとつは「鴻池朋子展 メディシン・インフラ」です。(2024年9月29日まで)

もうひとつは青森の写真家・小島一郎の展覧会。(2024年9月29日まで)

まずは鴻池さんの展覧会です。いろんな展示の中で、特に「物語るテーブルランナー」というプロジェクトが面白かった。鴻池さんが秋田県・阿仁合などで出会った人々から個人的な思い出話を聞き取って絵にします。それを下絵にして、語った本人が布で縫い上げて作品にするというものです。極めて個人的なエピソードばかりです。思わず見入ってしまいます。

ランチョンマットぐらいの大きさの作品がたくさん並んでいる。
昭和30年代、母に負ぶわれて雪の中を帰省(手前の作品)
クリスマスの朝、枕元にウサギの模様が入った真っ赤な木製スキーが置いてあり、嬉しくなってすぐに長靴をはめ込んで家の前で滑った思い出
病院から帰る小舟。すっぽり被せられた毛布の隙間から見た霧の川

秋田の山間部なので雪にまつわる思い出が多いです。

小学校へ。春先は硬雪なので足が埋まらない
お風呂は外にあった。熱すぎるときは雪でうめる
正月の宴会。息子の態度が悪いと突然怒り出して殴りつける叔父さん。みんなで止めると雪の中、歩いて帰ってしまった
12歳の女の子。戦時中、召集された夫と最後の面会に行くという叔母に付いて一緒に旅館に泊まったら夫婦の営みが始まってしまい気まずかった場面

布でできた作品なので、独特の風合いや立体感が写真では伝わらないです。ぜひ現地で実物を見てほしいです。

次は小島一郎の写真展です。青森の風景を撮り続けた写真家の没後60年の記念展です。39歳という若さで亡くなっているんですね。この展示を目当てにわざわざ東京から来た甲斐がありました。素晴らしいモノクロ写真の数々。青森の厳しい冬の風景を堪能しました。

雪道を歩いてる。雲から覗く太陽の光が印象的
一部だけ撮影可能でした

展示されている写真の中には、カメラの機種やレンズの焦点距離、シャッタースピードや絞りといった撮影データが付記されているものも結構あります。焦点距離28ミリなど広角レンズの写真が多かったです。

広角で写真を撮ると、画面に空白が多すぎたり、逆にいろんな要素がごちゃごちゃと入り込んだりして「君はいったい何を撮りたいのだね」ということになりがちだと言われています。
でも小島一郎の写真は構図がばっちり決まっている。人や馬車、建物などの被写体もさることながら、背景に大きく写った空、特に雲の表現が格好いいのです。

あとで寄った青森市内の古本屋に小島一郎の写真集があったので、思わず買いました

民俗学者・宮本常一が下北半島で撮った写真の展示もセットで開催されていて、それも見応えがありました。

青森県立美術館は初めて行きましたが、青森県出身の棟方志功や奈良美智の展示も充実していて素晴らしい。他にも用事があったので丸1日かけて鑑賞するというわけにいかなかったけど、もう一度行きたいです。

ちなみに、鴻池さんの展示を見る予習として『絵のうら側に言葉の糸をとおす』(鴻池朋子+大竹昭子+堀江敏幸)を読んでから行きました。テーブルランナーのプロジェクトについても語られていて参考になりました。

この本は東京・神保町のシェア型書店PASSAGEの大竹昭子さんの棚で購入しました。

小島一郎の写真集は青森市中心部の古書店「らせん堂」で購入しました。全ての棚が濃厚な感じ…。青森の郷土関連本も多くておすすめです。これだから旅先での書店巡りはやめられません。


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