カメラ目線の写真に魅かれた『旅をひとさじ』
私たち「川端堂」の最近のおすすめ本は『旅をひとさじ』(文・写真:松本智秋)です。
この本は写真が多くて、いっそ「写真集」と言ってもいいと思うんですが、被写体の人たちがしっかりこちらを見ているのが素晴らしいです。
内容はというと、ユーラシア大陸各地のイスラム系の街を訪ねた一人旅の記録なんですね。
コロナ前の数年間に中国、中央アジア、イラン、レバノン、シリア、ブルガリア、ロシアなどを巡っています。政情不安な地域も多いので、いまでは行きづらい場所も。
現地を散歩し、現地の人と会話し、現地の庶民のごはんを食べる。記述は個人的な感想に徹していて余分な蘊蓄はないです。
写真も著者が撮っているんですが、笑ってこっちを見ている写真が多いんです。
撮影するときに、相手と楽しくコミュニケーションしながら撮っているんだなというのが伝わってきます。被写体の人の笑顔に、著者の人柄も映っているような気がします。
あと、餃子や肉料理、粉もんや煮込み料理などなど、各地の食べ物が美味しそう。
文化が異なる土地を旅するといろいろ不可解なことがありますよね。
本書でも、「Father name!」と連呼してきた男に「コージ!」と叫び返したら、相手は深くうなづいてサムズアップして去って行った…とか、他にも、めちゃめちゃ塩対応な屋台の店員、自分は映画監督だと明らかなウソをつくおじさんなどなど、謎な人物たちとの出会いが楽しい。
ふらっと入った本屋でたまたま手にした本でしたが、ほんといい本です。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?