4回目

今日はサーフィン4回目。
自分ではまだまだ「超ド初心者」のつもりなのに、スクールは「そろそろ一人で行って来い」モード。その温度差にたじたじして、すっかり腰が引けてしまった無惨な回なのでした。トホホ。

今日は気温が19度まで上がるらしい!寒がりの私は大喜び。が、前の晩は寒さに身震いして目覚め、これはいかんとあったか毛布を足せば蒸れて暑苦しさにまた目覚め、迎えた朝は大層ひんやりしていた。ほんとに19度になる日なの‥?と思いつつ、梅白湯を飲み飲みストレッチ。曇り空を見上げ(太陽よ…いや、でもあまり日焼けしないとも言えるよね)とぶつぶつ思いながら10時スタートにむけ出かけていった。
前回までであまりに不甲斐ない体が情けなくて、先週から体の使い方や温活や筋トレやらとにかく思いつくままいろいろ生活に取り入れ始めた。その甲斐あって、体は絶賛変な感じ。 …。 今まで使っていなかった筋肉を使ったり動かし方を変えたせいか、筋肉痛もあれば、妙な筋の張りも出ていた。今週サーフィンやって大丈夫かな‥と正直不安を感じていた。なるべく怪我をしたくないし迷惑もかけたくないから変な無理だけはしないと決めていたので、悩ましかった。でも、サーフィンなんてムリ!という程の違和感ではないし、「今週はサーフィンお休み」と思うと心ががっかりした。私はサーフィンがやりたいのだ。

先週とはまた違うスウェットをあてがってもらい、先週より一層うんせうんせと着替えた。いろいろ調べて買ったネックウォーマーと腰ベルトと手袋も投入した。本当は、一番欲しかったのはブーツだった。足から先に温めるのはさすがに私でも見当がつく。けれど目星をつけたブーツのサイズに悩んでいるうちに今週になってしまい、何もないよりはと買えるものから買い足した。
私が着替えている間に、おじさんは一人で海に出ることに腰がはずれてどっか行きそうなほど引けまくりの私のために30分ほど一緒に見てくれる人をつけてくださっていた。ありがたや〜と心底感謝しながら、手袋の装着に奮闘しつつおじさま達の方にペタペタと裸足で歩いていくと、ついてくださる方のおじさんが目を丸くして言った。
「手袋つけるの??」
ショップのおじさんが答えた。
「いや、寒いんだよ、この人」
「足は??普通足から‥」
「いや、そう。あべこべなんだよ、この人‥」
うえ〜〜〜ん、分かってます、分かっちゃいるんですよ、おじさまがたぁぁぁ!と心で泣きながら笑うしかない、手袋のせいでバルタン星人みたいな私なのでした。

波に乗るイメージはあっても、いざ海の中ではやっぱりわからないし、大きい波が来ただけでどうしようとあたふたしてしまう。30分経ったら一人になる。もう聞きまくるしかない。
 ・波乗ったら岸に上陸する気持ちでいけと言われるが、岸に衝突したらどうしたらいいのという恐怖が強い。上陸した方がいい? それともやっぱり途中で落ちてしまったほうがいい? →上陸してタイミングよく降りれるならそれでもいいけれど、投げ出されたり(それが怖い)どすっと降りると足にくるので、落ちれるなら落ちてしまっていい。岸で降りるなら前にいかないよう後ろ重心で。
 ・波打ち際であばれるボードをどうしたらいいの? →波が来ないうちにボードの後ろを起点にして素早く鼻先を海側へ回す。その前に波がきたらボードを立てて掴んでおいてもよい。小さい波は、ボードのお尻を押さえて鼻先を上げればOK。なるべく早くボードに乗ってパドリングで戻るべし。
 ・リードが足に絡まる →踝の下の凹みに向きを合わせ、時々紐を引いてやるとよい。
今日のレッスンの課題は、ブレイクでいいから自分で蹴って飛び乗ってパドリングして立てるようにする、だった。イメージは分かる。押し出して助走をつける感じだろう。でも全っ然、駄目だった。ボードに飛び上がるだけで精一杯で助走も何もない。飛び乗った勢いでボードがぐらぐらするし、一気に定位置に飛び乗れないからもたもたしてしまう。来る波をヒーと思いながら振り返って見ているうちにボードが斜めになっていく。
 ・ボードの横幅に手を広げて乗ると素早く乗れる。
 ・波に対して垂直にボードを漕ぎ出すことを意識する。
ボードから降りている時に大きい波が来たら、素早くボードを動かせないうちはボードのお尻を離さないように掴み後ろ向きで沈むようにして波をやり過ごすことも教わった。波が正面から襲いかかってくるのが見えないから、後ろ向きってなんだか安心…。

そんなこんなで30分を超えてだいぶ長く教えていただき、去り際にはたまたま隣にいた同じショップのお客さんに声をかけてなんとなく見ててあげてなど口添えまでしてくださった。優しさと情けなさとそれでも残る一人サーフィンへの不安に、海でぷかぷか泣けたのでした。(何しに来とんじゃ)

お隣さんが一緒にやりましょうと快く言ってくださりホッとしたものの、まっっったく一人では波に乗れなかった。目を見開いて波待ちしていても波が来ない。周りの人はどうしているんだろうと思ってよそ見をすると、そういう時に限って波が来る。ちょっと大きい波だと「これは私が乗るには大きすぎるよね‥」と怖気づいて自分に言い訳してやり過ごす。そんな心持ちでいるとちょうどいい波までやり過ごしてしまう。見兼ねたお隣さんがボードを押してくれて、やっと何度か乗れたものの自力ではゼロ。惨敗だった。今日の波乗りの感想は?と聞かれたらこう言うしかない。
「海につかりに来ました。」

そして2時間ほど経ち凪の時間帯になり体もいつも通り冷えたからそのまま終わりとなった。なっっさけない。不甲斐ない。何も努力していないから何も胸に残らない。ただそれだけの時間だった。
シャワーを済ますと、ショップのおじさんが残してくれたメモをショップの方が手渡してくれた。課題を書いてくれていた。嬉しいな、、と思うと同時に、自分がどうしようもなく恥ずかしかった。お礼を言って店を後にし、萎んだ心を連れてなんとなく海岸へ出た。

…やめようか。もう、やめてしまおうか…。
私の性格と真反対だ。きっとスポーツというものは総じてそうなのだろうけれど、素早い状況判断やどんどんやろうとする意気込みがいるのだろう。何度もやりながら自分でコツや体感を掴んでいくのだろう。ここでうじうじ落ち込んでいるなんて余りに手前過ぎてお話にならないだろう。私はいつももたもたと考える時間が長く、めげやすく、スポーツでコツを掴むという経験がないからよくわからない。それに怖い。自然には勝てないし、何かあると怪我の痛そうなイメージが先立って、いつもどこか臆病な自分がいる。好奇心がうずいて、やってみたくて始めて、始められたことがとても嬉しかった。それなのに、やるうちに嬉しさと同じだけか、それ以上の恐怖がぴったりと付いてくる。楽しみたいのに。楽しいから4週間も続けたのに。

あーーーーー嫌だ。やめやめ。こんな気分はいやだ。ラーメン食べて、気持ちでも切り替えよう。すぐ近くの貝出汁が美味しいラーメン屋さんに入った。14時近くだったから、私が最後のお客になった。スープを飲んで箸を置こうとしたらお店の人が「お近くですか?」と話しかけてきた。そうなんですと答えると、「味玉が余ったからよかったら持って帰りませんか?何個でも。」と曰った。にゃにーーーーっ♡♡!と、喜んで3ついただくことにした。手渡された味玉3つ入りの袋が手の上でやんわりと優しかった。お礼を言ってお店を出て歩き出した途端、「じゃあ50個!」とかくらいノリで言えたらよかったのにと思った。あぁ、やっぱり瞬発力ないなぁ…。は! また落ち込んでどうするとつっこみながら、なんとなくまた浜に向かった。
女性が沖で一人で波待ちしているのが見えた。みんな、乗れたり、乗れなかったり。ぼーっと見ていたら、そのうちにその女性が浜に上がってきて一服し始めた。私より多分小柄で細身だ。寒くないのかな? 怖くないのかな? どれくらいやっているのかな? 聞いてみたい。 煙草を終えると、女性は立ち上がって帰っていった。浜に目を戻すと年かさの女性がボードを抱えて目の前を歩いていった。なんとなく追うようにして浜を歩く。さっきまで自分が浮かんでいたあたりに来た。やがて彼女も沖に出ていき、波を待ち、乗れたり、乗れなかったり。そのうち、幼稚園くらいの小さな女の子2人を連れてお母さんが海に出ていった。私にとって大きく見える波は、あの幼女達にはどれほど大きく見えるんだろう? そんな疑問には構わず、彼女たちは波に乗ろうとその小さな腕を懸命にぱしゃぱしゃと振り動かしてしていた。その姿があんまり小さくて、風に吹かれて水面で揺れる落ち葉みたいに思えた。

浜を後にしてぶらぶら帰る。アンテナショップに立ち寄り、自分を励ますようにおいしそうな野菜を買い、ついでにソフトクリームも買って食べながら歩いた。道路を横断しようと車待ちをしていると、2人の子供を連れたお母さんも横断しようとやって来た。今日は珍しく行き交う車が多い。アイスを舐めながら待っていると、何やら白い玉のような粒が目の前をいっぱい飛んでいく。私のソフトクリームだった。吹きつける強風にクリームが溶けて吹き飛んでいた。自分の服やマフラーに飛び散り、振り向くと後ろのお母さんの服にも吹き飛んでいた。慌てて風下に回り、ごめんなさいと飛びつくと「いいのいいの!」と豪快に流してくださった。あんたのアイスも飛んでるよ!と息子に言いながら道路を渡って行ってしまった。吹き飛びそうなクリームを必死で舐め回し、また少し待って私も道路を渡った。途中、向こうからサーフスーツを着た女性が自転車にボードをのせやってきて無表情で通り過ぎていった。

サーフィンに、自分の生き様がそのまま出る。
その立ち現れた自分の生き様に自分でしょげて、しょげる有り様にまたしょげた。
しょげていても仕方ない。でも、ガッツだぜと一気に転換する元気が出ない時もある。途方に暮れてしまう時もある。
どちらかと言うと私はじわじわ進むタイプだ。好きだった洋裁も、初めて作った母のスカートはそれは摩訶不思議な代物だった。けれど気付けばそのうちシャツもコートも作って自分で着て出かけるくらいになっていた。全然スポーツではないけれど、好きで勝手にやり、勝手に作れるようになった。
これから私は、好きで勝手にサーフィンやっていくのかな? それとも、もうやらないのかな?

夏の夕暮れの、綺麗な夕焼け空の下。今より少し、強く気持ち良くなった体で、スィーっと波の上を滑っていたらいいのにな、と思った。

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