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グミとガム -前編-


口寂しい時、グミとガムのどちらを選びますか? ポーチの中に、ハンカチよりもグミが確実に入っている私にとって答えは決まっています。
グミは、子どもの食べ物!という時代は変わり、スマートに企画書を書きこなす大人のお口には、ガムではなくグミが放り込まれることも珍しくない時代がついに来たのです。

グミ市場は、ここ約10年にかけて大きく伸長を続ける一方で、 10年前にグミの約3倍の市場規模だったガム市場は苦戦中だそう。
グミとガム、どちらも口寂しいときのお供であることには変わりないのですが、何が命運の差を分けたのでしょうか。調べてみると面白いことに、コロナ禍の前後2段階で変化が見られたので、これからそれぞれ紐解いていきます。

グミとガムの逆転時代-転機は2021年夏

はじめに、コロナ流行前の話をします。 2018年は、グミ第一次ブームの到来でした。なんと、グミの市場規模は411億円と4年前の1.4倍へと拡大したのです。一方で、ガムは2018年の段階でグミよりも約2.2倍の商品数が市場に出回っているにも関わらず、縮小傾向に歯止めが利かない状態でした。

その大きな差をつけた理由は何なのでしょうか。
その理由は、商品のヒット性が挙げられます。
ガムは『虫歯防止』や『口臭予防』を謳ったキシリトール以降、目立ったヒット商品が生まれずニュース性に苦戦していました。

対して、グミは、高弾力の『TOUGH』や(今記事をしたためながら、筆者はTOUGHグミを食べています。ハードな嚙み心地が集中力をもたらすとのこと)これまでにない食感で話題となった『コロロ』など、様々な食感やフレーバーを楽しむグミの展開が広がったことで話題を生みました。2018年当時、グミはガムの市場を抜く時代も遅くはないだろうと予想がたてられ、盛り上がりを見せていました。

タフグミ(左画像 出典:カヤバ食品サイトより) コロロ(右画像 出典:UHA味覚糖)

しかし、グミの幸先が良いと思われた矢先に…コロナ襲来です。コロナが流行したことで『口に直接手づかみで食べるもの』である両者はともに打撃を受け、グミかガムか、など言ってはいられない状況となるかと思われました。

もっとも、20年のグミ市場は、外出時のオンタイムにおける需要が大きく落ち込み前年割れとなっています。しかし、驚くことに、このままグミ市場が落ち込むと思いきや、21年以降は、自宅での喫食シーンが増えたことでV字回復を遂げて、コロナ禍でもより一層成長を続けたのです。第二次グミブームの幕開けです。

自宅でグミを食べるということが、コロナ前からのグミ流行により習慣化されていたことが理由とされています。しかし一方で、ガムは『口に入れたものを吐き出す』ことに抵抗を感じる人も多く、コロナ禍をきっかけにより一層ユーザーが離脱する傾向でした。
そして、ついにコロナ禍でグミとガムの市場は21年の夏に逆転!
2022年の年間売上ではグミの方がガムに233億円の差をつけるほどになっています。

日テレニュース(3月8日)記事より、KAUKOTO.jp 作成

グミは誰が買い、どこで売れているか?

コロナ禍のグミブーム拍車をかけたものは、『YouTube』や『TikTok』において変わったグミが紹介されたこともあります。
なかでも、 韓国のYouTuberがASMRの動画を投稿したことで21年に大流行した『地球グミ』(東洋経済2022年8月記事-ずっと品薄、「地球グミ」が若者に売れまくる背景)が象徴的です。そもそもASMR動画とは、「Autonomous Sensory Meridian Response」という英語の略です。なかなか覚えられない・・・。読み方は、そのまま読む「エー エス エム アール」か、英語読みの「アスマー」かに分かれます。

ASMRを簡単に説明すると、アイスを食べた時の「シャリシャリ」という音や、包丁で人参を着るときの「トントン」といった音など心地よかったり、ちょっとゾクゾクするような音のことを高性能マイクを通して動画コンテンツとして届けることを示します。

地球グミは、4粒入りで定価594円となかなかいいお値段なのですが、その鮮やかな見た目のインパクト性から、こぞってYouTuberが波及的に紹介したことでSNS上で話題になり、手に入らないグミとしてZ世代を中心に話題を博しました。

こうした売れ方は、ガムにはない全く新しいものでした。
次回は、グミの売れ方とガム市場との比較を通して、これからの「買うこと」の構造に触れてみます。


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