台湾における飲食店経営を受忍時間という言葉で再検証
*本記事は2024年4月14日にFacebookに投稿した記事の転載です
受忍時間、それは人が許容できる時間のこと。こうした用語を学んだ。前回の #齋藤洋一郎の台湾自営業 において、台湾にて日系ブランドの焼肉居酒屋と串焼居酒屋を両方経営する企業があり、全く同じレベルの肉と接客で、方や焼肉、方や串焼という経営をしたところ、焼肉は高評価を得て、串焼は低評価になり、その評価を分けるのは「遅さ」の問題と記した。この考察を受忍時間という言葉で再検証してみる。
人が何かを期待して飲食店に入店した場合の、その何かが提供されるまでの時間が遅いと不満となり低評価が付くという構造において、居酒屋で酒を注文しないのが当たり前の台湾において、串焼店が焼き上がりの串を提供するまで10分が長過ぎて不満を起こすのに対して、焼肉であれば生のまま提供するので5分で出せるため不満が起きないという世界線。
更に、それを食べ終えて追加オーダーする際、また同じ事が起きる。単品注文の串焼店で酒を飲まない人の不満は頂点に達する笑
ということを踏まえて、台湾において串焼が成立するやり方を検証する。但し本検証は受忍時間という切口のみで考察するものなので、焼肉や火鍋のような食品を生で出せばいい業態以外のあらゆる飲食店に応用できると思う。
A. コース料理+串燒
代表格は⚪︎苑や焼⚪︎屋など。お客は別に串焼きが欲しい訳ではない。「ある特定の晴れの日に何かしらのコース料理の店に行こう」を起点にしている。
コース料理にするとメインの串焼きが来る前に別の何かが一つ二つ出しても「こちら前菜になります」で納得できる。←例え酒を注文しない人であったとしても。(←これがコース料理じゃない店で、例えば、枝豆です、冷奴です、とか出されたとして、酒飲みなら酒+枝豆でOKになるけど、酒を飲まない人にとっては枝豆や冷奴を出されても、何じゃこれはと、俺の来店動機に対して全く応えてねえよ、となる。)
また単品で発生する追加オーダーと、その追加オーダーが来るまでの受忍時間の問題も起きない。何故ならコースの場合は追加オーダーというのが存在しないから。
B. 熱炒+串燒
代表格は吳⚪︎手など。串焼居酒屋の皮を被った熱炒。熱炒の炒め物は速くできる。特に焼きそばや焼きうどんなら、ある程度先に作って避けといて、注文来たら、サッと炒め直せば出せる。
そして台湾全体的に最もボリュームゾーン多い形式。元々台湾にある台湾で受け入れられて来た熱炒という業態。それは酒を飲む人と飲まない人の両方の受忍時間に応える仕組み。その仕組みに対して、内装を日本風、フードに焼鳥を加えれば一丁あがりとなる。
マツケンサンバは全然サンバじゃなくて日本のJ-POPにサンバに皮を被せただけ。それがいいのだ。
C. Bar+串燒
結果的に神楽が落ち着いた型。受忍時間1-3分以内でその人の目的を提供することが必須な中、「入店目的=酒 or 入店目的=酒+串焼」にしてしまう。そうすれば先ず酒を速く出すことで受忍時間はクリアされる。なおBarと書いたのは説明の都合上であり、本質は入店目的を酒にしましょうということ。決してBarでカクテルでという話はしてない。なんなら台湾には酒が全然売れないBarというのが存在している。
ちなみに、だったら、そもそもフードも串焼き止めればいいんじゃないか?という考えもなくはないが、B. 熱炒+串燒が日式串焼の皮を被った熱炒で成立しているのと同じように、このBar+串燒というのも機能していると私は観ている。
というのも『差別化とは複数の候補から一つを選択する際に考慮される因子であり、既に選んだものを再選択させるため因子ではない』わけで、実際、神楽のお客様は常連になるにつれ串焼きを注文せずにほぼ酒の注文しかしなくなる。つまり、これは機能している。
というわけで、詰まるところ、受忍時間の都合上、いわゆる串焼き居酒屋というのは台湾では成立できないという結論。串焼きは既に成立している何かへの皮を被せるテイスト要因。日本でマツケンサンバは流行ってもガチのサンバは流行らない。
おまけ番外編
D. 二度焼き
そもそも焼いといて焼き直して出す。夜市とかで見かける。受忍時間的には理に適ってる。
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