第28回 母屋とMM棟の位置関係
2月28日の打合せでもう一つテーマになったのは、母屋とMM棟との位置関係だ。
下の合成写真に見える母屋とその手前に建つMM棟が、近すぎるのではと僕は心配した。(青線はセットバックした後の道路境界線。模型の建物位置は、セットバックが考慮されておらず、実際にはもう少し北側(上側)になければならない。)
下の平面図の位置が正しい。青矢印線が最も接近した場所。道路との距離と、母屋との距離が同じくらいだ。
2月9日にアトリエ解体撤去の下準備で実家に行ったとき、少し気になっていた母屋とMM棟の間隔を、イメージしてきた。下はその時に撮った実際の場所の写真だ。上の平面図の青矢印線が、下の写真のそれに相当する。黄色の垂直線はMM棟の外階段の端の位置になる。
僕は母屋にMM棟がすごく近くに迫っており、圧迫感と同時に南西からの日照が大きく妨げられるのではないかと不安に感じたのだ。MM棟の形を、もう少し道路側に寄せるか横長にするなどして、間隔を広げる工夫ができないものか、栗原さんに相談していた。
実はMM棟の位置は、他の要素にもいくつかの影響を与える。
もしMM棟をもう少し道路側に寄せるとすると、MM棟西側の駐車場が使えなくなる。道路西側から入ってきた車を、バックしてそのスペースに停めようとすると、建物角に接触してしまう可能性があるからだ。従って、駐車場をそこではなく、反対側すなわちMM棟東側(2階が庇になる)または、LS棟の2台の駐車場の手前にする必要がある。前者ではMM棟の玄関にかぶさってしまうし、後者では車が3台並ぶため威圧感を与えてしまいそう。どちらにしろ、母屋玄関から道路側を観たとき、視線に駐車している車が入ってしまう。このラインはメインの通路になるため、視界の「抜け」は大事にしたい。
一方、駐車場の位置が変わることのメリットもある。MM棟西側の駐車場予定地には現在、3m以上に成長した槇の樹が生えており、大きな石とでミニ日本庭園のようになっている。そこを駐車場にするため、大いに悩んだが樹の伐採と石の撤去をすることにしている。駐車場にしなければ、石はともかく槇の樹を残すことができる。僕が子供の頃、敷地内にはたくさんの大きな樹が生えていたが、次々に伐採されてもう残っていない。この槇の樹は、僕の上京後に植えられたものだが、せめてこの樹くらいは残しシンボルツリーにしたいと、ずっと考えていた。だが、駐車場の位置にあるため、伐採することに決めていた。それが、どんな理由からであっても、残せるとしたら嬉しい。
このように、MM棟の位置をずらすことには、メリットとデメリットがあり、総合的に判断せねばならない。
2/28の打合せ時、栗原さんは計画中の位置の際の日照シミュレーションを用意してくれていた。夏至と冬至の、それぞれちょど槇の樹の上あたりからの視点(鳥瞰)と室内(コモンリビング)からの視点の4パターン。それらのうち、夏至の鳥瞰と室内からの日照シミュレーションが以下だ。
この打合せの前日(2/27)から母屋に増築した父のアトリエの解体撤去と地盤整備工事が始まっており、翌日には槇の樹の伐採が予定されていた。明日の朝までに、計画を変えるかどうかを意思決定しなければならない。
決定するにあたって、ではMM棟を道路側にずらすとして、どこまで動かせるのかの情報が必要だった。自分の敷地内だからといって、(セットバック後)道路ギリギリまで建てられるわけではない。それは何で決まるのか。僕は初めて知ったが、建築基準法の「道路斜線制限」だ。
道路の日照や採光を妨げないように、一定のルールに従って道路に接する敷地内建物の高さに制限がかかる。建物の位置が道路に近づくほど、道路側の軒を低くしなければならない(但し10m以下)。MM棟の高さはほぼ決まっている。その軒高でどこまで道路に近づけられるかの問題だ。その場で計算してもらったところ、あと60~70cmは道路側に寄せられそうだとわかった。ただし、その前提は道路と建物地面の高さが同じということ。一般に建物地面は少しかさ上げするから、さらに寄せられる長さは短くなる可能性がある。つまり、MM棟を道路側に寄せられるのは、約60㎝に過ぎない。それをどう評価するか?
この日のオンラインによる打合せは、13時から19時半にまでに及び、少々疲れていた。僕は翌日朝までに決めると伝え、打合せを終えた。
日照シミュレーションと平面図と写真などで、約60cm移動の影響をイメージ(そう、まさに頭の中での想像だけ)し、判断せねばならない。数字で判断できれば、どんなに簡単か・・・。
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何度もシミュレーション動画を見直したりしながらイメージし、翌朝計画は変更しないことを連絡した。
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