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2024.10.30 静岡県立美術館「無言館と、かつてありし信濃デッサン館―窪島誠一郎の眼」

急に乗せて行ってもらえることになって、車でばびゅーんと静岡県立美術館へ。

かつて、図書館で借りた窪島誠一郎著「額のない絵」を読んで衝撃を受け、ひとりで信濃デッサン館に行った時に更に衝撃を受けて(道中も衝撃的だった)、ずっと何かと心にひっかかっていたのだが、今回、関連の展覧会が開催されると聞き、一度は行かねば、と思っていたところだった。
かつて、信濃デッサン館を訪れた時の記事はこちら。

ちなみに、友人のお母上はご夫婦でここに行った時、ヒキで建物の写真を撮ろうとして駐車場の端から落ち、足を骨折されたことがあったらしく、それも聞いていたのでよけい、インパクトが強かったのかも。

静岡県立美術館は、下の駐車場から並木沿いに歩けば有名な彫刻作品をいくつも楽しめる上に、館の周りにも歩けるコースがふんだんにあって、四季折々の風景が楽しめる、なかなか良い美術館ではある。
車椅子用には、館のすぐ脇に駐車スペースがあり、スロープで館内に入れるので歩かない人でも何かと楽しめると思う。

さて、今回の展覧会はどんなものなのか…というと。

窪島誠一郎という稀有な目利きによって実現した〈信濃デッサン館〉(1979年開館̶2018年閉館)と〈無言館〉(1997年開館)のつながりに目を向ける初めての展覧会です。 本展では、〈無言館〉に集められた戦没画学生の絵や彫刻とともに、〈信濃デッサン館〉旧蔵の「夭折」した洋画家村山槐多や関根正二、靉光らの絵をご紹介します。人生半ばで世を去った彼らには、戦争と病いとい う違いはあっても、最期まで絵筆を手放すことなく、絵を描きたいという思いが共有されています。その情熱、創造の原点に触れていただく展覧会です。

https://spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/exhibition/detail/112

元々、信濃デッサン館では大正昭和に夭折した画家たちの水彩画やデッサンなどが主に展示されていた記憶がある。村山槐太、関根正二、野田英夫、靉光(あいみつ)など、それまでほとんど耳にしたことのない画家の作品があまりにも力強く、デッサンの描線ひとつひとつにも確固たる意思が見えるようだった。そしてどこか哀しみをまとっている。「夭折」ということばに惑わされたからだろうか、などと思いながらもひとつひとつの作に見入ってしまっていた。

今回の展覧会は、入ってまず、戦死・戦病死など戦没画学生たちの肖像画と向き合う場から始まった(ここのみ撮影可)。

そこから部屋ごとに構成があって、
第1室 夭折した画学生たちが実家に遺したものを中心に展示されている。村山槐太「尿する裸僧」と中村萬平「霜子」もこちらに。
関口清、佐藤孝の手記等が含まれた「きけわだつみのこえ」も紹介されている。特に関口清のスケッチが切ない。
第2室 現在上田市にある「無言館」の紹介。
第3室 画学生たちがたいせつに思う家族、近隣風景など、特に出征を控えて描かれたという蜂谷清「祖母の像」が描いている孫をじっと見つめているのか、と思うと胸に迫るものがあった。
第4室 静岡県ゆかりの5人の画学生が取り上げられている。曽宮一念の息子である俊一の作品もあった。お父さんとどこか相通じる力強い描写。父が戦地の息子にあてて書いた手紙などもあって、息子がどこかに移動する際、途中駅まであわてて出かけ、ようやく束の間会えたという話も父の子を思う気持ちに打たれた。
第5室 戦争に直接関係した絵や挿絵など。特に驚いたのが、小磯良平と藤田嗣治とが描いた戦意高揚のための巨大な「戦争画」。多分初めて見た。
どちらも画力があるので、迫力もすごい。それを誰が責められるのか?という点でも何かと思うことあり、しばし絵の前で佇んでしまった。
そしてこちらには、靉光「眼のある風景」も!
お名前忘れてしまったが、中国の人々、特に子どもや市井の有様などをスケッチしていた小さな作品たちがとても良かった。服装なども気になったのだろうか、細部も生き生きと描かれていた。
第6室 信濃デッサン館の原点に戻る感の部屋。懐かしい作品が多い。戸張孤雁の輪郭のみですっと描かれたような玉乗りの姿が個人的にピカイチだった。
村山槐太が惚れたという少年のパステル画「稲生像」は、相変わらず目を合わせてくれないのに(当たり前だが)初々しさが青色の中から立ち上ってくるようだし。
第1室にあった「尿する裸僧」もとにかく水量半端ない!エネルギー放出量どんだけ?みたいな勢いを今でも見せているし、嬉しい限りだった。

単に反戦とか平和な世の中を、という思いだけではとうていくくれない、人間の業の深さから闇から無念から愛から何から何まで含めて、やっぱり生きていてがんばらねば!と素直に思えて、大きなため息ついて会場を後にしたのでした。

今回は記事をまとめたのが最速かも!
まだ会期がじゅうぶんありますので、よろしければ是非に。


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