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「竜とそばかすの姫」この違和感は何か?(ネタバレあり)
9月23日に日テレ金曜ロードショーで映画「竜とそばかすの姫」が地上波で初放送された。自分は見ていなかったのでこれを機会に見たのですが、 モヤモヤした違和感を抱きながら見終わる感じでした。
このモヤモヤについて書いて行きます。
基本的に良い物が揃っている
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主役である内藤鈴を演じる中村佳穂さん、鈴の友人であるヒロちゃんを演じる幾多りらさん、どちらも歌手で「竜とそばかすの姫」で初めて声優として出演している。
とはいえ、キャラクターとマッチしていてとても良かった。
また、Uの世界で歌う場面は中村さんの歌声が素晴らしかった。
内容だと、ネット上で向けられる悪意に関しての描写が凄くリアルであった。
キャラクターに関しては、鈴とヒロちゃんの友情やルカちゃんのカミシンへの好意が通じた時の場面が凄く良かった。
この点において「竜とそばかすの姫」は良い物は揃っているんです。
綺麗な美術で舞台を作りキャラクターを動かすスタッフ、良い演技を見せてくれた出演陣どれも最高で魅せてくれた。
だが、こうした上でモヤモヤがある作品に見えたのです。
詰め込み過ぎた作品
超巨大インターネット空間「U」と主人公達が住む高知県の町が交互する舞台は細田守監督の作品だと「サマー・ウォーズ」のようでもある。
「サマー・ウォーズ」は家族と言うテーマと共に主人公の小磯健二がネット上での対決で現実世界の危機を阻止しようとする内容でした。
今回の「竜とそばかすの姫」は母親の喪失からトラウマを抱え、人前では歌えなくなった主人公の鈴がネット空間「U」で歌を再び歌い、有名人になって行くと言うストーリーになっている。
このネット上の有名人になる事でBelleもとい鈴は称賛と非難を浴びます。また、Uの中で荒らす者として嫌われている竜の正体をヒロちゃんと鈴は探すものの、関係ない人達を巻き込んでしまう。
そんなネットリテラシーに関する場面が上手く噛み合っていた。
だが、そこへ現実世界の鈴に関する問題も作中に登場する。
女子生徒達から絶大な人気があるイケメンの、しのぶくんに関する騒動にルカちゃんとカミシンについての事や、母親の死からろくに話さなくなった父親との関係、そこへ兄弟が虐待されている問題
ストーリーの脇に置くにしては重く、引っかかりが強い要素だ。
Uの世界を描きつつも、現実世界のストーリーも広げた事で物語のブレがあるように思えたのが、自分としてのモヤモヤの正体なのかもしれない。
取捨選択が出来ていれば名作に?
「竜とそばかすの姫」は鈴がBelleとしてUの世界で活動するストーリーが軸や幹としてある。この軸には鈴の活動をサポートするヒロちゃんとの場面と竜との「美女と野獣」をモチーフとした場面も含まれる。
そこへ、ルカちゃん・しのぶくん・カミシンなどの同級生や女子生徒達との関係、合唱隊のおばさん達、鈴の父親、虐待を受ける兄弟たちの現実世界の場面が枝葉としてある。
ストーリーの軸に対して枝葉となる物が多いのだ。
もしも、枝葉の部分をかなり削ってUの世界に関わる部分だけに絞れば見易い作品となったのでは?と思う。
細田監督が望んだ「美女と野獣」を作りたいと言う望みを叶えて作品の大部分を占めても良かったのかもしれない。テーマを絞ると言う意味において。
作品の終盤で父親から虐待を受けている恵と知の問題も、不要な枝葉の1つと言える。
その理由について述べて行きたい。
虐待救済場面は必要か?
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終盤の虐待から鈴が救い出す場面、かなり重い問題でありながらちゃんと解決したのか(恵と知が父親から離れて生活ができているのか)分からないまま作品自体が幕を引く事になる。
結局は鈴がUの世界で素顔を晒して、素の自分で歌えるように成る為の踏み台に恵と知が用意された様にしか見えなくなる。これでは恵と知は「冷蔵庫の女」のような都合の良いキャラにしかなっていない。
また、鈴がネット上で恵と知に話しかけても恵から拒絶された事から、しのぶくんは信用を得る為に、素顔をUの世界で出す様に強く求める。鈴は決意してUで素顔で歌う。
そこから鈴が東京へ向かい恵と知を助けに行きますが、誰も同行しない。
個人的には、Uの世界で素の姿を見せるように強く求めたしのぶくんは付いて行けよと思ったものです。
更に合唱団の大人達も駅へ送るものの、見送る。
暴力を振るう大人の居る所へ1人で送り出す。主人公を引き立てるにしても違和感があるし、何よりカッコ良くない。
「サマー・ウォ―ズ」では陣内家の大人達がスーパーコンピューターや発電用に漁船を丸ごと持って来たり、自衛隊の野戦用通信機材をも持ち込んだり、でサポートする姿がカッコ良かっただけに「竜とそばかすの姫」におけるこの一連の描写は残念過ぎるのだ。
東京に着いてからお供をしている人とはぐれても良いから、鈴に1人だけで戦わせる描写はして欲しくなかったなと思う。
個人的には「竜のそばかすの姫」は良い所が大きくあるのに、大きく引き下げる事をしてしまった残念な作品だった。