不思議な家
登場人物
男 女 婆ちゃん 先輩 謎の少女
これはあるところに越して来た若い夫婦のお話でございます。
男 「いや〜やっぱり自然に囲まれるって気持ちいいな。」
女 「そうね。このお家にして良かったわね。」
男 「そうだろ。緑は豊かだし、さっき挨拶に行ったけど近所の人たちも良い人そうだし。よし、早速荷解きでもしますか。」
女 「ねえ。その前にちょっとその辺、散歩してみない?」
男 「そうだね。」
二人、出かける。少し行った所に広場のような所がありまして
女 「アラ、あそこに子供がいるわね。近所の子かしら・・」
男 「本当だ。お祭りか何かあるのかなぁ。着物着てる」
女 「あんなに楽しそうに走り回って・・あ!転んだ」
男 「(駆け寄る)お嬢ちゃん、大丈夫?・・・怪我はなさそうだけど・・あ〜。下駄の鼻緒が・・ちょっと待ってて(ハンカチを取り出して直す)このハンカチでこうやって・・・ヨシっこれで良いかな。気をつけてね・・・走って行っちゃった・・・」
女 「あの様子なら大丈夫そうね」
村のお婆ちゃんがやってくる。
婆 「アラお出掛けですか?」
男 「あ、お隣のお婆ちゃん・・いえ、ちょっと散歩でもと思って・・」
婆 「そうですか。私も散歩がてら買い物をして来まして・・あ〜そうそう、先程は結構な物をいただきまして」
男 「いえいえそんなとんでもないですよ。」
婆 「お返しと言っては何ですがこれ・・・つまらない物なんですけど・・」
男 「いやいやお返しだなんてそんな・・」
婆 「いえ、買い物帰りに電気屋さんの前で福引きをやっておりましてね。それでいただいた物ですがウチじゃこうゆう物はあまり使いませんもんで、かと言って捨てるのももったいないんでこれ、もらっていただけますかね?」
男 「そうですか・・じゃあ、ありがとうございます。何だろう(包みを開ける)・・・ハンカチだ・・」
二人ウチに帰ってきて
男 「さっきもらったハンカチだけど・・コレすごく良いやつだよ。シルク100%って書いてある。」
女 「アラ本当。かえって申し訳ないわね」
男 「それはそうとさ、あのお婆ちゃん、不思議な人だよね?」
女 「そう?そんなないと思うけど」
男 「いや、変だよ。あの服装みた?」
女 「服装って・・普通の田舎のお婆ちゃんって感じじゃない。」
男 「そうなんだけどさ、なんか変だよ。頭に巻いてる手拭いがさぁ、なんかやけに光沢があるし・・あれ絶対木綿じゃないよ・・履いてるモンペもさ、なんかやけに高級な感じなんだよな。
女 「何言ってるのよ。高級なモンペなんてあるわけないでしょ。勘違いよ。」
男 「そうかなぁ。それにあの人、裸足だったよ。あんな良い服着てるのに・・」
女 「そんな事ないでしょ?見間違いよ。」
男 「いや、確かに裸足だったよ。」
女 「野良仕事か何かするのに汚れるからじゃないの?」
男 「にしてもだよ。それならなんか、サンダルとか履くでしょ普通。」
女 「もう!そんな事いいからさ、食器出すの手伝ってよ」
二人、引っ越しの段ボールの開梱をしておりますと
男 「あ!」
女 「どうしたの?」
男 「これ見てよ」
女 「何?・・あら〜コーヒーカップが割れちゃって・・」
男 「しかも二つもだよ。そういえばさ、引っ越し業者の中に1人、妙にどんくさい奴いたよな。あいつかな?」
女 「まあでも良いじゃない。他のは大丈夫?」
男 「ん〜だいじょうぶそうだね。」
女 「カップだけで済んで良かったわね。」
ピンポーン。
女 「アラ、誰かしら?」
男 「俺でるよ。誰だろう。(ガチャ)あ、先輩じゃないですか?」
先輩 「おーやっとたどり着いた〜。大変だったよここまで来るの。いや〜良いウチ買ったなぁ」
男 「先輩、どうしたんですか?」
先輩 「どうしたって・・君たちの新居を見に来たんだよ。これお土産。クッキー嫌いだっけ?」
男 「いや好きですよ。ありがとうございます・・じゃなくて。来るんだったら連絡ぐらいしてくださいよ。」
先輩 「こうゆうのはサプライズだからいいんだよ。」
男 「だからって引っ越してきたその日に来なくたって・・」
女 「あがっていただきましょうよ。せっかくこんな遠くまでいらしたんだから。」
先輩 「ほら。奥さんだってこう言ってるし。じゃあ3人で乾杯だ!実はビールも買って来てるんだ。」
というようなわけで3人で飲み始めます。しばらくいたしますと
先輩 「あ〜そういえば!これ忘れないうちに(カバンから箱を出して渡す)これお祝い」
男 「え?ああ、そうですか。なんかすいません気ぃ使ってもらっちゃって・・・早速開けてもいいですか?」
先輩 「お〜いいよ。」
男 「(箱の包みを開ける)・・あ!コーヒーカップだ!」
先輩 「そんなにおどろかなくても・・・別にそんな高価なもんでも・・」
男 「そうじゃないんですよ!さっき引越しの段ボールを開けてたら今まで使ってたのが壊れてて、ちょうど新しいの買おうと思ってたんです。ありがとうございます!」
先輩 「そうか。ちょうど良かったな。」
男 「いや〜こんな偶然ってあるんですね〜」
先輩 「喜んでもらえて良かったよ。じゃあお暇しようかな」
男 「いや、もうおそいですから泊まってってくださいよ。」
先輩 「いやいや、引っ越して来たばかりのウチに泊まるなんて・・」
男 「でも先輩、車で来てるんですよね?だめですよ飲酒運転は。電車だってもう終わってるし・・・」
先輩 「そうかあ?なんかかえって申し訳ないな」
なんてな具合にその晩はそんな感じで。明くる日になりまして。
先輩 「いや、ほんとにもうしわけない!」
男 「いやもういいですって。買い替えようかどうか迷ってたところなんですから。ほんとですって。きにしないでください。」
先輩 「そうはいってもさ、人のうちに泊まって布団の上で寝ゲロするなんて。しかも新居でって・・こっちの気持ちがさ・・」
男 「いいですからホントに。大丈夫ですから。先輩にはいつもお世話になってるんですからホントに気にしないで・・・何・・電話?うん・・あ、先輩、ちょっといいですか?すぐに戻って来ますから・・ハイもしもし・・おう久しぶり!どうしたの?・・うん・・・で?・・ホントかよ!うん、もらうもらう!ちょうど欲しかったところなんだよ。話すと長くなるから今度ゆっくりな・・うん・ありがとな。じゃまた。
先輩聞いてくださいよ!大学の時の友人からだったんですけど、今、部屋を断捨離してるらしくてベットがいらなくなったから貰ってくれないかって言うんですよ!ですからね。もうホントに布団のことはいいですから!ね?」
先輩 「ホントに?うそついてない?そうだとしてもさ、もうしわけないよ。」
男 「いやもうほんっとに大丈夫ですから。じゃあこうしましょう。今度また焼肉奢ってください。」
先輩 「・・そう?・・じゃあ必ず埋め合わせはするから・・ゴメンね。(帰る)」
女 「でもなんかすごい偶然が重なるわね。ハンカチといいコーヒーカップといい布団といい。なんかちょっと気持ち悪いわね。」
男 「偶然だよ。気にすることないよ。昨日買ってきたケーキ食べよ。」
女 「そうよ、食べそびれてたわね。」
男 「・・あ!」
女 「どうしたの?」
男 「ケーキ、車の中に置きっぱなしだ!(出て行ってケーキを持って戻って来る箱の中を開けて見せながら)ゴメン」
女 「あら〜昨日暑かったもんね・・しょうがないわよ・・あら、誰か来たみたいね。私でるね。(玄関まで行く)ハイ・・あ、隣のおばあちゃん!どうしたんですか?」
婆 「あのですね、さっきウチに来客がありましてね。お土産に持って来てくれたんですけど、一人じゃあこんなに食べられませんで・・こう言ったものはお好きですかね?」
女 「そうなんですか・・アラ!ケーキ!・・またこんな偶然・・・しかもこれって、予約しても2年待ちが当たり前のあの店・・せっかくですんで上がってってください。」
婆 「いえいえ、上がると床が汚れますから」
女 「そんな事ないですよ。どうぞお上がりください。」
婆 「いえいえ、ここまで裸足で来てしまったので、泥がついてしまいますんで。」
男 「あ、今日も裸足、まぁ、今拭くもの持ってきますんで大丈夫ですよ。上がってってください。」
3人でケーキを食べながら色々と世間話をしておりましたが、そのうちに話題も尽きてきて、このたびたび重なる偶然の話をしてみることにしました。
女 「ということなんですよ。なんだかだんだん気味が悪くなってきて」
男 「いや偶然だって。珍しいことかもしれないけど、物理的にはあり得ることだよ。」
婆 「いや、そりゃあ偶然ではありませんよ。この村の神さまの仕業ですな。」
女 「神さま?」
婆 「そうです。ここの神さまに気に入られますとな。あなた方が今言った様な事が起きるんですな。何かが壊れたら誰かがそれよりもっといい物を持って来てくれる。私も昔そういうことがありました・・見てください。
この手拭いにモンペ、なんて言う名前かは忘れてしまいましたが、大層高価な物だそうで
・・」
男 「やっぱりそうですよね!ホラ!やっぱりだよ。いや〜不思議な事があるんですね。って事は、お婆ちゃんちの前にとまってるあの高級車も」
婆 「えぇ、そうなんですよ。去年、山道を走っておりましたら草むらからウサギが飛び出してきて、それを避けようとしましたら、木にぶつかってしまって。そのすぐ後ですよ。古い友人がなんでも、懸賞に当たったとかで。でもその人は車には乗らない人ですから、良かったらと言って譲ってくれたんですよ。」
女 「あんな車で畑仕事しに行くなんて不思議に思ってましたけど、そうゆう事だったんですね。」
婆 「あと、ウチで今飼っております。ポチもそうなんです。」
男 「え、そうですか?ポチって庭でいつも走り回ってる犬ですよね?見た感じ、普通の芝犬っぽいですけど、血統書か何かついてるんですか?」
婆 「そんな事はないです。昔の事でございますが、前に飼っておりました犬がこの辺りに台風が来た時に風で倒れた木の下敷きになって死んでしまいましてね。悲しんでおりましたら、何日か後に、旅人がこの村に来ましてね。泊まるところが無いと言うので泊めて差し上げたら、お礼に彫り物をしてあげましょうといいまして。それでその倒れた大木で彫っていただいたのがあのポチなんですよ。」
男 「木で掘ったって!でもあの犬、走り回ってますよね?」
婆 「よくわかりませんが後で聞いた話によりますと、その旅人と言うのは有名な彫刻の名人だそうで。」
女 「どこかで聞いた事あるわ。」
婆 「とにかく、このウチは神様に好かれているようなので、これからもこんな事がおこるでしょうね。私はこれで失礼します。すみません、すっかり話し込んでしまいまして。」
女 「そうですか、ではまたお気をつけて.....不思議な話ね。そんな事ってあるのかしら。」
男 「まぁ、昔から住んでる人が言ってるんだしなぁ。でもなんであのお婆ちゃん、裸足なのかな?」
女 「そうよね、ああゆう健康法かしらね。アラもうこんな時間。明日も仕事なんだから寝ましょ。」
男 「そうだね。じゃあこのお皿も片付けて....あ、あ〜っと!(転ぶ)」
女 「どうしたの?大丈夫?」
男 「いててて。うん大丈夫、ちょっと立ちくらみが。でもお皿が....あ、全部無事か。なんだ、また割っちゃったかと思ったよ。でも割ったら割ったで、神様の力でもっといいのが手に入るかもね。」
女 「なに言ってるのよ。欲張った事言わないの。怪我してなくてよかった。...アラ大変!」
男 「どうしたの?」
女 「シャツにコーヒーが...」
男 「え?あ〜!奮発して買ったやつなのに〜。うわー、シミになっちゃうかな。」
女 「アラ電話、誰よこんな時間に....ハイ?アラ、どうしたの?うん、うん、....ホントに、ありがとう!わざわざ電話なんていいのに。うん、じゃあ今度ね。ハーイ。ねぇ、聞いて。私の高校の時の友達からなんだけど、旦那さんがシャツを何枚か買ったんだけど一つだけサイズ間違えちゃったらしいの。で、もしよかったらあなたにって」
男 「ホントかよ。」
なんて、このような感じでこの後もうちの中の物が壊れるとどこからともなくもっと上等な物が手に入るという不思議な現象が続きまして。
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