創作落語「クローン」

この話は以前、僕が作って口演したものの台本です。今後またやる事もあれば僕以外の噺家がやる可能性もあります。

時間や場所の都合で観に来られないという方に楽しんでいただければと思い掲載致しました。


科学の進歩はすごいもので、昔はできなかった事が今は簡単にできてしまうなんて事がいくらもございます。しかし、倫理的な問題でできない事も色々とあるようで。人間のクローンを作ろうなんて事を考えていると周りから騒がれてしまう。

そうは言ってもそこに可能性を感じればやってみたくなるのが科学者だ。と言っている方もいらっしゃるようですが

登場人物 博士 助手

助手 博士!お呼びですか?

博士 おお!来てくれたか。ついに例の薬が完成するかもしれんぞ!

助手 例の薬というと、クローン薬ですか⁉️

博士 その通りだ。私の仮説が正しければこの薬を使えば、たとえわずかな細胞からでもクローンが作れるのだ。

助手 すごいじゃないですか!

博士 早速実験だ。悪いが君、髪の毛を一本もらえるかな?元になる細胞がいるんだ。

助手 わかりました。

博士 ありがとう。プチ

助手 痛ッ!博士、いきなり抜かないでくださいよ。

博士 すまんすまん、ではこの髪の毛にこの薬をかけて

助手 うわ、なんだ?髪の毛から大量の煙が
ゴホッゴホッ!ン?なんか煙の向こうに何か見えるぞ。人の形してる!
顔も僕にソックリだ!やりましたね!

博士 いや、これはまだ完成とは言えない。

助手 どうしてですか?

博士 よく見たまえ。髪の毛がまっしろだ。

助手 いや、そうですけど、ここまで似てるんですから誤差の範囲ですよ。クローンの完成です。

博士 いや、これをクローンと呼ぶわけにはいかない。どちらかと言えばこれはシローンだな。

助手 シローンですか?

博士 左様、少し成分の調整が必要かもしれん。このくらいの失敗で立ち止まる訳にはいかん、リトライだ。
髪の毛もらうぞ。プチ

助手 痛ッだからいきなり抜かないでくださいよ。

博士 よし、また髪の毛に薬をかけて、

助手 お!またさっきと同じように煙がもくもくと、また煙の向こう人影が、
そしてまた、僕とそっくりだ。髪の色も黒い。博士!今度こそ成功ですね。

博士 いや、これも失敗だ。

助手 どうしてですか?

博士 よく見たまえ、これはクローンではない。瞳の色が青いこれはアオーンだ。

助手 アオーン!目の色しか違わないならもうクローンでいいじゃないですか?

博士 そうはいかない。神は細部に宿るものだ。海外から輸入した薬品を使ったのがいけなかったか。

助手 そうゆう問題ですか?

博士 落ち込んでいる暇はない。次だ。プチッ

助手 痛ッこれ切ったやつじゃダメなんすか?

博士 よし、これにまた薬を、

助手 また煙から、僕にソックリの人間が。今度は髪の毛も目の色も正常だ。
博士、ようやく完成ですね。

博士 いや、これも失敗だ。

助手 どうしてですか?どう見てもクローンですよ!

博士 顔が少し赤いだろ。これはアカーンだ。

助手 アカーン⁉️

博士 消毒用のアルコールが少し混ざったのかもしれん。

助手 酔ってるんですかコレ。

博士 つべこべ言っている暇はない。次だ。プチ

助手 痛ッだからもう。また煙が出て人が出てきてますね。ここまではいいんだよな。

博士 今度はどうだ!

助手 あ!今回もダメですね。顔は普通ですけど、首から下が全部黄色ですよ。

博士 またしても失敗か。

助手 おおかたコイツは「キーン」ですか?

博士 君!ふざけてるのか?

助手 すみません。

博士 これはキーンなどではない。「いやんばかーん」だ。

助手 は⁉️なんですかそれ。

博士 首から下が黄色い人間といえば「いやんばかーん」と相場が決まっている。

助手 いや、意味わかんねーし。

博士 ラーメンの汁を入れたのがまずかったか。

助手 何でそんなモンいれてんすか。

博士 ちなみに首から下がオレンジならば、チャンラーンだ。

助手 くだらないですよ。はい、じゃあ髪の毛あげますから次やってくださいよ。

博士 お!わかってきたな。よし、今度はどうだ

助手 お?また現れましたね。でもなんかおかしですよ。両手に赤いものがついてて上半身は裸で下半身はトランクスを履いたような形で、顔は殴られたようにボコボコ、血と汗にまみれている。わかった!博士、これはおそらく、スタローンですね?

博士 いや、早合点してはいけないよ、きみ。これは、エイドリアーンだ。

助手 何言ってるんですか!エイドリアンは恋人の名前じゃないですか!これはスタローンですよ。

博士 そんな事言ったらスタローンだって役者の名前じゃないか!

助手 あぁ、そうか、いやそんな事どうだっていいんですよ!

博士 薬の中に生卵を入れたのがいけなかったようだ。

助手 調合するもの間違ってますよ。早くやり直してください。

博士 わかっておる。これでどうだ!

助手 また煙がモクモクと、そこから人が現れて・・・あれ?現れませんね。

博士 またしても失敗か・・・いや、そうではない!見たまえ!煙がだんだんと1箇所に集まってきているぞ。

助手 あ!ホントだ。煙が塊になって・・・お!動いた!わ!また!あちこち飛びまわってる。博士、何ですかコレは?

博士 コレはおそらく、キントーンだな。

助手 キントーン⁉️人ですらない!あ!窓から出て、飛んで行っちゃいましたよ。

博士 多分、あそこに帰ったのだろう。

助手 あそこってどこですか?

博士 かりんトーン。

助手 かりんトーン?なんスカそれ?それ言うならカリン塔でしょ。いやその前にカリーンでいいじゃないですか?ってゆうか別にカリン様もカリン塔も僕らが作ったわけじゃないんだからカリーンとか呼ばなくっていいんですよ。って言うか今これ何の話ですか⁉️

博士 君が一人で盛り上がってるだけじゃないか。さ、気を取直して次だ。

助手 今度こそちゃんとやってくださいよ。お、また煙が出てきて、中から何やら・・・ん?人じゃない。大きな黒い塊が・・・何かのケースみたいだ。

博士 君!ちょっと触ってみたまえ。

助手 え⁉️僕ですか?・・・わかりましたよ。・・・ん?なんか温かい。生きてるっぽいですよこれ!

博士 もしかしたらコイツは何かのサナギかもしれんぞ。

助手 ってことは、中から何かが・・・・あ!何か出てきた!なんだコイツ?僕とぜんぜん似てない。鼻は高いし眉毛は濃いし掘りは深いし、何ですかこれは?

博士 カルロスゴーンだな。

助手 ゴーン⁉️確かにケースから出てきたけど。・・・あ、ケースから同じようなのがもう1人出てきた。

博士 そっちはビーンだ。

助手 どうでもいいですよ。ホントにこれやり方あってるんですか?変なのばっかり作って

博士 いや、すまなかった、今度、うまくいくと思ううんだ。

助手 いえ、もう博士には任せられません。僕にやらせてください!

博士 それはだめだ。この薬は扱いが難しいから

助手 何言ってるんですか!僕がやった方がもっとましにできますよ。いいから薬をこっちに貸してください。

博士 乱暴はいかん!

助手 いいから離してくださいよ。

博士 そうはいかん。

てな具合に奪い合っておりましたら薬の入ったビンが床へパリン!と落ちましてまばゆい光をはなったかと思うや否や研究所ごと木っ端微塵に

ドカーン!

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