急性中耳炎の診断Botを作ったこと。

耳鼻咽喉科の開業医をしています。

急性中耳炎は小さいお子さんがかかりやすい病気なんですね。急性中耳炎になった時は耳が痛くなったり熱が出たりするので親御さんも「病気にかかったな」と気づきますのでお子さんをクリニックに連れていらっしゃいます。

クリニックでは親御さんに「お薬を飲み終わる頃にまた耳を見せに来てください」とお伝えします。これは治ったかどうかを小さいお子さんはちゃんと親御さんに伝えられないので、治ったかどうかはもう一度耳を見ないとわからないからなんです。

親御さんたちは大変ですね。時には会社を休んだりして時間を作ってお子さんの耳を見せに来てくださいます。しかし、中耳炎が治ったかどうかの確認は1分ほどで済んでしまうんですね。

「家で中耳炎が治ったかどうかわかれば皆さん助かるだろうな。」と思います。

耳かきのために耳を見るスコープが3000円くらいで通販で売っているんですね。試しに買って鼓膜を見てみるとかなりきれいに鼓膜が見えるんです。あとはAIなんかで診断できれば自宅でも調べられるのでは?と考えましたが、当時(1年前)の私はガラケーを使っているくらいのデジタル音痴でした。

調べてみると「ビジネス・ICT・アート」を教えてくれるデジタルハリウッド大学大学院という専門職大学院があって、授業は夜や土曜日にあるみたいなんですね。そこにデジタルヘルスラボというラボがあり「デジタルテクノロジーで医療の諸問題を解決しよう!」という医師が集まっているのを知りまして、今年4月に思い切って入学しました。スマホも買いました。

こちらでプログラミングの基礎を教えて頂いたり、自分で勉強したり、患者さんに鼓膜画像の提供していただいたり、他の医師にも撮影協力していただいたりして、AI(ニューラルネットワーク)のモデルを作ることが出来ました。精度も9割以上となかなかよかったのですが自分のパソコン上でしか使えないんですね。これをスマホとかで他の方も使えるようにしたいと思いました。

自宅の近くのプログラミングスクールにいくつか行ってみて「スマホアプリを作りたい」とかとか「AIを勉強したい」と聞いてみたのですが教えられないって言うんですね。AIプログラマーの皆さんは独学なんですかね?

調べてみるとプロトアウトスタジオというスクールがあってその辺を教えてくれそうなのと、授業が土曜日午後だけなので思い切って10月に2期生として入学しました。奥さんには本当に感謝です。

ここではAPIというプログラムするときに使えると超便利なものを毎週教えてくださいます。数年前まではちゃんとしたプログラマーが時間をかけないと実装できなかった技術が今どんどん一般化してきていて、プログラムの初心者でも利用できるようになってきているようです。

教わった後は課題が出されます、毎週なんかしら作品を作ってQiitaというプログラマーの情報共有サイトに投稿しないといけないんです。これが鍛えられるんですね。

こちらで教えていただいたLINE BotというLINEにメッセージを送ると自動で返信が返ってくるものと、Microsoft Custom VisionというAI画像認識サービスを使って、作りたいと思っていた急性中耳炎の診断Botを作ることが出来ました。出来た時は本当にうれしかったですね。

内容は

1、鼓膜の写真を撮れるスコープ(通販で3000円位)を使って、鼓膜の写真を撮ってLINEに送る。

2、急性中耳炎か滲出性中耳炎か正常な鼓膜かをAIが判定して答えが返ってくる。

3、急性中耳炎の場合は鼓膜の腫れ、赤さ、耳漏の程度で重症度をAIが判定し、さらに年齢、痛みの程度、発熱の程度、機嫌の悪さを質問してくる。

4、この質問に答えていくと急性中耳炎の重症度を判定しおすすめの治療法が返ってくる。

動画です(こちらは医師が利用することを想定したバージョンなので用語が難しくなっています。)https://youtu.be/mntqc3eEeSA

こちらのスクールの特徴はプロダクトを制作できるようにするだけでなく、世の中の評価を受けるためにアウトプットしていこうという所なんですね。技術のコモディティ化が進む世の中で、この動きが広まればモノづくりに革命がおこるのではないでしょうか。

私もヒーローズリーグというモノづくりのイベントに出して、LINE株式会社さんから賞をいただくことができました。嬉しかったですね。

ただ、今の日本の法律では医師以外が病気の診断を行うことはしてはいけないのでこのBotを患者さんが自宅で使うことは出来ないんですね。患者さんにご自宅で使って頂くためには、需要があることを示して制作を手伝ってくださる会社を探したり、データの収集を手伝ってくださる医療機関を探したり、安全性と有効性を証明して医療機器として承認されたり、さらに診療に関する法律が変わらないと実現しないんですね。

考えれば考えるほど大変そうです。

今はそこまで挑戦する覚悟はないので画像データを増やしながら、クリニックに中耳炎で再来された患者さんに、医師が指導しながら実際に使って頂いて、有効性と安全性の検証を行っていきたいと思っています。

スクールは半年間なのでちょうど半分くらいです。今は違う医療系のサービスを作成中です。プログラミングで作りたいサービスを実現していくことは大変ですが楽しいですね。

またサービスがある程度形になったらご報告したいと思います。








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