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白鳥最大の工作「プラネタリウム」
はじめに
草津天文研究会(以下,草天)は20年以上続く歴史ある天文研究会である.
2016年(白鳥,2回生),ロケット研究会RiSAとは別に,草天にも入会した.
2回生からの入会であったが,物理科学科の友達も多く,RiSAの先輩も所属していたので,気兼ねなく交友の輪の中に入っていくことができた.
ただの飲みサー?
草天では,大学の天体望遠鏡を使用することができたり,長期休暇に観測合宿をしたり,定期的に関西の天体観測スポットを訪れたりするほかに,地域交流としてプラネタリウム講演などの活動をしている.
しかし,その裏の顔は学内での飲酒を全面禁止に追い込んだ悪名高い「飲みサー」であった.
聞くところによると,飲み会会場(京都三条にある)では,「汚染」を防ぐため事前にビニールシートが敷かれ,コールによる「つぶしつぶされ」の殺伐とした状況だったそうである.
世代交代の際に,「歴代会長の名前が記されたジャンパー(くさそう)」と「全日本コール選手権2,3の2本のDVD」の3点が現会長から次期会長に手渡されるという草天謎伝統に「飲みサーの歴史」が継承されている.
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白鳥は「草すぎる草天三種の神器」と心の中で呼んでいた.
ちなみにYouTubeで「全日本コール選手権」で検索すると一部を視聴することができる.これらの視聴会をやっていたら,もう少し飲み会に参加していたかもしれない.
実際「飲みサー」であったのは白鳥の世代よりも数年上の世代の話であるというが,白鳥目線では,当時でも十分飲んでいた印象を受けた.
ほぼ合宿だけ参加する白鳥
白鳥は,定例会や観測にほとんど参加しない幽霊部員であった.
ただ,長期休暇の合宿だけは参加するようにしていた.団体なので費用が安めで,他の人が立てた旅程にほぼ便乗できたからである.そのうちの一つに広島がある.
平和記念公園,原爆ドーム,大和ミュージアム,そして日本三景の一つである宮島に行くことができたのは本当に良かった.
当時は「太平洋戦争があったんだ」くらいの認識であったが,その後にハワイのPeral HarborやニューメキシコのThe National Museum of Nuclear Science & Historyに訪れるたびに,広島での思い出が増幅された.
ほぼ合宿だけ参加するスタイルは,一回生から所属していたサッカーサークルS.F.C.においても貫かれている.こちらもなかなかクレイジーで愉快な人々が多く,退屈しなかった.
4回生のみなさん卒業おめでとうございます🌸
— 立命館大学 S.F.C (@Siesta_f_c) April 2, 2019
本気でサッカーを楽しみ、本気で遊びも楽しんでる姿はとても尊敬できました⚽️🏃♂️
これからは社会人というフィールドに変わりますが益々のご活躍を期待しております!
いつでも遊びに来てください🍾
またサッカーしましょう☺️🙌
ほんとうにだいすきです😂 pic.twitter.com/IImFULkCol
気心の知れた友人たちと遠出することは本当に楽しいものであった.大学でのサークル合宿が「もっと色々な場所に行ってみたい」という白鳥の旅欲求を刺激したことは間違いない.
幽霊部員,役職を得る
2016年末,先輩方が引退し,我々24代草天が役員をつとめることになった. 幽霊部員にもかかわらず,白鳥はHP/Twitter委員を仰せつかった.
HP/Twitter委員の役割はデジタル媒体を駆使して,草天の活動を世間一般にお知らせすることだ.
しかし,当時の草天は,ほぼ四半世紀も続いてきたにもかかわらず,HPを所持しておらず,ブログは閑古鳥が鳴く有様であった.
メンバーが撮影した息を呑むような天体写真展や神話を盛り込んだプラネタリウム講演などの魅力的な活動をしているのに,それを周知しきれていないのが残念でならなかった.
以下は2017年7月に大学に取材していただいた記事で,ギャラリーにはいくつかの天体写真がある.コピーライトにNASAと書いてあっても疑わないだろう.
そこで,他の学生活動(学内異業種交流会SOIL&SOUL)でHP作成経験があった白鳥は1週間でHPを作成した.どうやら今でも使われているようだ.
さらに,従来までのHP/Twitter委員のみがブログ更新をするシステムを,活動に参加した人に執筆をお願いするシステムを導入した.
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これにより,2017年のブログ投稿数は大幅に増加し,自然とTwitterでの投稿数も増え,フォロワー数の増加につながった.
これが白鳥の草天における最初の貢献となり,この広報活動を通して,改めて草天の活動をより理解するようになっていった.
自然と草天会長とのやりとりが増え,2017年4月17日に交わした以下のLINEがきっかけで新しいプラネタリウムを製作したいという話となった.
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草天高度化プロジェクト始動
言い出しっぺの白鳥がプロジェクト責任者となり,「草天での魅力的な経験をより多くの人に」という目的を掲げ,草津天文研究会「高度化プロジェクト」が始動した.
アイデアとプロトタイピング
草天は複数の扇風機を使って常にドーム内に空気を流し形状を保持するエアドームとピンホール型プラネタリウムを使用してきた.
扇風機がうるさく,空気の漏れによりドームが不安定になりやすく,かなりアナログなプラネタリウムであった.
そこで,自立式ドームとデジタルプラネタリムを製作することを目標に決めた.
当時の白鳥はRiSAの活動において,「研究活動」を意識しようとしていたこともあり,YouTubeで前例(先行研究)やドームの設計計算サイト(手法)を見つけ,実現可能性を検討していた.
さらに,白鳥は他で参加していた大学の起業家育成プログラムEDGE+R(加筆修正中)に参加していたため,「デザイン思考におけるプロトタイプ」の意義を理解していた.
以下の写真は実際に製作したプロトタイプ(4/24,5/1,6/12)と製作した本番プラネタリウムとそれらの改良版(8/26,9/15,12/3)を2017年時系列ごとにまとめたものである.
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以下の定期報告スライドは5月に実施した段ボールでのプロトタイプ製作の手順を説明している.
具体的な手順は以下の通りである.
設計図をAdobe Illustratorで製作
大学のポスター用コピー機で印刷
パネルの型を切り出す
スライドの手順に従ってパネルを製作
設計図に従って接合する
これらの手順を,ケント紙で行ったのが5/1プロトタイプで,段ボールで行ったのが6/12プロトタイプで,プラスチックダンボールで行ったのが8/26本番プラネタリウムであった.
大学の許可をとって,大量の段ボールをかっさらい,ひたすら工作していた.
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プランニングとファンドレイジング
プロトタイプを製作することで,他のメンバーにも新プラネ製作に期待を抱かせることに成功し,草天の緊急総会において,全体から認証を得ることができた.
次は完成に向けたプランニングだ.締切を10月上旬の「Sustainable Week2017」(白鳥は副実行委員長として関わっている.記事は加筆修正中)と12月の「学祭」に設定した.
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このスケジュールをサークルスペースのホワイトボードに書き出し,他のメンバーからいつでも見えるようにしていた.
「お金」の問題は,大学の正課外活動助成金「2017年度自主活動団体助成制度」をうまく利用することで解決した.
出願テーマは「全天周映像によるデジタル式プラネタリウムを製作し,本物に近い星空体験を提供する」であり,採用決定助成額は50万円であった.
RiSAやSOIL&SOULで多くの書類作成や面接を切り抜けてきた白鳥には,大学から絶対支援してもらえるとわかっていた.
このように,現実的な計画と合理的な財務会計さえできれば,学生活動を資金的にも応援してくれる点は私立大学の良いところである.
4Vジオデシックドーム製作
7月末のテスト期間が終了し,夏期休暇が始まり,本格的にプラネタリウム製作に着手した.
サークルスペース近くの空き教室を2週間ほど貸し切っての作業となった.
その日やることを明確にし,作業はできる限りみんなで分担するように心がけていた.
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孤独のパネル製作
白鳥はかつて幽霊部員であったためか,プラネ製作時に協力してくれるメンバーは本当に少なかったと記憶している.
相当な労力と時間がかかってしまうことを覚悟していた.
白鳥が一番しんどかったのは,1人でパネル約100枚を工作センター(糸鋸盤)で朝から晩まで切りまくったことである.
RiSAの活動で工作センター出入りしていたこともあり,工作機械を使用することができた.
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ただ,高度化プロジェクトのコアメンバーや同期のおかげで,効率良く問題解決と作業を同時並行で進めることができた.
接合部の検証と製作
パネル間の接合部分は取り外しがしやすいようにマジックテープを採用した.
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パネル糊代部分はドームを形成するために隣あうパネルに対して,パネルの辺を軸にある角度まで曲がる必要がある.
ここで,プラスチックダンボールの構造的特徴(板表面を切っても,完全に断裂しない)を利用した.
一応おもりを使った耐久テストをしたが,ドーム形成時の力のかかり方を考えれば問題はなかった.
そして,人生で二度とお目にかかることがない量のマジックテープを接着剤で丁寧に貼っていった.
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最後にパネル3枚を種類ごとに分類して乾燥させた.
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手順を確認すると,以下の通りだ.
パネル糊代部分を表面のみカッターで切れ目を入れる
マジックテープ貼付をパネル表か裏かの確認
パネル糊代部分に接着剤でマジックテープを貼る
トライフォースでひたすら乾燥(スーパードライ)
プラネ組み立て段階
会長や彼を信頼する他のメンバーのおかげもあって,夏期休暇なのに十分な人数のプラネ組み立てに協力してくれ,スムーズに進めることができた.
設計図通りにプラネが組み立てられた時はさすがに感動した.
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プラネ下室の製作
ドーム内に人が座って,プラネタリウムを見上げることができるようにドームの下に空間(下室)を作る必要があった.
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プラネ下部と下室部分をリベットという取り外し可能なネジで固定した.
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当初の予定通り,Sustainable Weekにおいて草天新プラネタリウムのお披露目に成功した.
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こんばんは。草天は新しいプラネタリウムを製作しました。プロジェクタを2台使った全天周映像です。現在BKCで行われているSustainable Weekでβ版公開中です。これから学祭に向けてさらに改良を重ねていきます。 pic.twitter.com/vACooCJwPT
— 草津天文研究会 (@kusaten_bkc) October 3, 2017
プラネ塗装と空調管理
2017年10月後半,学祭に向けてプラネタリウムの改良をし始めていた.
パネル内部が思ったよりもプロジェクターの写りが悪かったため,より写りが良いグレーに塗装する必要があった.
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最後に,外部の塗装と空調管理のためのファンの設置が必要であった.
スターウォーズに出てくる戦闘機タイファイターをモデルに外部塗装を実施し,電池駆動の静音ファン8つを四辺に組み込むことで解決した.
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なお,ジオデシックドームはバックミンスター=フラーが提唱した幾何学球体で,のちに白鳥が進学するRice Universityで発見されたフラーレン(C60)はジオデシックドームと似た構造にあることから,提唱者の名前が由来になったそうである.
デジタルプラネタリウム製作
ドーム製作と並行して,デジタルプラネタリウムの製作も進めていた.
プロジェクター2機をソフトウェアで並列操作して,半球面ミラーでドームに全天周映写させるという仕組みである.
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当初のアイデア段階では,白鳥も議論に参加していたが,デジタルプラネタリウム実装段階においては,情報学部に所属する会長とその後輩たちに一任した.
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ちなみに,パソコン(153,511円)が一番高価であった.
そして歴史は作られた
目に見えて製作が進んでいくことは本当に楽しかった.
プラネタリウムが完成に近づくにつれ,草天メンバーも徐々に参加してくれるようになり,チームが一致団結していく青春ドラマのワンシーンのようであった.
完成した新型プラネタリウムは「近所の科学館のプラネタリウム(家庭版)」と言っても過言でないくらい質が高く,製作に費やした労力が報われたようで,走馬灯で思い出すレベルで,とても感動した.
「草天での魅力的な経験をより多くの人に」という大きな目標もこの新しいプラネタリウムによって容易に達成されるだろうと自画自賛していた.
最後に報告書執筆,総会にて発表をして,高度化プロジェクト(プラネ製作)は完結した.
大きいことをした後のサークルは楽しい
高度化を成し遂げた草天24代はその後の学園祭においても「114514」状態であった.
2017立命館大学学園祭BKC祭典
— 草津天文研究会 (@kusaten_bkc) November 26, 2017
アドセミナリオ211でのプラネタリウム講演と並行して中央-53にて
「おでん屋の屋台」を出店しております。
寒いこの時期にィ、
あったかいおでんはいかがっすかァ
3個200円、5個300円ですって pic.twitter.com/yURklCcJsL
現在の草天
プラネタリウムは2020年3月の投稿を最後に,使用されなくなってしまった.
☆くさてん活動紹介☆
— 草津天文研究会 (@kusaten_bkc) March 17, 2020
『地域交流会』
草天では、主に小学生などの学生や一般の方を対象として出張型プラネタリウムを不定期に行っています。
毎回たくさんの方に参加していただき、定員いっぱいになることもよくあります!
by渉外補佐委員
↓いままでの地域交流会の様子です pic.twitter.com/wBT5KcmxSV
自分たちが製作したものが,後世に使われ続けることの難しさよ.
取り扱い説明書や修理管理方法など「長く使用される仕組み」にまで考えが及ばなかったことはひとえに白鳥の過失である.
この記事では,プラネタリウムドーム製作について再現できるように詳細に記述したつもりである.
これを読んでいるあなたが,もし現役の草天メンバーなら,白鳥の煽り文章(アストロ卒業号)も読んで,新プラネを復活させてみるのも一つの手である.
我々が製作したプラネタリウムは使用されなくなってしまったが,草津天文研究会は現在も存在している.
おわりに
草天高度化プロジェクトは白鳥が他の学生活動で習得した工作スキル,プロジェクトマネジメントスキルや問題解決能力を発揮する絶好の機会であった.
そして,企画提案,資金調達から完成までをやり通せたことが,本当に大きな自信となった. これが白鳥の学部生活で最も大きな工作となった.
「正解のない課題にチームで立ち向かう」ことは,しんどいが楽しいものである.
最後まで,天文のことは少ししか勉強しなかったけれども,同期と会って「俺たちあの時よくやったよなぁ」と語り会えたりするのが今から本当に楽しみである.
To be continued.