見出し画像

NYタイムズ解説5月29日

画像1

「ウイルスだけではない」
メキシコの崩壊寸前の病院も命取りに

メキシコの病院は長年、医者や看護師、医療機器不足に悩まされてきた。しかしコロナウィルスがラテンアメリカを取り巻く今、メキシコでは1万人以上の医療関係者がコロナに感染し、その少ない人員は更に減っている。

この人員不足は患者へ悲惨な結果を及ぼしている 。経験不足の看護師が誤って人工呼吸器を外したため窒息死した男性。誰にも気付かれずに敗血症性ショックで亡くなった子供。メキシコの病院では今、「しっかり注意を払っていれば防ぐことができた死」が多発しているのだ。
「私たちの病院では沢山の『バカな死』が起こっている」とある医師の男性が語る。「彼らを殺しているのはウイルスではない。医療の不足である。」

メキシコ政府の医療へ向けた社会保障給付金は、西半球にある他国に比べて極めて少ない。3月にコロナウィルスがメキシコで流行し始めた頃、病院は従業員にマスクや防護服を与えず、多くの医療従事者は自らゴーグルやマスクを購入した。その結果メキシコの感染者の5人に1人は医療従事者であり、患者は病院に行っても人員が不足しているため、適切な治療を受けることができない。

「私は毎日仕事に行くことを恐れています。今まで一緒に働いていた人が気づけば、この世からいなくなっているかもしれない。政府がもっとお金を医療に回してくれたらね」と看護師が話す。
彼女のマスクは道端のベンダーから7ドルで買ったもの。「穴が空いてなかったから自分で開けて紐を通したのよ」と彼女は苦笑いを浮かべる。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?