0→1の事業開発における落とし穴とそこからの乗り越え方~SaaSスタートアップの実例~
はじめまして。Ubie Discoveryで、事業開発兼PO(プロダクトオーナー)をしている兵頭です。
自分はユビーの中でも新しい事業の推進をする機会が多くあったことから、今回はそこで得られた学びをお伝えできると嬉しいです。
まずはユビーにおける事業開発の一般的な考え方をご説明し、自分自身が陥った落とし穴についてもご紹介ができればと思います。
具体的な学びは【新規事業開発において陥りがちな落とし穴 4選】以降にあるので、時間のない方はそちらからお読み下さい。
【この記事はこんな人におすすめ!】
・大企業で新規事業開発を推進している責任者
・新しい事業への挑戦を考えられているコンサルティングファームの方
・SaaSプロダクトのプロダクトマネージャー
まずは、そもそもリソースが限られているスタートアップにて、なぜ新規事業開発とかしてるんだっけ?ということから説明したいと思います。
そもそもユビーってスタートアップなのに新規事業やるのってなぜ?
この答えは、「同時に要所を押さえて一気呵成に展開」に尽きます。
医療業界には、多くのステークホルダー(患者、病院・診療所、製薬企業・保険企業)がおり、ある部分の局所的な戦い(一部のステークホルダのみを満足させる戦い)を実施すると、小さくまとまってしまう可能性があります。
我々が実現したいのは、「数多いるステークホルダー間のマッチングの拡大に伴う包括的なデータ集積」による事業価値の最大化です。
これには現状のAI問診ユビーだけでは当然ながら不十分で、医療を繋いでいく必要があります。
例えば、患者・診療所・病院などを上手く繋いで医療資源の最適配分をしていく「地域医療連携」もユビーの事業開発テーマの一つです。
詳しくは、こちらのnoteをご参照下さい。
https://note.com/sam_ohara/n/n1a35c0aa84df?magazine_key=ma36899582c06
それでは、早速ですが、新しい事業を推進する上での勘所と陥りがちな落とし穴についてご紹介できれば嬉しいです。
新規事業開発において重要なことはなに?
リソースに限りのあるスタートアップにおいて新規事業開発をしていく際に意識をするべきことはなんでしょうか?
これは
「リターンとインベストの見積り精度を上げて」
「事業のアセットを積むこと」
に尽きると考えます。
まずは「事業のアセットを積むこと」から説明します。
ユビーではアセットには以下の4種類があると想定してます。
(1)Product Assets:プロダクトそのもの、データ(トランザクション、コンテンツ)、VPと実現できているUX、etc.
(2)Market Assets:顧客基盤、顧客基盤の拡大に資する材料等、etc.
(3)Corporate Assets:生産基盤、人や金やその有効性に関する資産、etc.
(4)Business Flow:Ubieに入ってくる収益、利益、収支構造とそれが成立するvolumeのcap、etc.
一般的に事業開発では、(4)Business Flowの収益に目が行きがちですが、中長期的にアセットを積むという観点で収益以外のものも重視しながら事業を開発しています。
そしてアセットを積んでいくためには、
「リターンとインベストの見積り精度を上げる」ことが重要です。
ここでは、「リターン」と「インベスト」を以下のように考えています。
「リターン」:「アセットを得られている状態 or アセットを得るために必要なことの解像度が高まる学習」
「インベスト」:「リターンを得るために必要なリソース」
特にスタートアップではリソースがないので、
「できるだけインベストを最小にしながらリターンが得られるかどうかの検証ができないか?」と考えることが重要です。
例えば、(1)のProduct Assetsを積みたいと思い、新機能を開発するとします。
この際によくやりがちなのが、いきなり大規模投資をして新機能の開発をしてしまうことです。
この場合、
「リターン」:ユーザーが新機能を使ってくれている状態
「インベスト」:
- 新機能開発に必要な開発工数、
- ユーザーのオペレーション変更の案内をするための工数
- 新機能の機能認知のための広告費用
となりますが、検証を済ませず開発に着手してしまうと、インベストが大きいにも関わらず、リターンを得られる確度が低く、かなり危険な意思決定と言えます。
上記は検証ポイントが色々混ざってしまっているので、インベストが大きくなってしまったのが要因です。
下記のように何が検証ポイント(不確実性)かを意識しながら適切な検証を回していくことが重要です。
(1)ユーザーの体験に不確実性がある場合→ユーザーインタビューに留まらず体験検証する
(2) そもそも認知されるかどうかに不確実性がある場合→一旦β版をすぐに出してしまい、気づくかどうかを検証する
(3)ターゲットセグメントに不確実性がある場合→コンセプトベースで多くの顧客と商談を実施して、セグメントごとの受注率を把握しておく
逆に開発工数が低いものであれば、実装してしまい、直接顧客の声を聞いたほうが早いです。
プロダクトの実装が一瞬で終わるのに、事前ヒアリングばかりしていたら逆に非効率な検証になります。
新規事業開発において陥りがちな落とし穴 4選
ここから先は、自分が新しい事業を立ち上げる上で陥ってしまった落とし穴とそれを乗り越えるための工夫についてご紹介できれば幸いです。
落とし穴①:新規事業なのにいきなり精緻な事業計画を立てる
コンサル出身者だと特に起きやすいのではないでしょうか?
これは断言できますが、まだ未確定な要素が多い中で精緻な事業計画を立案することはほぼ意味がないと言えます。
より重要なのは、事業計画を精度良く立てるために何が分かっていないかを明確にして、その不確実性を潰していくことです。
初期フェーズにおいては、事業のマクロ環境/ビジネスドライバーなどの理解はもちろん重要なのですが、実際にやってみないとわからないことの方がほとんどです。
計画立案に時間をかけるなら、やってみて学ぶという姿勢が遥かに重要です。
やる前にわかること:10%
やってからわかること:90%
位の感覚です。
ユビーではもちろん詳細な事業計画はありますが、ある程度事業のメトリクスの蓋然性が高い事業領域においての話です。
新規事業においては、どんなアセットを積むか・インベストがどのくらいかかりそうかなどの事業ストーリーという形でまとめています。
事業の不確実性を鑑みて、何が管理指標として有用かを考えるのが大切だと思います。
落とし穴②:目の前の顧客にアジャストしすぎる
これはSaaS vs SIer 論争でもあるところと思いますが、将来的に一定のscaleを目指すのであれば、目の前の顧客に無思考でアジャストしすぎると危険であると言えます。
「何のアセットを積むか」ということを意識しているかどうかが問われます。
例えば、(4)Business Flow的な収益が必要という判断の元には、できるだけ顧客に寄せてカスタマイズをしていった方が効率がよいと思います。
一方で(1)Product Assets、(2)Market Assetsの拡充を優先する場合は、目の前の顧客のニーズが汎用的かどうかを問う視点はかなり重要です。
ユビーの場合は、事業フェーズにもよりますが、(1)/(2)を優先度高く置いているため、時にはかなり厳しい判断をする必要がある場合があります。
(顧客が求めているにも関わらず、それには敢えて対応しないなど)
思い返しても、目の前の顧客のニーズが高いことが分かっており優先して開発した機能があったのですが、活用しているのはその顧客のみという苦い経験がありました。
顧客の期待値調整をし、時にはニーズに応えられないという姿勢を見せることもSaaSプロダクトの事業開発において重要だと考えます。
落とし穴③:いきなりScaleを考える
これは②と逆説的です。将来のScaleを考えるなら、Scaleしないことから始めるのがコスパがいいです。
0→1の事業フェーズでは、「Scaleしないことをしよう」というフレーズがよく使われていると思います。
最初は理解できなかったのですが、要は「Scaleしようとするとインベストが大きくかかるのだから、最初はインベストをかけないで検証しましょう」ということだと理解してます。
「Scale」させようとすると、プロダクトの実装はもちろんのこと、マーケティング戦略を考え、営業トークを作ることから始まり、最後はフォローアップ体制まで含めて、多くのユーザーに価値提供をする体制の構築が肝になってきます。
これは「できるだけインベストを最小にしながらリターンが得られるかどうかの検証ができないか?」という思想に真っ向から対立しています。
「インベストを最小にしながら」(=scaleはさせず検証だけはできる方法で)検証を回し始めることが重要です。
検証サイクルが回り、事業メトリクスの蓋然性がある程度見えてきた段階で大規模な投資(=scaleのための投資)を実施するのが良いと思います。
落とし穴④:目の前の検証ばかりに目がいき、全社視点や中長期視点が薄くなりがち
これは①②③全てと逆説的です。
①②③は日々の仮説検証の回し方に視点を向けていますが、視野が狭くなりがちです。
これを回避するために、自分の場合、時間軸をうんと伸ばしてユビーの全社的な未来を考える時間を設けています。
そうすると、自分が見えている領域外から今すべきことが見えてきます。
自分も全社視点での目線が足りていなかったため、他の事業とコラボレショーンをすると大きなインパクトがあるという事業ストーリー(中長期のストーリー)を描けていなかったことがあります。
意識的に視点(時間軸、事業領域)を広げて現状とのギャップを意識し、中長期のストーリーに落としそれを全社的にすり合わせることが重要だと思います。
さいごに:振り返って
自分がユビーに入社して2年は越えようとしています。
改めて感じるのは医療という業界は課題が無限にあるということです。
医療という事業領域の中で、事業開発として関わる幸せを毎日感じています。
無限にある課題からユビーのアセットを積むための事業領域を見定め、事業ストーリーを作る。
事業ストーリに沿って、日々リターンとインベストを見極めながら高速でPDCAサイクルを回す。
そのサイクルから分かった知見から、事業ストーリーを精緻化し事業計画に落とし、スケールさせていく。
こんな活動ができるのは、医療というドメインとユビーの事業ポテンシャルの大きさから来ることだと思います。
そしてまだまだ不確実性が山程あり、その山を一個一個超えることで、医療という業界全体が大きく変わっていくと、確信を持っています。
山を超えるにはまだまだ人が足りてません!
皆様と一緒に乗り越えられると嬉しく思います!
ご興味ある方、是非ご連絡を下さい!
<UbieのBizDev採用情報>
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