16年前の自分に訊いてみたいこと
2022.05.01
宝塚歌劇が好きだ。元々興味があったけど、チケットの買い方もわからなくて、宝塚が好きな友達が誘ってくれたことがきっかけで、ヘビーに観始めた。
ヘビーとはどういうレベルか?
好きな生徒(演者のことを「生徒」という)が1回きりのヒロインを演じる公演のために、午後から早退して新幹線で兵庫県宝塚市の宝塚大劇場まで行き、観劇して、その日中に関東まで戻ってきて、宝塚大劇場滞在時間2時間ということもしてしまうレベルである。これまでに使った金額は怖すぎて計算していない。
東京宝塚劇場で上演する作品は組を問わず、席を問わず1回は観ようと思っている。コロナ禍になって映画館のライブビューイングだけでなく、配信サービスにも力を入れている宝塚。劇場でみたことがない人も、間口が広くなったのでぜひ1回みてみてほしい。
さて、そんな私が、今日は家で宙組の「Never Say Goodbye」を観た。これは2006年に和央ようか・花總まりの退団公演かつ、ブロードウェイで活躍する作曲家フランク・ワイルドホーンが全曲書き下ろしした作品である。
16年前に作られた作品であるのに、ロシアのウクライナ侵攻があったせいか、全く再演にあたっての古臭さを感じない。むしろ、主人公のジョルジュはドイツとソビエトに挟まれた国を疎ましく思い、根なし草(デラシネ)のようにカメラを持って彷徨う男…と描かれているので、挟まれるなんてまさにウクライナじゃないか?とイメージしてしまう。
それはさておき。この作品のクライマックスは、二人が別々の道を歩く決意をする場面。
カメラマンのジョルジュは、スペイン内戦を戦う民衆と共に自分も戦う道を選び、恋人のキャサリンにこれまで撮り溜めたフィルムを渡す。アメリカに戻り、スペイン内戦の真実を書き残してほしいと頼んで、二人は別れる。キャサリンの孫がオープニングで祖父母の記録を思い返しているところから始まっていたので、16年前は「ジョルジュとキャサリン、この短期間で子供ができていたのか…」と超下世話な感想を持っていた。だけど今日は「別れることが愛の証ってあるんだな」と思った。ジョルジュの思いを受け継ぐことは自分にしかできないこと。記録を残すことで、存在はずっと自分の中に残るんだな、と。
宙組の生徒たちの、舞台に対する集中力の高さが、テレビ越しに観ていても伝わって、泣いていた。コロナ、戦争、舞台のような娯楽を安心して楽しめる日はいつ戻ってくるのだろうか。21世紀になって、こんな侵攻で日々の生活が脅かされるようなことが起きているんだよ、信じられる?私は16年前の自分に訊いてみたい。
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