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KMSKデインズで初めてのレギュラーシーズンを終えて〜プレーオフへ向けて〜

KMSKデインズでのベルギー2部レギュラーシーズンを終え、アウェイのリエージュからの長い道中で感じたこと、考えたことを殴り書きにした内容をベースにした記事です。

ベルギー2部のレギュラーシーズン30試合中29試合を終え、2位と勝ち点差1の3位で最終節を迎えたKMSKデインズ。勝てば2位のFCVデンデルEHの結果次第(引き分け以下)では1部へ自動昇格できるかもしれないという状況の試合だった。
※ベルギー2部は1位と2位が1部へ自動昇格、3-6位は昇格プレーオフの末1部の14位と決戦というフォーマット

3月2日に首位に立ってから、プレッシャーからかチームは調子を落とし、4月6日の試合でデンデルに0-3で敗北し、自動昇格が絶望的な状況になった。しかし先週の結果(デインズ勝利、他上位陣敗北)再び転がってきた自動昇格のチャンス。昇格できるかもしれないと浮かれすぎないように、そして選手や監督にプレッシャーを与えすぎないように。スタッフもみんなソワソワはしていたけれど、慎重に、丁寧に、お互いを励まし合いながら1日1日を過ごして当日を迎えた。

RFCセラーンのスタジアム。ベルギー西部フランス語圏のリエージュ郊外に位置。

試合は正直ひどい内容ではあったけど、何とか2-1で勝利した。けれど、同時刻キックオフだった2位のデンデルも勝利し、最終順位は3位で自動昇格は叶わなかった。どんな結果になっても受け止めると心に決めて試合に臨んだけれど、正直試合が終わった後の数時間は心の整理が全くつかなかった。

そしてこの試合に勝ったことで、この日の対戦相手で、去年まで1部だったRFCセラーンの3部への降格が目の前で決まった。RFCセラーンのことをよく知ってるわけではないけど、どう考えても絶望的な場面。

地面に崩れ落ちて泣いている選手が何人かいた気がする。普段なら相手の前での振る舞いとか、リスペクトとか色々考えるのに、試合後は相手の様子を見る余裕もなかったことに後から振り返って気づき驚いた。デインズの同僚や選手、サポーターの気持ちを推し測り、今チームのためにどう振る舞うべきかを考えることだけで精一杯だった。

選手、監督、テクニカルスタッフ、サポーター、スポンサー、ビジネススタッフ、それぞれの家族。全員で8ヶ月間かけて必死に積み上げてきた勝ち点53。でもあと勝ち点1つ。本当にたった1つ足りなかった。16回の勝利に加え、5回の引き分けのうちどれか1つでも勝てていれば。9回の負けのうちどれか1つでも引き分けていれば。今頃クラブ初の1部昇格が決まっていた。

レギュラーシーズン終了後の順位表。ベルギー2部は勝数が得失点差よりも優先されるため、
あと勝ち点1あれば2位となっていた。

幼少期から18年間ガンバ大阪のサポーターをやってきたけど、デインズで働くまで、勝ち点1がこんなに重いだなんて知らなかった。スタジアムの観客をたった数百人増やすのがこんなに大変だなんて知らなかった。

正直、クラブとして足りていないことなんて言い出せばキリがない。サポーターに対して、何でもっとスタジアムに来て応援してくれないんだって思うこともある。なんで負けてる時こそ大きな声出して応援してくれないんだって、なんで負けたからってそんな心無いことが言えるんだって、思うこともある。選手に対して、なんで最後まで走って戦わないんだって怒りに震えることもある。同僚に対して納得いかないことだってある。一方で自分に対して、もっとやれるだろってイラつくこともある。

24時間自然とそれのことだけ考えたくなるような、泣けるほど本気になれるような仕事がしたいと思ってデインズでの仕事を始めたけれど、毎週命を削るような気持ちで仕事をするのがこんなにしんどいなんて。プレーオフで最後まで行けたとして、あと1ヶ月もこんなテンションで仕事をするなんて、試合が終わったたった今は、正直少し想像がつかない。

でもありがたいことに、まだシーズンは終わっていない。みんなで積み上げた勝ち点53は、リーグ3位というクラブ史上最高成績の形で、1部昇格プレーオフ進出をもたらしてくれた。この悔しさをぶつけるチャンスが目の前にある。1部最後の1枠を懸ける闘いを、まだ続けられる。

最終戦にはアカデミーのバンを使ってビジネススタッフみんなで遠征した

プレーオフが終わった時に、絶対に後悔したくない。 1人でも多くの人にスタジアムに来てもらって、少しでも良い雰囲気をみんなで作って。それが本当にピッチで闘う選手に影響があるのかなんて、正直わからない。もはや自己満足、自分を納得させるためなのかもしれない。

2018年のロシアW杯のベスト16、ベルギーに2-3で負けた時が、フットボールビジネスにおける僕の強烈な原体験。既にスポーツビジネスに関心を持ってインターンなどを始めていた。その試合を夜中にテレビで観て一番悔しかったのは、スポーツが底知れないパワーを持っていることに気づいているのに、この重要な試合に立ったの1ミリも貢献できていないことだった。サッカーを全然知らずに見ている目の前の友達と1つも変わらないじゃないか、と落胆した。

2022年、4年の時を経て今度はカタールでW杯を現地観戦した。初戦のドイツ戦からベスト16のクロアチア戦まで全てを見届けて、最高のW杯だった。けれど、クロアチアに負けた後、やっぱり4年前と何も変わっていないじゃないかと思った。もうファンはうんざりなんだ。自分はこの悔しさを、選手やスタッフと一緒に味わって、それをファンに届ける創り手になりたい。4年前からその想いが変わっていないことが最終確認でき、デインズで働く機会を掴んだ。

2022年カタールW杯。次こそは何かしらサッカー界に
貢献する人間としてここに帰ってくると誓った

レギュラーシーズン最後の試合を終えて、この悔しさを、想いを共有できる仲間がいることを心から嬉しく思う。そしてファンとしてでなく、スタッフとして全てのパッションをぶつけられる舞台をあることを本当にありがたく思う。クラブで働いて1年目でこんなシビアな場面を経験させてもらえているのは、紛れもなくこれまでクラブを支えてきてくれたサポーターやスポンサー、ピッチで戦ってきた選手やコーチ陣、そしてどんなに苦しいことがあってもプロジェクトを前に進めてきた経営陣やスタッフのおかげ。

第29節ホーム最終戦の後の写真。もう一枚の方の写真は自分も写っていたのに、
そうじゃない方がSNS用に採用されてしまった。笑@KMSK Deinze

今までクラブに関わってきてくれた全ての人の努力と想いに心からの敬意を持ち、夢だった仕事が目の前にある日々の一瞬一瞬に心から感謝して。ここまで来たら、プレッシャーも含めて最後まで楽しむしかない。自分にやれることを全部やって、あとは選手たちを信じる。だから、週末少し落ち着いて、月曜また、次の試合に向けてフルエナジーでクラブに向かう。絶対昇格してやる。


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