DXの取り組みの正しい定め方
DXの成功に向けた5つの要件
過去2回の記事で述べたように、DXの取り組みが成功している企業には、DX戦略の策定において、正しい体制で正しい取り組み方をしているという共通点があります。これは、下の図に示した5つの要件をそれぞれ正しく押さえているということです。
本記事では、以前の記事で述べた「経営陣のスタンス」と「実行者のマインドセット」に続き、3つ目の要素である「テーマ選定」について詳しく説明していきます。
上流のシンプルな論点に注目する
DXとは、デジタル技術を活用して企業全体を変革し、様々な課題の解決に取り組むことを意味します。そのため、いざDXに向き合った時には、目の前に多種多様な問題が存在していることに気付かされることがあります。
ここで、その多種多様な問題を全体として捉えようとすると、さまざまな事情が絡み合った大きく複雑な難題に見えてしまいます。結果として、どこから手をつけて良いのかがわからず、第一歩を踏み出す段階から、進め方に悩んでしまうことも少なくありません。
しかし実は、同時多発的に問題が発生している場合でも、課題の上流へ目を向け、その根本原因を探ると、とてもシンプルで基本的な論点に行き着くことが多いのです。それは例えば、顧客像はどのようなものか?とか、顧客価値の方向性はどちらを向いているか?といった論点です。
つまり、そういった根源的な論点に答えが出せていないことで、下流にある複数の領域で問題が発生してしまっているのです。逆にいうと、上流にある根源的な論点に注目することが、難題に見える問題全体に対する解決の第一歩となるのです。
まずは標準テーマを片付ける
企業が抱えている課題はその企業特有の事情を反映したものです。つまり、DXの標準戦略パターンのようなものを当てはめるだけで課題を最後まで解決することはできません。
しかし、だからと言って、最初からあらゆる個別事情を洗い出し、それらに100%応えようとすることも賢明ではありません。
実は、DXの初期段階では、自社特有の問題よりも先に、多くの企業に共通の問題に目を向け、汎用性の高い問いを立てる方がうまくいくことが多いのです。そのような標準的なテーマには既に多くの企業が取り組んでいるため、有効な取り組み方が確立していることもあります。
要件を満たすためのヒント
以上で見てきたように、DXのテーマを選ぶ際には、「シンプルな論点」に注目して「標準テーマ」を先に片付けるというアプローチが有効です。その際、歴戦のコンサルタントであれば、状況に応じて最も有効な議論用のフレームワークを提示することができますが、まずは知名度のあるベーシックな枠組みを利用するだけで大きく前進できることも多いのです。
例えば、新規事業に取り組む際には、「リーンキャンバス」という有名な枠組みがあります。このリーンキャンバスを本気で書き上げ、その内容をコアメンバーで議論してみるのも1つの方法です。各項目に書いたことがどういう意味を持つのか、より適切な表現はないのか、各項目の関係がどうなっているのか、こういった点を徹底的に議論するのです。
結論: まずは定番の論点を片付けよう
DXに取り組む際には、最初からその大きな問題全体を解決しようとするのではなく、上流の根源的な部分に未解決のまま残っているベーシックな論点から取り組み始めましょう。
そういった標準テーマとしての論点に対して、汎用的な問いを投げかけたり、よく知られた枠組みを活用したりしながら、チームとして答えを導き出していく。それがDXの成功に向けた第一歩となるのです。
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