【ISOURO体験談①】檜浦大河さん
先日の記事では、夏休みなどを利用して葛尾村に長期滞在する「ISOURO」を紹介しました。今回の記事では、実際にISOUROとして葛尾村に滞在していた檜浦大河(ひうらたいが)さん(龍谷大学・広島県出身)の体験談を紹介します。
葛尾村との関わり
檜浦さんが葛尾村に初めて訪れたきっかけは、2020年春期の復興創生インターンシップです。復興創生インターンシップとは、東北3県(岩手・宮城・福島)の企業や団体の経営課題を大学生が解決する復興庁主催の実践型インターンシップです。檜浦さんは、このプログラムを通じて、葛尾村で養鶏業を営む株式会社大笹農場にインターンしていました。インターンシップでは、1か月ほどの葛尾村滞在の中で、新たなブランド鶏を開発するプロジェクトに携わりました。代表である高橋憲司さんの想いや鶏肉の市場調査の結果などを通じて、最終的に2つのブランド鶏に関するアイデアを提案しました。意見の衝突も対話で乗り越えられる素晴らしい仲間たちがいたからこそ、ここまで辿り着けたと檜浦さんは語っています。
滞在の目的
今夏、檜浦大河さんが再び葛尾村に滞在することになったきっかけは、インターンシップでの成果報告会での憲司さんとのやり取りにあります。インターンシップの1か月間で、技術的にも精神的にも成長でき、一定の成果は出すことはできました。しかし、振り返る中で、もっと良いものが作れたのではないか、もっと成長できたのではないかと感じ、檜浦さんは「また来たい」と思うようになりました。成果報告会後に、その想いを憲司さんに伝えると、憲司さんが夏休みにアルバイトに来るよう誘ってくださいました。こうして、檜浦さんの2度目の葛尾村訪問が決まりました。
大笹農場でのアルバイトなどを通じて「自分が何をしてワクワクしたいか考える」ことを檜浦さんは今滞在の目標にしていました。これはインターンシップ終了直後に檜浦さんが定めた目標でもあります。大学3年生という卒業後の進路選択が差し迫った中で、改めて自分自身の人生の軸を探す機会にしたいと考えていました。
滞在中の思い出
今夏のアルバイトでは、インターンシップ時とは異なり、実際の養鶏場の業務に携わることができました。鶏糞のついた道具の洗浄や座っている鶏を立たせるための巡回など様々な作業を行い、ひよこから出荷まで鶏の成長を見守りました。やはり初めのうちは鶏糞の臭いがきつかったそうです。鶏糞はコアラのマーチの臭い部分を濃縮したような感じだという独特な表現をされていました。この養鶏場で鶏に触れる体験を通じて、目の前の鶏に真摯に向き合う職人さんたちに感銘を受けたそうです。
また、アルバイト以外の時間の多くを葛尾村の中で過ごしました。檜浦さん以外の滞在者も様々な目的で葛尾村を訪れているために、日中は別々の動きをしているけれども、夕食の時間には皆が揃うのが面白いと語っていました。ちょうど滞在の終盤が檜浦さんの誕生日だったので、滞在者みんなでお祝いをするなど、滞在者間の交流が活発に行われていました。さらに、憲司さんが主催するバーベキューに何度も参加させてもらったり、村のおばあちゃんにご飯をごちそうになったりと、滞在中は村の中で生活していました。
滞在を振り返って
滞在を通じて、檜浦さんは当初立てた「自分が何をしてワクワクしたいか考える」という目標から意識の変化があったそうです。目標を立てた当初は、自分がワクワクする理由という抽象的なものから具体的な取り組みを考えようとしていました。しかし、養鶏の現場に出て得ることができた様々な気づきによって、具体的なワクワクする取り組みからその理由を考えるというような考え方の変化を生みました。今までは、自分の中のワクワクの根源を掴み切れず、足りないスキルを嘆いていましたが、この意識の変化を通じて、まず手を動かして物事を体感しようという姿勢が得られたそうです。将来、養鶏に関わるかは分からないけれども、大笹農場で得たこの学びはどのような選択をしたとしても必ず活きる大事なものだと檜浦さんは笑顔で語っていました。
一般社団法人 葛力創造舎
葛力創造舎(かつりょくそうぞうしゃ)は、通常なら持続不可能と思われるような数百人単位の過疎の集落でも、人々が幸せに暮らしていける経済の仕組みを考え、そのための人材育成を支援する団体です。
余田 大輝