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Katsurao AIR アーティストインタビュー vol.7 喜多村徹雄さん(前編)

アーティストが葛尾村に滞在してリサーチや制作を行うアーティスト・イン・レジデンス・プログラム「Katsurao AIR(カツラオエアー)」。2023年度に滞在したアーティストのうち4名は、葛尾村をテーマにした作品を制作するリターンアーティストとして、2024年度も継続して活動しています。

本稿では、リターンアーティスト 喜多村徹雄さんのインタビューをお届けします。(聞き手:Katsurao Collective 阪本健吾)

KITAMURA Tetsuo
喜多村 徹雄

2005 金沢美術工芸大学大学院博士後期課程修了

制度や慣習、条理や感情、構造的安定と不安定などに潜む脆弱なものの強度、強度あるものの脆さに興味がある。近年は、リサーチによって時間に埋もれた場所や人の記憶などを掘り起こし、そこにある/あった出来事に再び触れることで、視るひとの内にささやかな《揺らぎ》が起きるような制作を試みている。
主な活動歴に「現れの空間/前橋夜話」(ya-gins/群馬、2021)、「中之条ビエンナーレ2021」(イサマムラ/群馬、2021)、Walk Along The Voice Without Body(Užupis Art Incubator/リトアニア、2018)、群馬の美術2017(群馬県立近代美術館/群馬、2017)、「第15回天山アートフェスタ」(小柳酒造本蔵/佐賀、2016)、The rising generation 8(渋川市美術館/群馬、2010)など。「トーキョーワンダーウォール 公募 2004」TWW賞受賞。

——喜多村さんは、アーティストとして活動する傍ら、群馬大学の共同教育学部 美術教育講座で教壇にも立っていらっしゃいますね。

はい。その中でも、絵画を担当しています。私自身が、美術大学の油絵科を出ているんです。

芸術大学や美術大学の場合は、作家養成のためのカリキュラムなので、例えるならば大リーグをめざすような訓練をするんです。一方で、私が教えている教育学部の美術専攻は、教員を養成することが目的です。野球の楽しさを伝える、少年野球のコーチを養成するのに近いですね。アーティストとしてのパフォーマンスを上げるというよりも、美術がもつ教育的効果とは何かということを抽出して伝えていくことが、私の大学での役割だと思っています。

——「大学で美術をやっています」とひとくくりに言っても、大きく質が違うんですね。
 ところで、喜多村さんが2023年度に葛尾村で制作された作品をお見受けすると、アーティストとしてのアウトプットに関しては、絵画に限られてはいないですよね。

《ピクニックのためのあれこれ》

絵画を描くという枠組みの中に、自分自身を縛らないようにしています。学生時代のある時期までは、自分は油絵科だから油絵を描かなければ、という強迫観念がありました。しかし、次第に、自分が着想したものが絵画じゃない形なら、それを素直に表現したいと思うようになったんです。

自分自身がそういう考え方なので、大学で学生と向き合うときにも同じように考えています。私は美術教育講座の中でも絵画担当なので、絵画を専攻したい学生は当然ながら受け入れるのですが、他にあるどの研究室——例えば、彫刻やデザイン——にもそぐわない、でも絵画でもない……という学生に関しても、コミュニケーションをとったうえで受け入れるようにしています。

——現代の大学生と、ご自身の辿ってきた環境とを比べてみて、時代性の違いを顕著に感じることはありますか?

情報の取り方が違いますよね。私が学生の頃は、基本的には書籍や雑誌で情報収集をしていましたし、実際に実物を見るということを大事にしていました。それがちょうど大学院を卒業して働きはじめる頃にインターネットが普及すると、モニター上でたくさん作品の画像を見ることができるようになりました。

インターネット環境の中で作品に触れるときは……視覚的なイメージと、何を考えてどういう風につくっているかという考え方、つまり、ビジュアルとコンセプトとを照らし合わせて見るんですよね。すると、そこには含まれない、大きさとか、細かな色彩とか、自分がその場に立ったときの雰囲気であるとか、もっと言うと、そこに向かうまでの道程であるとか……そういった様々な要素が抜け落ちていくんです。

そういう状況の中で、観た気になっている自分がいることに気づいたんですよね。

——大学院卒業後のタイミングで喜多村さんが経験された「ビジュアルとコンセプトへの偏重」が、インターネットネイティブの世代には染みついてしまっている可能性もあるということでしょうか。

そうかもしれないです。

同じ時期に滞在した小鷹拓郎さんと

後編はこちら

アーティストインレジデンスプログラム「Katsurao AIR」

本インタビューの完全版を、各種リスニングサービス および note音声投稿にて配信中です。


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