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【かつらのお話:頭合わせ】

下拵えできました総髪の地金。
さて、この地金を持ちまして頭合わせに向かいます。

こんにちは。京都時代劇かつらです。

今回は【頭合わせ】のお話です。

基本的な形を打ち出した鉢金、輪金、襟金と、打台、七ツ道具、鋲、和紙、鉛筆を鞄に詰め込んで頭合わせに向かいます。

打台
穴あけ・抜き・切箸・鑢・目打・矢床
木槌・窪付・かしめ
和紙

頭合わせの場所は、撮影所のメイク室、テレビ局のメイク室、各楽屋、劇場の床山部屋、楽屋、稽古場、はたまたスタジオや会議室、俳優さんの自宅など様々です。

そこに持ち込んだ道具、材料を広げ頭合わせをしていきます。

俳優さんに鏡前に座っていただき、肩掛けをして、羽二重を巻き、頭合わせは始まります。

俳優さんの頭に地金を乗せ、凹凸を確認し、それを打ち台の上で窪付、木槌で均し形を合わせていきます。

鉢金を俳優さんの頭にピタリと合うように形作った後、輪金、襟金を置き、頭全体をあわせます。

輪金

輪金は髷の根取り位置を決めるのに重要で、
またかつらの落ち着きを左右する部品です。

鉢金に輪金と襟金を合わせていく
襟金

襟金は襟の毛が付く部品であり、芝居中良く動く首に邪魔にならず、尚且つ結い上げた時のバランスを考えて位置を決めなくてはいけません。

輪金と襟金の位置はとても重要

三つの部品が各々重要なのですが、とりわけ鉢金は頭の凹凸が直に響いてくる部品です。

鉢金

ここで俳優さんの頭の形を見誤ると時間だけがかかり地金は上手く合いません。

俳優さんは待つのが仕事とよく耳にしますが、時間は有限。
そんなにお待ちいただくわけにはいきません。

丁稚の頃、数年が経ち、「そろそろ頭合わせをしてごらん」と親方に言われた初めての頭合わせは、なんと二時間もかかりました。

その時は俳優さんの楽屋で頭合わせをしていました。

一時間ほど経った頃、楽屋番さんが見回りに来ました。

電気の点いている楽屋があるのを不思議に思って、楽屋を覗いた楽屋番さん。

「あー、頭合わせしてはんの。終わったらまた声かけてや~」

と楽屋口に戻っていかれました。

それからまた一時間。
未だ声が掛からないのを不審に思った楽屋番さんが再度楽屋を覗きます。

「まだ頭合わせやってんの!?!」

頭合わせ、一時間でも長過ぎるのに、
もひとつ一時間。
それは楽屋番さんもびっくりします。

「ワシもう帰るさかい、楽屋口閉めるで~。警備室通って帰ってや~。」

驚きと諦めとが入り交じった楽屋番さんの後ろ姿が今も懐かしく思いだされます。

長い楽屋番人生の中で最長の頭合わせだったのではないでしょうか。

ところで、座ったまま動くことなく頭合わせに付き合ってくれた俳優さん。

今から思えば怒りもせずにこやかに
「大丈夫、大丈夫。」
とじっと待っていただき、本当に申し訳ないことしました。

汗ブルブルかきながら必死のパッチでやった初めての頭合わせ。

二時間も俳優さんをお待たせしたと今思い出しても冷や汗ブルブルです。

さて、俳優さんの頭の形に合わせて組み立てまで終わった地金。

次はどんな変化がありますか。

次回もどうぞお楽しみに。

地金まで完成。まだまだ頭合わせは続く

※当noteでご紹介する写真は、全て筆者撮影のオリジナル写真です。被写体及び他者撮影の写真を使用する場合は、全て許可を得て掲載しています。当noteの文章・写真の転載、加工、二次使用はなんびとにも許可しておりません。ご注意願います。



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