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【地毛ちょんまげのお話:月代】

『お盆特別企画!月代てんこ盛り!』

こんにちは。京都時代劇かつらです。

今回は【地毛ちょんまげのお話】と題しまして、前回お写真をお借りした地毛ちょんまげの皆さんに色々お話をお聞きします。

いつもの【かつらのお話】からちょっと離れて、お盆特別企画を是非お楽しみ下さい!



さて、今日は三人の地毛ちょんまげの皆さんにお集まりいただきました。

それぞれご紹介いたします。

南部信風さん 


令和の信長:南部信風さん

令和の織田信長、南部さんは、京都府にお住まい。プログラマーをされています。


まげメガネさん 


『月代組』主宰:まげメガネさん       
 撮影:ことみさん 結髪:関場明子さん

疫病本多が印象的な まげメガネさんは、東京都で美術絵画専門モデルをされています。


中元義詮さん


令和の侍、中元義詮さん

 令和の侍こと中元さんは、山口県は萩で、その名も【萩侍】と言うお好み焼き屋さんを営んでいらっしゃいます。




南)南部信風さん
ま)まげメガネさん
中)中元義詮さん
か)京都時代劇かつら


『月代組』とは?


か)
では、まずはじめに地毛ちょんまげグループ、『月代組』主宰のまげメガネさんに、地毛ちょんまげの集まりについてお聞きします。
グループを作られるきっかけは何だったのでしょうか?

ま)  
8年前に既に知り合っていた地毛ちょんまげ5人ほどでグループを作ったのがきっかけです。
私は結髪そのものに興味がありまして、使ってる整髪料や結い方、カミソリのメーカーなんかが気になっていたんです。  
そこから、LINEグループ『月代組』が誕生しました。

か) 
現代の髪型のようにたくさんの情報があるわけではないですもんね。
地毛月代同士の情報交換は非常に重要になりますね。
  
近年、snsの普及で、様々な媒体で地毛ちょんまげの方を目にするようになりました。地毛ちょんまげの皆さんは、日本全国にどれくらいの人数いらっしゃるのでしょうか?

ま)
『月代組』には現在27人、参加しております。
月代を持った方が25人、総髪の方が2人ですね。
日本全国……となると正確な数は把握出来ないんですが、30〜50人くらいだと思っています。
肌感覚ですが、100人以上いる気がしません。(笑)

か)
日本全国、思った以上にたくさんの地毛ちょんまげの皆さんがいらっしゃるんですね。
『月代組』の主旨、活動はどのようなものなのでしょうか?

ま) 
主旨、活動内容としては
・世界の地毛ちょんまげの人数把握
・情報交換、近況報告
・メディア出演の相談や、オフ会の企画立案 
などですね。
昨年12月に、月代10人が集ってオフ会をしたんですが、その時に取材が入りまして、『月代組』という名前が初めてTVに出ました!

そこからは個々のメディア出演で月代組の名前を出して頂いたりで、少しずつ知名度が上がっている気がしていますね。

オフ会時の『月代組』の皆さん
同じ様に見えて、それぞれ個性溢れた月代と出で立ち
皆さん揃われれると圧巻ですね。

か) 
今回はその『月代組』中からお三方、お集まりいただきました。
一般の方々が抱く素朴な疑問から、髷を生業とする私の質問まで色々とお聞きいたします。
宜しくお願いいたします!

では、はじめに。

①地毛で髷を結おうと思ったきっかけは何ですか?


南)
普段の生活で着物しか着ない為、似合う髪型にしたかったからです。

普段から着物しかお召しにならないという南部さん。
お茶を嗜む姿が戦国の世そのもの。

ま)
コスプレの為です。元々コスプレイヤーですので、
『磯部磯兵衛物語〜浮世はつらいよ〜』
という漫画の主人公の月代と武士髷に魅力を感じ、コスプレしたいなと思い実行しました。


中)
似合う自信はあったが中々決意が出来ずにいました。周りから
『やってみたら?絶対似合うよ』
と言われることが多くなり逃げ道を断つ為、SNSで月代を剃ると宣言しました。

有言実行。退路を断って臨んだ中元さん

か)
皆さんきっかけは様々なんですね。
私は時代劇が好きで、そこから髷に興味を持ってこの業界にはいりましたので、時代劇きっかけではない皆さんに興味津々です!

髷は結い上げていると、全体的にスッキリとして見えています。
が、髪をおろすと実は結構長髪なのですが、

②髷を結えるまでの毛の長さ、及び伸ばした期間はどのくらいですか?


南)
詳しく覚えていないですが、3,4年程度だと思います。

ま)
下ろした時に胸あたりの長さです。その長さまで、スキンヘッドから2年かかりました。

中)
平成29年9月に短髪から伸ばし始めて、そこから令和2年5月まで長髪のポニーテールをしていました。

か)
頭髪は1ヶ月に1~1.5㎝伸びますから、やはり
2~3年は伸ばす期間が必要なのですね。
かつらに使用する人毛が28吋(約71㎝)必要ですので、必要な長さはほぼ同じなんですね!
  
ところで、総髪に髷風の方は街中でも見かけます。 
  
ではそもそも

③総髪で髷ではなく、月代を剃ろうと思ったのはなぜですか?


南)
髷と言えば月代だろうという先入観があった為、髷を結う上で総髪で結う選択肢がありませんでした。格好良いですし!

ま) 
コスプレイヤー目線だと、ウィッグの類は 
「地肌との境目をどう馴染ませるか」
が鬼門なので、オールバック系のウィッグを作るのは難しいと感じて地毛でやるしかないなと。
抵抗はありませんでしたね。

中)
先ほどと同じく、周りから似合うと言われて。

か)
皆さん、やはり憧れがあり抵抗なく月代姿を選ばれたんですね!
数年に渡り髪を伸ばされたわけですが、いよいよ元服の時が訪れます。
その時、

④初めて月代に剃刀を入れた時のお気持ちは?

南)
月代を剃るのは、床屋にお願いしました。
「いよいよ髷を結えるぞ!」と嬉しかったです。

綺麗に剃り上げられた大月代。
溢れる存在感で安土桃山時代に想いを馳せる

ま)
私も近所の行きつけの床屋で、バリカンを入れてもらいました。
私は「やっちゃったな」と思いました。でも、そのあとはご機嫌で過ごしています。
 

月代を剃る。疫病本多用に深く剃られている。
※このお写真は二度目の元服の時
これからいよいよ月代生活が始まる
※このお写真は二度目の元服の時


中)
儂は覚悟はしていたが恥ずかしかったのが正直な気持ちです。

か)
人それぞれ色んな気持ちが入り交じるんですね!その気持ちは、元服という大事な儀礼と通じるところがあると感じます。


月代を剃るのは元服の厳かな儀式

さて、無事月代を剃られました、

⑤月代を剃られて、ご家族、ご友人、同僚の反応はいかがでしたか?


南)
多少なりとも驚きはありましたが、比較的皆肯定的でした。
月代を剃った後に就職活動を行ったので、職場の同僚は逆に、月代剃る前を知らないんです。

ま)
家族、友人共に反応は希薄でした。元々突拍子もない事ばかりやっていたので、耐性がついていたのかも知れません。
地毛ちょんまげ前提で勤めていたので、同僚にも当たり前だと思われていたと思います。

お仕事中のまげメガネさん。江戸の職人を彷彿とさせる

中)
実家は県外なんですが、両親には月代を剃ったことは一切話していなかったんです。

風の噂で聞いていたらしく帰省した際に、
「本当にやっとる」のみが、剃った月代を見たときの両親の反応。
甥っ子たちは幼児の頃から着物に長髪ポニーテールの姿を見ていたため特に何も言わなかった。

儂は10年前から武士を追求しており、当時から着物に長髪ポニーテールだったため、
「おー!カッコイイじゃん」という友人もいれば、剃ったことに気付かない、自然過ぎて、似合い過ぎて気付かない友人もいました。

確かに違和感が全くなく、風景に溶け込む中元さん

か)
お三方それぞれお持ちの、元々のキャラクターもあるかと思いますが、皆さん周りの方は意外と反応は薄く自然と受け入れられたのですね。
    
私の育った京都太秦界隈は東映、松竹、大映と映画撮影所が立ち並び、休憩中や出番待ちの役者さん達が扮装のまま街に溢れていました。 

太秦界隈
東映京都撮影所
松竹撮影所
大映京都撮影所跡

喫茶店、うどん屋、パチンコ店等には髷姿の人達が各々いましたし、また街の人達は当たり前の事として普通に接していました。

撮影所近くの喫茶店には番組のポスターも
夜間撮影がある時は撮影所から食券が支給される

今は亡き田中邦衛さんが髷姿で自転車に乗り、「おーい!」と手を振りながら大映通りを颯爽と通り過ぎたのを思い出しました(笑)

大映通り商店街。たくさんのお店が立ち並ぶ
ここを侍や町人、町娘などの扮装をした役者さんが
大勢行き交っていた。

それくらい髷姿の人が普通にいたので、もしかしたら地毛ちょんまげの皆さんも意外と溶け込んでしまうのかもしれませんね。
そんな自然と受け入れられた

⑥月代を剃る頻度はどれくらいですか?


南)
2〜3日に一度程度です。 

綺麗に剃りあげられた大月代

ま)
人前に月代を出すなら、毎日です。
人前に出ない時でも、数日に一回は剃ります。

お出かけの時にはもちろん、月代は綺麗に剃りあげる

中)
儂は毎朝剃ります。

綺麗に剃りあげられた講武所風月代

か)
やはり日本男子の身嗜み。月代は昔ながらに毎朝~2、3日に1回は必ず剃られるんですね!

そんな

⑦月代は何を使って剃っていますか?


南)
T字カミソリです。

ま)
私もT字カミソリです。今は貝印のXfit(クロスフィット)で、5枚刃のT字カミソリでは格安のものです。
  
中)
儂は一枚刃の電気シェーバーを使っています。

か)
月代を剃るといえば、時代劇では和カミソリをよく目にします。
和カミソリは見た目は格好よく、様になりますが、慣れないと危ないですもんね。
そこは皆さん使いやすいものをお選びになっているんですね。

月代を剃られたら次は結髪です。

⑧結髪の頻度はどれくらいですか?


南)
週に一度程度。結ったら2,3日維持します。

一般的より長く結い上げられた南部さんの棒茶筅
       結髪:まげメガネさん

ま)
コロナ禍前は職場が浅草の土産物屋で、髷を活かしていたので、ほぼ毎日キッチリ結ってました。
最近は趣味寄りになったので、平均で週一くらいですかね。

土産物時代のまげメガネさん。もうそのまま手代さん

中)
儂は毎日結います。

毎朝結い上げられ、キリリと輝く講武所風弾き茶筅の
中元さん

か)
やはり皆さん結髪もご自分で、頻度も昔ながらの回数できちんとされているんですね!
時代劇のかつらは昔ながらの鬢付け油を使っていますが、皆さんは

⑨髪を結うのに鬢付け油を使っていらっしゃいますか?


南)
中練りの鬢付け油を使用して、鬢だけ歌舞伎練りというすき油より柔らかい鬢付け油を使用することもあります。

大きく剃った南部さんの大月代
髪全体に鬢付け油をまわし、鬢、髱、根と分ける
根に、髱、鬢の順にまとめる。
          結髪:まげメガネさん
真田紐を巻き付けたら棒茶筅の出来上がり。
とても美しい仕上がりの南部さん。
             結髪:まげメガネさん

ま)
私も使っています。
鬢付け油はどんな整髪料よりも硬度があるので、複雑な形を長時間キープしたり、何度も結い直せる性能の高さは随一ですね。
替えが利かないです。

複雑な髷を形作るには鬢付け油は最強
浮き根に鬢髱、細い髷を保てる。
まげメガネさん渾身の疫病本多

中)
儂は使っていません。 
ジェルとウェットタイプのワックスを混ぜて使っています。

風になびく弾き茶筅には鬢付け油は不要
中元さんの雰囲気と相まってかっこよく風を感じる

か)
髷を立たせたり、複雑に形作る髷には昔ながらの鬢付け油がやはり最強。
弾き茶筅のように後ろの毛には動きが欲しい髪型には、鬢付け油は不要と言うことですね!

これも時代劇のかつらに通じるところがあります。
また、床山、かつら師以外から、中練りと言う言葉が出るとは驚きです!

京びんつけのぎんだし

ところで、この結髪時に使う材料や道具、

⑩鬢付け油、元結、結い櫛は一般ではなかなか見かけませんが、どちらでお求めになりますか?


中)
儂は使ってはいません。

南)
私は、鬢付け油は地毛髷の集会の際に顔合わせして以来、浅草のメーカー星徳商店で。
一人では難しいため元結は不使用です。
櫛は京都河原町の十三やにて買いました。

四条河原町、明治八年創業のつげ櫛と飾りの老舗。
九(く)  と  四(し)で【十三や】

ま)
私も鬢付け油は星徳商店さんで。ご縁があり懇意にして頂いてます。お好みの硬さでも作って頂けるんです。
元結はAmazonで買えます(笑)
櫛は廃業予定の職人さんから運良く譲っていただけたものをずっと使っています。
櫛はスタンダードな結い櫛ひとつだけで頑張ってるので、細目のものも欲しいですね。

かつらの床山さんは様々な櫛を使い分けて結い上げる

か)
まげメガネさんは元結を使っていらっしゃるんですね。ご自分では難しくないですか?

ま)
難しいです。ここで鬢付け油のメリットが活きるのですが、油だけで髪を硬く固定出来るので、めちゃくちゃ元結が使いやすくなります。

元結(もとゆい。私たちは【もっとい】と呼んでいる)
太さや色も様々あるが、やはり一番使うのは白

か)
元結を巻くのは、かつらでもなかなか難しいのに、ご自分でされてしまうのは脱帽です。 
南部さん、まげメガネさんとも、同じ鬢付け油屋さんでお求めになられているんですね。
そこで月代組のネットワークが活きてくるわけですね。

情報交換に、『月代組』のネットワークは大変役にたつ

鬢付け油は関東と関西では粘りや香りが違います。  
また、大相撲、舞妓等の地髪の結髪と、
芸妓、花嫁、歌舞伎、時代劇、それぞれのかつらの業種の違いでも使用する油が変わります。   
 
床山さん曰く、立役と女形でも使う油の種類は変えているそうです。

用途によって種類があり、違いのある鬢付け油ですが、共通するのは水やお湯では落としにくいことです。地毛ちょんまげでは

⑪洗髪の頻度はどれくらいですか?


南)
結ってから2,3日は維持するのでそれくらいの頻度です。

ま)
原則的に毎日です。
夕方以降に髷を結った時や、汗のかきづらい冬場なんかは3日間くらいは保たせたりします。

中)
儂は毎日洗髪しています。

か)
やはりそこは現代。
江戸時代のように1ヶ月に数回の洗髪という訳にはいきませんね。
ところで、

⑫何を使って洗っていますか?

ま)
私は、お化粧を落とすクレンジングオイルです。知り合いの結髪師さんや、日本髪を愛好としている女性に聞きました。
一発で落ちるので最高です。
 
実は、クレンジングオイルを利用した鬢付け
油落としに関しては動画を上げています(笑)

良かったら参考にどうぞ!

中)
儂はパンテーンを使っています。

南)
私もシャンプーのみです。

か)
中元さんの弾き茶筅は髪の動きと艶が大切ですからパンテーンは、サラ髪には効果大ですね!

講武所風弾き茶筅は動きと艶が大切

鬢付け油は非常に粘度があり、かつ水溶性ではないので非常に落としにくいのが特徴です。

かつらでは、沸騰した熱湯に衣類洗濯用の粉石鹸を使って落としています。
ですから、南部さんのシャンプーのみには驚きました!
鬢付け油落ちるんですね。

クレンジングオイルは、日本髪を愛する女性達のお墨付きでしたらしっかり落ちるんでしょうね。かつらでも今度試してみます!

さて、洗髪した後ですが、

⑬寝る時はどの様にしていますか? 


南)
色々試しましたが、茶筅髷の都合支障がないので、そのまま仰向けや顔を横に向けて寝ています。

ま)
私の場合は鬢付け油で結髪しても落としてから寝るので、普通の枕で寝ています(笑)
鬢付け油をつけて寝る時は「寝る時用の髷」に結い直します。

中)
儂は結う位置を首の辺りでヘアゴムで緩めに結っています

か)
皆さん箱枕等の昔ながらの枕ではなく、髷を工夫して、普通の枕でおやすみになられているんですね。
箱枕は使うと、首と肩の筋肉がガチガチになると聞きます。やはり普通の枕が使い勝手がいいんですね。

南部さんの棒茶筅は、髷の根取りと、一(いち:髷を二つに折り曲げている部分)がないので確かに髷は邪魔になりませんね!
戦国武将は寝るとき特に不都合なく寝られていたのだと想像できました!

後頭部から髷が一直線の棒茶筅は寝ても髷が乱れにくい


か) 
中元さんの髪型ですと、忠臣蔵の討ち入りや兜下の、『くくりざげ』のような雰囲気なんですね。
それもまた武士らしくカッコいいですね!

さて、今シーズンは希に見る猛暑続きで、ついに酷暑日もあらわれました。男性でも日傘が必須な、きつい日射しが連日照りつけていますが、

⑭これからの季節、月代の日焼け対策はどうしていますか?


南)
日焼けすると、人によっては月代がヒビ割れるらしいと聞いてはいますが、特に対策はしていません。

ま)
原則、外に出ません。
どうしても月代を出すなら、日焼け止め必須ですね。
以前は月代に髷の形の日焼け跡が残る
「まげ焼け」が粋だと思っていましたが、最近は色んな形の髷を試しているので、まげ焼けが作りづらいなと感じています。

中)
外出では、儂はなるべく日陰に入るようにしています。

木陰だと日射しも幾分柔らかくなる

か)
髷焼け!
真夏の炎天下でも野外ロケーションのある時代劇の撮影で、髷焼けを実際に見たことがあります。

スキンヘッドにされていたその俳優さんは、羽二重を着けずに直にかつらを掛けていました。
ロケーション後メイク室でかつらをおろすと、頭頂部にしっかりと髷焼けができていました。
  
頭全体に日焼け止めを塗り、その上から青黛を塗っても、京都名物灼熱地獄には勝てなかったみたいです。
  
中元さんの雰囲気ですと日除け、雨風除けに網代笠を使われると、お似合いになりそうですね!

今年は平年以上に日射しがきついので、南部さんぜひ対策して体調に気を付けていただきたいです。

ところで、

⑮生活される上で月代を剃ったメリット、デメリットはありますか?


南)
月代を剃っているのが日常になってしまったのでメリット、デメリットについてはわからなくなってしまいました。
強いてあげるならば、注目を集めやすいのがメリットだが、時としてデメリットでもあります。

大月代は目立つのがメリットの反面デメリット。
しかし、もう日常なので気にならない。と南部さん。

ま)
メリットは、長髪と坊主の魅力が両方楽しめる事。デメリットは、長髪と坊主のめんどくささが同居している事。
ちょんまげは長髪の艶っぽさ、剃髪のスタイリッシュさが同居している最強にかっこいい髪型ですね。
代わりに長髪部分のヘアケア・剃髪部分の繊細さに難儀します。それぞれの境目の処理も少し面倒です。

髷は実は色々に楽しめる。
髷を【眼鏡髷】にしたまげメガネさん
           結髪:関場明子さん

中)
儂の場合店をやっている為、メリットは宣伝になる。覚えてもらえる。
デメリットは喧嘩をよく売られる。

眼光鋭く、しかし喧嘩は買わない

か)
良くも悪くもやはり月代は目立つんですね。
そしてそれぞれが短所長所になる、複雑な美意識の中に出来上がているのが垣間見られました。
  
境目の処理が意外と面倒とは考えもおよびませんでした。地毛ならではの手間ですね。

中元さんの喧嘩をよく売られるっていうのには驚きました。そんなこともあるんですね。

そういえば、私の友人が月代を剃り地毛ちょんまげだった頃、一緒に行った初詣でどこからか
 
「侍がいる!石投げたろうや!」
  
と言う声が聞こえてきたことを今、思い出しました。そういうのは、やっぱり嫌ですよね。

「石投げたろうや!」と言われた初詣の時の友人

さて、ではそれぞれ皆さんの

⑯お仕事に於いて、月代でのメリットや、印象的な出来事はありますか?


南)
仕事において、今のところメリットには直結してないと思います。
自分宛のお客様ではないですがよく覚えてもらえるのはありがたいです。

ま)
土産物屋の接客時、
「OH〜You’re SHOGUN〜❤️」
と猫撫で声で値切りを迫る海外の方が特に印象的でした。
将軍が侍より上位の存在であることを知られていたのが、嬉しかったですね。

土産物時代のまげメガネさん。
着物にパーカーは現代では定番の着こなし

ちょんまげでヘッドホンをして電車で寝ていたら、「それ地毛ですか!?」と肩を叩かれて起こされた事もあります。
仕方がない事とはいえ、ちょっとイヤでした。(笑)

この雰囲気でヘッドフォンだと
意外と気付かないかもしれない。

中)
先程の通り店をしているので、宣伝ではメリットです。印象的な出来事は特に無いですね。

か)
やはり覚えてもらえやすい、他と差別化をはかれる、宣伝になるというのは仕事上、商売上、とても優位なんですね!
  
まげメガネさんのベッドホンの件は、驚いて声をかけてしまったその人を想像したら、思わず声を出して笑ってしまいました(笑)

失礼いたしました。

海外の方にも将軍が知られているようですが、

⑰インバウンドで海外のお客様が増えています。反応はいかがですか?


南)
国内外の方を問わず声をかけられることが多いです。
声をかけてくる割合としては確かに国外の方が多い気はします。
国内の方が声をかけてくる場合、結構関心の強い方が多いのでそのまま雑談に発展することもあります。

お城といったらやはり武将
観光地だとより声も掛けられやすい

ま)
浅草の土産物屋に勤めていた時は、反応は上々でした。
しかし、海外の方は「地毛である事」には触れない、もしくは気づかないので、日本にまだ侍がいるという誤解を与えてしまっているかも知れません。

中)
日本人が思い描くような喜び方をする外国人はいません。
ハンバーガー屋で米軍3人と隣になった時は
『Hey! look! look! oh my god!』
と言われたことはあります。
が、基本、似合っていれば『いいね、似合ってるね、カッコイイ』と言うくらいです。

風景とも相まってカッコいい

か)
私は質問しながらステレオタイプに
『Wow! A samurai! So cool!』
『Take a picture! Wow! I'm so happy!』
なんてキャーキャーを想像していたのですが、意外とそこまでではないのですね。

海外の方の、感情をストレートに表現する感じと、日本と言えば
『フジヤマ、ゲイシャ、サムライ』
と思っているんだなっと想像していた私が、
ステレオタイプの外国人だったのかもしれませんね。
南部さんの、地毛ちょんまげがきっかけで雑談に発展するって言うのは、「ああ、いい出会いだなあ~」と思いながらお聞きしました。

海外の方以外にも日本人ですら
月代+髷=侍  
のイメージが強いですが、町人も月代と髷の組み合わせです。
  
職業毎に様々な髪型があり、月代と髷を見ると職業、年齢までわかったといいます。

町人髷。町人ももちろん月代を剃り、髷を結う。
侍との一番の違いは、ゆったりとした髱(タボ・つと)
              結髪:関場明子さん   

そんな沢山の髪型の中から

⑱お三方、それぞれ魅力ある髪型をお選びになっています。選ばれた理由は何でしょうか?

南部さん:大月代を選ばれた理由は何ですか?

南)
織田信長が好きな為、ビジュアルを肖像画に寄せていく中で大月代にしたいと思ったからです。

馬上で凛々しい南部さん。
大月代に、緑の肩衣袴。白の小袖から赤い半衿が覗く
信長公のお馴染みの肖像画と瓜二つ。


まげメガネさん:疫病本多を選ばれた理由は何ですか? 

ま)
Youtubeに月代を作る動画をアップしたのですが、「疫病本多、絶対に似合うのでやってください」とコメントが来たのがきっかけでした。

月代を大きく剃り下げる事から他の髷が結えなくなるので、実行までは考えていませんでしたね。

ただ毛量を減らす事でケアが楽になる事や、ニッチでレアな髷を再現出来るメリットがあった為に実行しました。
  
今ではマジで気に入っています。

色気全開!【疫病本多】
 撮影:ことみさん 結髪:関場明子さん

中元さん:講武所風月代を選ばれた理由は何ですか?

中)カッコイイから

確かにカッコいい!!

か)
中元さんの、簡素にして明解な侍らしいお答え。しびれました!

南部さんの、憧れの人物に近づきたいとの想い、今風に言えば限りなく推しに近づきたい。それを現実にする熱意に感服です。

ひょんなことから形にすることになったまげメガネさんの疫病本多。この色気を実際に目にすることが出来るとは思ってもみませんでした。感激です。

さて、皆さん現在もそれぞれ大変お似合いで魅力的ですが

⑲これから試してみたい髪型はありますか?


南)
勿論本多髷なども興味はありますが、生涯大月代茶筅髷だと思います。

江戸・銀杏髷の周東孝一さんと共に。
他の髷にも興味はあるが、
最期まで敬愛する信長公を追い求める

ま)
髷が細い疫病本多は、ハチャメチャに気に入っていますが、今後は髢(かもじ)を作って、以前のような武士風の太い髷も結えるようになりたいですね。
現代の月代持ちの中で、最大の振れ幅を持つ人間になりたく。

まげメガネさん渾身の【疫病本多】

疫病本多も、クオリティを上げたいですね。最近、鯨の髭を買ったので芯に使ってみました。

根の芯に見えているのが鯨の髭
鯨の鬢は昔は裃の肩衣の張りにも使われていた


中)
額が薄くなり頭頂部も薄くなりいよいよ髷が結えなくなれば、剃髪する予定です。

最期まで【剃る】に、潔さを感じる

か)
推しを最期まで、新たな挑戦、潔くと、皆さんそれぞれに想い描いているんですね。

共通するのは最期まで『剃る』心意気をお持ちなこと。ひしひしと伝わってきました。

1000年以上続いた日本男子の月代ですが、

⑳月代を剃り髷を結ってみて、安土桃山や江戸の世に思いを馳せることはありますか?


南)
歴史にあまり明るくないですが、会合などで時代劇のようなワンシーンを想像したりはします。

ま)
もう既に身近過ぎて、普通に暮らしてるだけでは江戸に思いを馳せることは無くなってしまいました(笑)
博物館によく行くのですが、浮世絵などでちょんまげの人物を見た時には思い出します。「本来の居場所、こっちだな」って。

中)
身分によっては鏡や剃刀も無いと思うので、当時は頻繁に毎日剃っては無かったんじゃないかと思っています。

か)
皆さん、もう既に当たり前の日常になっていて、過去の月代ではなく、現代を生きる令和の月代として生活されているんですね!
  
私も毎日のように月代や髷を目にしていて、当たり前の風景ではあります。
しかし、全て時代劇用の作り物であり、また自分自身が月代を剃っていないので
実際の月代はわからないことだらけ。
 
今回皆さんにお答えいただき改めて色々と参考になり勉強になりました!

日本全国にはまだまだ地毛ちょんまげの仲間入りをしたいと思っている人達がいるかと思います。

最後に、

これから地毛でちょんまげを結ってみたいと思っている方に一言

ごさいましたら。

中)
やるならプライベートでもどんな場所でもカツラや帽子で隠したりせず毎日結うのを勧めます。
逃げ道を断ち覚悟を示さないと信頼されません。

月代は覚悟の現れ。まさに令和の侍、中元さん

ま)
いろんな意味で「0か100か」の髪型だと思ってます。
自分自身がハマれるか、家族や職場に受け入れられるか、髪を伸ばすのか剃るのか。
  
私は月代専用のウィッグを作ったり、地毛ちょんまげ生活エピソードをたくさん知ってますので、個人的には、TPOに応じてウィッグや帽子を被る選択肢もアリかなっと思ってます。
  
お困りの方はどうぞご相談下さい!

地毛月代、地毛ちょんまげのことなら
  まげメガネさんに!                  
           結髪:関場明子さん

南)
個性的で特徴的な髪型ですが、日本人にあった格好いい髪型だと思います!着物と一緒に始めてみませんか!

着物との相性は間違いなし!
着物と共にお洒落を楽しんでと、南部さん。

か)
決意と覚悟が必要な地毛月代、地毛ちょんまげの世界ですが、日本人らしい美意識の塊の世界でもあります。
  
お三方共、月代を実際に体現されています。そして月代を楽しみ、月代と共に日常をすごされています。
そんな皆さんに覚悟と同時に、月代と髷に対する大いなる愛を感じました。
  
みなさんの月代と髷に対する愛をお聞きしていてふと、

『男性版・櫛祭り』


をいつか開催できたら思いました。

『櫛祭り』は日頃使っている櫛、簪に感謝し、役目を終えたそれらを清め供養する神事で、
毎年、9月の第4月曜日に
東山の安井金刀比羅宮で行われます。

東山、東大路に面して鎮座する安井金比羅宮
境内の片隅に静かに佇む久志塚(くしづか)
柵の透かしが櫛になっていて可愛らしい。

神事の後に時代風俗行列巡行として、各時代の髪型を地毛で結い上げた女性達が神社周辺、祇園界隈の通りを練り歩きます。    
綺麗に結い上げられた、各時代の髪型や日本髪はとても華やかで見とれてしまいます。   

久志塚の由来記    

本家の櫛祭りとは別に、男性の各時代の髪型も地毛で結い、巡行しながら魅力をお伝えできる。
そんなイベントを開催できたら素敵だなあと感じました。
    
さて、皆さんには、先月に続き今回も貴重なお写真のご提供、また、今回はお忙しい中お時間頂戴し、沢山の質問にお答えいただきまして感謝と共に非常に嬉しく思います。    

これからも素敵な月代生活を送れますよう祈念しております。  

また、今後のご活躍楽しみにしております!    

今回は誠にありがとうございました!


さて二回に渡りました月代の世界、如何だったでしょうか?
お話をお伺いしたお三方以外にも、たくさんの方のご協力を賜りました。

皆さん、SNSもされて様々に情報発信されています。


皆さんの各媒体のチャンネル登録やフォロー、いいね!、もぜひ宜しくお願いいたします!

またお問い合わせ先なども併記してございます。
ぜひご覧になって下さいませ。


南部信風さん 

X(旧Twitter) @nobukaze_nambu

日々、色々赴くままにポストされています。
安土桃山時代がお好きなだけあって、鎧や兜など戦国らしいポストやお写真も載せてられます。
江戸時代とはまた違った魅力を様々発信されています!是非覗いてみて下さい。

三英傑の一人、織田信長公。
タイムスリップしてきたかのような南部さん

まげメガネさん

まげメガネさんのSNS一覧⬇️


まげメガネさんに
イベント盛り上げて欲しいな!
物販販促のお手伝いお願いしたいな!
などのお仕事のご依頼はこちらをご覧下さい⬇️

お祭り、イベント様々にかけつけ盛り上げてくれます!
物販のお手伝いもいたします!
発酵ジンジャーエール『しょうがのむし』をお手伝い
周東孝一さんとまげメガネさん

まげメガネさんのQ&A完全版はこちら⬇️

未公開回答や未公開写真も盛りだくさんの完全版の記事です!
素敵なコスプレ写真も見られますよ!

中元義詮さん 

Instagram @hagi_samurai

中元義詮さんの広島お好み焼き【萩侍】は萩市観光協会公式サイトにも載っています⬇️
萩市へ観光の際はぜひお立ち寄りください!


刀をコテに持ち変えて。広島お好み焼き【萩侍】

広島お好み焼き【萩侍】
 木金土19:30~27:00(食事26:30ラストオーダー)
 日月火16:00~23:00(食事22:00ラストオーダー)
       ■22:00~席料500両
※休戦日(休み)、営業時間の変更等はInstagramに毎月掲載されています。
ご確認の上ご来店下さい
                
     カウンター10席 萩市吉田町76

早い時間帯はご家族で、また夜が更けたら二次会、三次会にもご来店いただきやすく深夜営業されています!
お酒の〆にもお好み焼きをどうぞ!


周東孝一さん

今回お写真でご登場いただきました周東孝一さん。
アジア初の発酵ジンジャーエールメーカー
『しょうがのむし』を経営されています。

公式オンラインショップもありますので、
「飲んでみたいな!」とお思いの方は是非ホームページからお問い合わせください!

ホームページには、創業のきっかけや、企業理念・もの作りに対する熱い想いも満載。髷についても載っています。
Instagramやnoteもされています!

〒337-0014埼玉県さいたま市見沼区大谷1262-3
      株式会社しょうがのむし

発酵ジンジャーエール『しょうがのむし』


関場明子さん

関場明子さんは埼玉県川越市で結髪師をされています。また各種イベントなどで結髪実演もなされております。
結髪実演を開催されたい方、実際に地毛で日本髪や男髷を結われたい方はホームページからお問い合わせ下さいませ!

 【和の手仕事屋】
埼玉県川越市通町13-1和風てらす1号
 営業時間:年中無休 / 完全予約制 / 時間応相談

ホームページ

結髪実演で髪を結う関場明子さん


ことみさん

まげメガネさんの疫病本多の撮影をされたことみさん。

Xにはカッコ良く素敵なお写真が溢れています!

お写真の拝見、撮影のご依頼など、ぜひXを覗いてみてくださいませ!

カメラマン:ことみさん
 X(旧Twitter) @kotomi_pi_photo


宵闇と街路灯のコントラストが心に沁みる
ことみさんの作品


【お盆特別企画・月代てんこ盛り】お楽しみいただけましたでしょうか?

さて、次回からはまた新たなかつら作りのお話です。

次回もどうぞお楽しみに!

※当noteでご紹介する写真は、全て筆者撮影のオリジナル写真です。また、被写体及び、今回の様に他者撮影の写真を使用する場合は、全て許可を得て掲載しています。
当noteの文章・写真の転載、加工、二次使用は
ご協力者以外なんびとにも許可しておりません。
ご注意願います。



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