【かつらのお話:女形襟羽二重・墨染】
襟金の下貼りと平行して
襟羽二重の準備をします。
こんにちは。京都時代劇かつらです。
今回は前回ご紹介した、女形の襟羽二重に墨染の加工をしていきます。そんな墨染のお話です。
羽二重に人毛を刺した襟羽二重を薄墨色に染めます。
これは羽二重の白さが目を剥くのを抑えるのと、
羽二重に張りを与えて折返しの切り口がほどけにくくする役割とがあります。
薄墨色に染めるのには書道の墨を使います。
墨汁でもよい様に思いますが、墨汁を使うと経年で羽二重がボロボロに風化してしまうそうです。
墨汁に入っている防腐剤なのか添加物なのかはわからないのですが、そういうものが影響しているのかもしれません。
むかしから親方に、
『墨汁つこたらあかん。羽二重ボロボロなる』
と聞かされてきました。
確かに経年でボロボロになった羽二重を見たことはあります。
日に焼け、茶色く変色した新聞紙のようにボロボロと崩壊していました。
それが墨汁のせいなのか他の要因があるのかはわかりませんが、確かに墨染した昔の羽二重だけ崩壊していたので、あながち間違いではないのかもしれません。
さて、墨汁ではなく、硯で墨を磨って使うのは一見非効率な感じもしますが、羽二重の崩壊予防の他にも利点があるように思います。
と言うのも、今思い返してみるとその時間は、墨を磨りながら次作業の段取りや、色々な考えを整理している時間に使っているように思うのです。
墨の良い薫りを楽しみながら磨っていると、どこか心がスッキリしてきます。
意外と仕事の合間の
一服の清涼剤になっているのかもしれませんね。
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