【かつらのお話:女形の刳】
地金の段取りが出来上がった鬘はいよいよ鬘のキモである
【刳】(クリ)
の貼り付けに入ります。
こんにちは。京都時代劇かつらです。
今回は、鬘の生え際、【刳】のお話です。
【刳】は女形、立役と形が違います。
人間の実際の生え際を見比べるとわかるのですが、女性と男性は形が違います。
その形をより強調して、
女形はより女性らしく
立役はより男性らしく
作っているのが鬘の【刳】です。
今回は女形の鬘ですので【刳】も雁金が利き、小額は、なだらかな定番の形になっています。
この【刳】が、役の性根を表現するポイントになるので非常に神経を使います。
最近の映画、テレビはほぼ全て、女優さんの実際の生え際を利用して半鬘になっています。
ですのでなかなか【刳】がある全鬘を見かけなくなりました。
以前は、
鬼平のおまさや久栄
斬九郎の蔦吉
水戸黄門のかげろうお銀や疾風のお絹
銭形平次のお静、
など【刳】のある全鬘でした。
今は定期的に放送している時代劇で全鬘なのは
必殺の花御殿のお菊ぐらいでしょうか。
中村主水の時代は、せんもりつも全鬘でしたが、渡辺小五郎の今は、てんもふくも地毛を生かした半鬘になっています。
撮影カメラもテレビモニターも技術の向上でとてもクリアに鮮明に映し出すようになり、今は全鬘だと【刳】を植えているチュール(網)がばっちり見えてしまいます。
ですので、全鬘は映像に耐え得るのはなかなか難しいのが現状です。
しかし、全鬘はリアルではないかもしれないけれど様式美を大切にする作品には、綺麗に作り上げられた【刳】はやはり素敵だなとも思います。
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