4話:月のしずく(漫画家泉麗香先生作画入りの同絵本はAmazonで販売中です)
ぼくはこの家のお嬢様に拾われてきた猫。
名前はナイン。
もちろん、お嬢様がつけてくれた名前。
ぼくも結構気に入ってるんだ。
え?お前がお嬢様を好きだからだろうって?
そんな事、あたりまえじゃないか!
別にぼくだけじゃなくっても、お嬢様に会って、お嬢様の歌を聴けば、誰だって好きになっちゃうさ。
そんなにお嬢様は素敵なんだ。
お嬢様はいつもぼくに優しくしてくれるしね。
お嬢様の眼差しはいつも優しくて、笑顔はいつも輝いていて、優しい声で話す言葉は羽毛の様にぼくの心を包むのさ。
ぼくたち猫って、人になびかないみたいに言われるけど、そうでもないよ。
だってぼくはもうお嬢様にメロメロ。
お嬢様のためだったらなんでもできる。
と言っても、猫のぼくにできる事なんてしれてるけどね。
ああ、もっと力が欲しい。
トラさんやライオンさんの様に大きくなくてもいいけど、強い力が欲しい。
だから、ぼくはね、いつも月の女神さまにお願いしているんだ。
ぼくにお嬢様を守れる力をくださいって。
知ってる?
ぼくたち、猫の守り神は、月の女神さまなんだよ。
だから、ぼくたちの目がお月さまが見えない昼間に細くなるのは、目の中にお月さまを映しているからなんだよ。
昨日、ぼくは夢の中で月の女神さまに会ったんだよ。
女神さまは言ったんだ。
「おまえの気持ちは良く解った。今度の中秋の名月の前の三日月のしずくをお飲み。
そうすると、月が満ちた夜の月の光を浴びておまえは人間に変わる事ができる。」
本当かな?
女神さまを疑っちゃダメだよね。
ああ、本当に人間になれるといいな。
本当に人間になれたら、ぼくは真っ先にお嬢様に会いに行って、ぼくをお傍に置いて頂くんだ。
もし、夢でしかなかったとしても、ぼくはずっとお嬢様の近くでお嬢様をお守りしていられるといいな。
月の女神さま、ぼくの大好きなお嬢様のお傍にずっといさせてくださいね。
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