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#12 大学生から教わった、旅と旅行の違い【ボリビアの旅】
【前回までのあらすじ:2013年。35歳ヒモ男がバツ2となり家を追い出され向かった先は地元繋がりの成功している経営者a.k.aアニキ。人生相談すると世界一周の旅に放り出されることに。南米から旅が始まったのだが初日から高山病に】
高山病は薬で抑えているもののギアが上がらない僕。こういう小さな困難やトラブルが積み重なって旅は辛くなるのではないかと思う。とにかく旅が始まったばかりなのに激しい頭痛に襲われているような状態でアゲアゲの旅は完全に困難だった。
甘党の僕は、気晴らしに美味しいスイーツを食べられるカフェを教えてもらい行くことにした。どうやら泊まっていたホテルの目の前にあるようで、体力もさほど消耗しなくて済む。
大袈裟ではなく部屋を出て手すりに捕まりやっとの思いで階段を降りた。お店に入ろうとすると、カフェからちょうど出てくるヨーロッパから来たと思われる女子二人。
ラパスの妖精かと思った。高山病も和らいだ。美人すぎる。僕は早速、話しかける。
「オラ!どんなデザートがあった?美味しかった?」
メニューは店外に貼ってあったし、美味しいことは噂で知っていたが、旅ってこういう女子とのスモールトークの積み重ねで甘くなっていくじゃないかと思う。
すると、わちゃわちゃと身振り手振りでスィートな話をしていると偶然が引き起こ起こった。
タクシーが停車し、ドライバーと揉めている日本人風の男の子。お金を握りしめ、あたふたしているではないか。お金のトラブルなら足長おじさんa.k.aカツオに任せなさい。(この12時間前にタクシーに軽くボラれたばかりだが)
妖精との会話をポイ捨てし、その行方を眺めていると、なんと、あたふたしているのは日本人大学生の有名旅人ではないか!
バックパックはロストバゲージし、小さいカバンは盗まれ、最終的にビニール袋で世界一周の旅を続けたツワモノ。最後の方はお金もなくなってしまい最終的にラスベガスで出入り禁止になりながらもブラックジャックで大勝し、帰国のチケットをゲット。「世界一周ブログランキング」で伝説的な人気をほこり一位を獲得して帰国していた人物だった。
彼とは日本で開催されていた旅イベントで知り合い、10分程しか話さなかったが、卒業旅行をかねて南米を旅していた。この日にラパスに入ることは知っていたし、僕が当初宿泊しようとしていた「ホテル サガルナガ」で会えたら良いね、という話になっていたのだが、僕はホテルを変更していたし、彼もアマゾンやらガラパゴスに行っていて連絡が取れていなかったので、会うことは諦めていた矢先であった。
彼は開口一番
「あれ、かつおさんだ。会えたぁ〜。
そこの女性達もご一緒ですか?」
二行目はかぶせ気味に聞いてきた。というか僕と目が合う前に、女性を見ていたので、
あの子たち可愛いなぁ、ん?
あれ、かつおさんだ。会えたぁ〜。
そこの女性達もご一緒ですか?
が正確な表記だろう。トラブル中でも、まずは女性に目がいくあたり僕と気が合いそうだ。
「この人達には、たった今話しかけたばかり。それよりどうしたの!?」
揉めている理由を聞くと、タクシーで15ボリ(約200円)かかったのだが、あいにく彼は100ボリ紙幣しか持ち合わせてなく、運転手がお釣りが無い!とのこと。まさに12時間前に僕がやられたことだ。南米のタクシーテンプレ集に記載されているのかもしれない。
しかし、ご安心を。旅中、困った時やピンチの時、まさかこんな場所で、こんなタイミングで!出会うのはあるあるで、"困った時の旅人引き合わせの法則"ってのがあるよ。と出発前にアニキから聞いていた。
こうやって僕が彼に出会ったの、偶然ではなく、この法則に従っているだけらしい。僕も旅人の端くれとして15ボリを支払う。(彼は律儀にあとで返してくれた)
そして、僕が宿泊しているホテルが安いということで案内すると、やはり、この男タダものではない。
ホテルにチェックインするクールな姿
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「あれ?ズボンのお尻が凄い破けてるよ!」
「そうなんですよー。1週間くらい前にやぶけちゃって。」
親の形見なのか?なぜ買い換えない?
聞くところによると数年前に高円寺の古着屋で800円で購入したという。
捨てなさい。
僕は高山病でかなり辛かったが、12時間早くラパスにいるので先輩面をしたく、チェックインした後二人で散策に出かける約束をした。
「早速一緒にボリビアの街を散策しよう!何かやりたいことある?」
Kくん
「針と糸が買いたいです」
だから、捨てようぜ、そのズボン!破れ方が度を越しているよ!
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下着を着替えてセクシー度が増している。事実、ボリビアについて30分しか経ってないのに誰よりも話しかけられていた彼。
いや正確には、話しかけられているというより笑われていたのかもしれない。
Kくんも
「セクシー?セクシー?」と嬉しそうに聞き返す。
何?この天真爛漫さ。生きているだけで周りに笑顔を与えてくれるオトコ。
ひらけた場所でパンツ丸出しにしながらスケボーをやるも、ズッコケて皆に温かい目で笑われる。彼現るところに、笑う出会いあり。
実際、彼のウケ具合は、ラパスの大道芸人を超えていた。そして、彼はそれを狙っていない。自然体なのだ。ヒッピーに話しかけては、温かいお茶を一口もらい、ギター屋さんに入れば歌がプレゼントされた。
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僕は出来るだけ彼と行動を共にすることに決めた。
"旅"ってなんだろう。ずっと考えていた。
僕は35歳にもなって突然旅に出発してしまい(無理矢理だけど)、知らなかったのだが、こんなボリビアのラパスという街には、日本の大学生から大人まで、さらにはヨーロッパ人やイスラエル人など世界中の旅人がゲストハウスに集っていた。
旅行と旅の違い。
全くわからない。
でも僕はK君を見て、なんとなく感じてきていた。きっと、いや間違いなく彼はそれを意識していないけど、彼は旅をしていた。
旅とはありのままの自分。自然体で見ず知らずの土地を歩くことなのではないか?経歴や学歴、地位、お金、これら全てを取っ払い一個人としてありのままの自分がどうやって人と関わり生きていくかを見るところなのではないか?
僕がそれまでに経験していた、期限、方法、目的地、予算がはっきりと決められているツアー旅行旅行とは明らかに違った。
能動態であり受動態。
旅とは過去と現在と未来を全て映し出す物語。
ありのままを受け入れ、感じ取る。僕は、この数日で明らかに意識していた、自分という存在。
自分探しという言葉が好きではないが、自分の感情をちゃんと横から見て触って嗅いでいた。
誰かが困ってる。助けたくなる。
誰かが笑っている。混ざりたくなる。
誰かが泣いている。僕も悲しくなる。
日常生活でもきっと感じ取れるんだろうけど旅に出ることで、よりシャープに鮮度が上がった。
道を歩いていると、僕の母と同年代らしき人がぼろぼろな洋服と靴を履いて、コップを差し出してくる。
お金を恵んでくれというわけだ。
ポケットにあるコインを差し出した。僕も貧乏だし、人に恵んであげるほどの余裕はないし、物乞いにも幾度と無く出くわしていたし、幾度と無く無視している。
だけどその日は、気がついたらポケットに手を突っ込んでいた。
旅中この行為に関しては賛否両論があることも知っている。
あげるべき、あげないべき。
誰なら良くて、誰ならダメか。
わからない。
ある旅人からは「お金を数十円恵んだところで、その物乞いの未来を救えない。むしろお金をあげることにより、その人が更に他の観光客にタカるかもしれない。なので、物乞いにはお金はあげるな」と言われた。わかっている。もちろんお金をあげて自己満を得られるかといえば、謎だし、事実、僕の心が浄化されることもなかった。
でも自然体であるとき、僕は物乞いの彼女を見て遠くにいる自分の母を思い出し、愛おしささえ感じた。
この旅で、僕は自然体になれたのだろうか。それは今でもわからない。
まだまだ旅は続く。
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