#8 世界一周によくあるテーマ「自分探し」の正体

【前回までのあらすじ:35歳ヒモ男がバツ2となり家を追い出され向かった先は地元繋がりの先輩で成功している経営者。人生相談すると強引に世界一周の旅に放り出されることに。しかも旅のブログランキングで1位になるまで帰国できないという条件付き】

出発数日前。朝起きると母が僕に聞いてきた。

「カツオ、何するつもりなの?」

そりゃそうだ。息子が突然2度目の離婚をし、実家に戻ってきたと思ったら大きいバックパックやら寝袋、一眼レフカメラを買い始め、真っ昼間からマクドナルドに出かけていくのだ。(旅の情報収集や、ブログはマクドナルドに篭って書いていた。)そして、夜は夜で部屋に閉じこもっているのだ。

母はとにかく心配していた。

毎日ブラブラしている僕を見て。

どんな母親だって超不安になり、聞きたいこと盛り沢山だっただろう。

僕は心配をかけないように優しく伝えた。

「うんとね、オレ世界一周に行くんだよ!普通、旅に出るっしょ。今のオレの状況なら。」(常識的に考えて、普通なら旅に出ないのだが!)

僕を少し見つめた後、母が口を開く。

「・・・そうなのね。そうよね・・・。で、世界一周と言っても、どこに行くつもりなの?」

毎日、部屋に溜まっていくグッズを見て母親は気がついていたのだろう。話が早い。

「アメリカに入ってすぐ南米に行く。」

「そう。その次は?」

「多分、アフリカ」

「そう。その次は?」

「多分、ヨーロッパかな〜」

「ね、ねえ、、?アフリカって1つの国なの?違うでしょ!?ヨーロッパだって色んな国が集まってる呼び名なんでしょうが!ちゃんと答えなさいよ!!なんか、あなたの話しを聞いていてもすべてがアバウトすぎるのだけどどうなってるの?まさか、あんた、出発直前なのに何にも決めてないの?!?!」

オトコの説明が、オンナの知りたい欲求をしっかり満たさないと女はキレる。

さじ加減が難しく、取り扱いを間違えるとヒステリーを起こす。それがオンナなのである。by バツ2男

イヤですな。まぁまぁ、熱いお茶でも入れてさ。落ち着いて話そうじゃないか。

と言いたいところだが、なにゆえ、私、旅流しの刑、受刑者。ルートも何も、まずウユニ塩湖から入るって事しか決まっていなかった。普通ならワクワク感あふれるであろう世界一周前の会話もすぐに途切れた。

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 誰もが一度は無くしてしまう「自分」。しかもこの「自分」、非常にタチが悪く、常に意識して使うものでもないので、滅多に開けない物置の鍵のように使う時になってはじめて無くしてしまったことに気がつく。

 ああなりたい、あれやりたい、俺はこう思う、若い頃、居酒屋で尖っていた自分も社会人になりペコペコやっている間に丸くなり相手の要求を飲んでいるうちに本当の自分の意見が分からなくなってしまった。

 もしかしたら、大人とはパチンコ玉のように丸くなって、お互いが引っかからないように円滑に、下の穴に落ちていくことを言うのかもしれない。

 いつの間にやらそんなマルマルになった僕は、嫌気がさして鏡に映っている自分に向かって大声で吠えた。


「てめぇ!!めっちゃ普通!!いや普通以下!!つまんねーんだよ!!バカ!!この早漏野郎が!!」



膝から崩れ落ち、涙がこぼれた。お前、それ言いすぎじゃね?

我ながら傷ついた。早漏のくだりも要らない気がしたが、発した言葉は戻らない。

人はそんな時、「自分探しの旅」に出る。

 でも果たして本当に自分を探しているのだろうか?僕自身も非日常である海外に行くことも結構あったので、何かを見つけられたら良かったけど「ダイエットは明日から♪」よろしく、出国前には現地で何を食べるか買うかで頭がパンパンで自分のことなんて全く考えていなかった。

 つまり、僕は本当に自分探しの旅なんてしたことがなかったのだ。

 自分探しって、ダイエットと同じかもしれない。100回くらいトライして1回成功できるか出来ないか。しかもリバウンドするし。
 かなり本気で取り組んで時間をかけ、科学的に、そして周りに寒いと思われながらも突き通さないと成功しない。
 ほとんどの人が自分探しをし、見つけたと思い短期的に雰囲気が変わったとしても、やはり本質的には変わっておらず元通り、なんて姿を皆様もみたことがあるかもしれません。成功確率がとても低い、本当の自分探し。

 だからこそ、敢えてやっぱり僕はこの時、世界一周という一生に一度あるかないかの冒険のサブテーマは「自分探し」で良しとした。

 

ありきたりだけど!!(笑)


仕事。友人。人間関係、家族。すべてを一回日本に置いて出発するのだ。

本気で見つけに行く。半端ない覚悟。

絶対見つけてやるんだ!!!

イノウエカツオ君を!!

そして、旅先のどこかで、そいつに、、、本当のカツオに、会えたら、めいっぱい抱きしめて耳元で囁くんだ。

「ずっと探してたよ。」って。

続けて言う。

「えー、なんか想像していた人よりイケてますね。いつも電話やメールだけだったから。。勝手に色々と想像し、、、あっ、ごめんなさい。私ったら一人で。わ、わたしどうですか?ちゃんとカツオさんが思い描いていた人ですか?ずっと不安で。。私、バカだし、自分のこと何にも出来ないし、いい加減だし、無責任だし、、、、なんか、ごめんなさい。」


カツオが答える


「大丈夫だよ。これから僕といっしょに頑張っていけばいいから。安心して。いつでも助けてあげるから。」

「かつおさん!なんて大きい器なの!!もう大大大好き!!!」

胸に飛び込む。かつおは優しく背中に手を回す。

「ははは。これからさ本当の僕という人間をじっくり観察して。もっと好きになれそうな所を探してくれる?僕も君の話をもっと聞きたいな。時間はたっぷりあるよ。僕と君はこれからずっと一緒に歩いて行くんだから。」

そう言うとカツオはサングラスをかけ、私の手をしっかり握りしめて歩き出した。

そこは、まばゆいばかりに輝く日常だった。

昨日まで暗く足元もおぼつかない場所が嘘みたいだった。


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noteは週2,3回ほど更新し、【旅の準備→世界一周→起業→会社売却】までを気長にまとめようと思います。面白いと思った方はnoteまたはTwitterをフォローいただければ幸いです。

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