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#21 幻覚と嘔吐とネジ。アヤワスカ体験記【ペルーの旅】

【前回までのあらすじ:2013年。35歳ヒモ男がバツ2となりホームレスに。行くあてもなく向かった先は成功している先輩経営者a.k.aアニキ。人生相談すると世界一周の旅に放り出されることに。ボリビアの次に向かう国はペルー。強烈な民間療法をしてくるシャーマンに会いに行くことに。】 


うだるような暑さの中、虫が僕めがけて寄ってくる。テング熱が怖い僕は蚊帳の中で懐中電灯をつけて読書をしていたのだ。

 夜9時01分。ここでもう4ヶ月間シャーマンに弟子入りしているというロシア人が外から一言声をかけてきた。

「セレモニータイム」

 彼女の後に続いて、25角形ぐらいのサーカスのテントみたいな形をした木造の部屋に入る。

昼間に撮った儀式の部屋


やっぱり当日のセレモニー参加者は僕だけだった。
正確には僕と助手のロシア人。

シャーマン マテオは既にそこにいて簡単なマットの上で横笛みたいなのをピーピー吹いて怪しげな雰囲気を醸し出していた。

その左隣にロシア人のマットが敷いてあり、彼女はそこで坐禅を組むように座り、僕はマテオが指した奥側のマットへ行き、なんとなくロシア人を真似てあぐらをかいた。


ピ〜ヒー ピ〜匕ー


音楽とも動物の鳴き声とも言えない音を奏でるシャーマン。今朝の雰囲気とは違い近寄りがたい。

完全に違う世界を作り出していた。

目はどことなく一点を見つめていては時折、ファァァああ とアクビなのかお経のようなものなのか、素人には全く分からない仕草をする。

時間にして15分くらいだろうか、独自の間で笛を吹いたり止めたり。たまに口で音を出したり。


その他、僕の耳に入ってくる音と言えば、虫の鳴き声や動物の足音だけだ。


シャーマン マテオはおもむろにパイプを取り出してマッチに火を点けた。



ジッ、ボファ シュウゥ〜ぅ



マッチをする音がテントに響いた。先ほどの笛の音が思っていたより小さいことに気がつく。



ブゥーーーー ペッ 

ブゥーーーー ペッ



マテオは大きくブゥーと音を出しながら身体全体に煙を何度も吹き付ける。

その後は必ずツバをペッと吐き出した。


ウロウロ歩いては部屋全体にブゥーー。ペッ。

外に出て行ったと思ったらブゥーー。ペッ。


ひと通り吹付けの儀式?が終わると自分のマットの上に座り、隣に置いてあったペットボトルの中に

ブゥーーー、ブゥーーー

と煙を吹き入れた。ペットボトルの中には泥水のような液体が入っていて、その液体と煙を混ぜる。

きっとこれがアヤワスカなのだろう。察しがついた。

と同時にツバを吐き入れないで良かった!と安心する。


まずはロシア人に1杯つぐマテオ。

まっず!!という顔をして飲んで、コップを空にすると


「エスタ ビエン、エスタ ビエン」(very good)


マテオに笑顔でお礼をしていた。次は僕の番だ。

ショットグラスより大きく、紙コップよりひと回り小さいグラスにマッコリのような液体が入っている。僕は手に取り、


ゴクン、ゴクン、ゴク。
ぐらいで飲み干した。


味は、ほんのり醤油のような塩っぱさに、お焦げを入れ、洗剤で味付をし、アクセントにゴーヤを潰したものを入れた感じ。


一言で表すと、吐きそうなほどマズイ。


この状態で灯りを消して、2,30分ほど待って何も変化を感じなければ、もう1杯どうぞ。という事だった。


僕はマットに横になったり、座ったりしながら、“その時”を待った。

数十分経っても、目は慣れず暗闇で殆ど何も見えないし、自分の身にも何も変化を感じなかったし、感じる雰囲気も無かった。

「なんだ、まやかしか?こんなところまで来て時間とお金を大量に無駄にした」なんて思いながらマットに横になるとiPhoneを取り出して時間を見た。

22:43分

セレモニー開始から随分と時間がたっていた。

「くだらねぇ!!」と思うも、自分の部屋に戻るのは怖い。万が一この後に何か変化があったら嫌すぎる。

ひとまず目をつぶって寝ることにする。どれくらいたっただろうか?遠くの方から歌が聞こえた。

いや、シャーマン マテオが歌い始めたのだ。同じフレーズを何度か、そしてまた次のフレーズに。スペイン語ではなさそうだ。

ウンパカショーメラメード♪

ウンパカショーメラメード♪

こんな感じだ。とっても心地よい音程とリズム。

僕は寝そべったまま、そっと目を開けてみた。







グゴォォォォォォォォ!!!!!





うわぁぁーーーーー!!!!!




天井がガタガタと1角ずつ引っかかりながら回転している!!!!



その回転は途中引っかかっては上下に揺れ、まるで遊園地のメリーゴーランドの様に上へ下へ揺れながら、グルグル回る。


そして蛍光の青、赤、黄色、緑、紫の細い糸が規則正しく編まれていて、30cm四方くらいの布のようなものがある。(これが幾何学状の模様というのかもしれない)

その布が、ありとあらゆる天井の支柱に蛇のように這っては絡みつく。

模様はこれに近いイメージ。色はこれを蛍光発色させた感じ。


シャーマンの歌は止まらない。





グゴォォォォォォォォ!!!!!!!!!




ぐらんぐらん廻る天井にカラフルな幾何学状の模様。




うぉーーーーー



アヤワスカ、これ「悟る」というより、「キマる」だな、やっぱり。


いや、キマるというより、目が廻る。




オェェェェェェェ!!!!




たまらず横に用意された洗面器を引き寄せ、吐こうとするが、ほとんど食べていないので胃液みたいなものだけ出る。


気持ち悪すぎる。吐くために起き上がることさえ辛いのでまた横になる。

どれくらい回転が続いただろうか?しばらくするとガタガタして止まり、幾何学状の模様だけが天井を這う。

僕はゆっくり目をつぶった。すると巨大な船の舵があらわれて僕はそれを回したい。


おりゃーーーーー!!!


ピクともしない。一生懸命押していると幼稚園時代からその時まで知り合った名前や顔も忘れていた人たちが大勢現れた。懐かしいという気持ちはなく当たり前のように皆で一斉に船の舵を動かく。

ビクともしない。僕は掛け声を出す。



せーーーーの!!



やっぱり動かない!!と思っていると、後ろから巨大な手で舵を回す誰かが現れた。僕は舵を回すので必死だったので顔は見ない。

でも分かったことは、僕らは全員小人だったということだ。僕も含め、今まで出会った人間は皆、力を合わせたところで舵一つ回せない無力な小人達だった。

巨人が簡単にグルっと舵をひねると、扉が開いた。

これは船の舵ではなく、何か大きな金庫の扉のようなものだった。その中に入ると僕の慣れ親しんだ地元の運動公園があって自転車がポツンと一つ置いてあった。


僕は思い出した。。。

僕は、ずっと「一緒に遊ぼう」という一言も言えないシャイな子供だった。

臆病で根性がなくて、いつも母親の帰りを待っているんだけど母親は仕事から帰ってくると「外で遊んでおいで」と言って僕を外に出した。近くの公園には遊具が沢山あるのだが、そこには同じ学校の人がいるかもしれないから違う学区にある運動公園で1人でよくボーっとしていたのだ。

胸が締め付けられた。僕はそんな自分が嫌で無理をして自分を変えようと努力し続けた。それは20歳を超えてからだと思う。

僕は皆と遊ぶのが大好きだった。誰でも良かった。何をしても良かった。誰かと一緒にいれることが一番好きだった。
「一緒に遊ぼう」その一言がずっと言えないだけで随分と寂しい時間を過ごした。寂しいだけならいいが今思うとあれは完全に無駄な時間だった。


このアヤワスカの一人旅で僕は確信した。


今の僕は誰にでも話しかけるし、少々ウザがられるほど馴れ馴れしい。

でも、良いのだ。

僕はちゃんと自分なりに進化しているんだ。

旅に出るずっと前。

社会のネジになるのが嫌だったけど、途中で社会のネジにすらなれない自分を知って傷ついた。ネジは素晴らしいのだ。ネジにすらなれない人間がネジを馬鹿にするが、ネジになれない奴は実は世の中に寄生していたりするのだ。

世界は完全にネジで出来ている。


ネジになりたい。


僕にはまだ蛍光の青、赤、黄色、緑、紫の細い糸で織り込まれた布が見えていた。これはきっと僕の遺伝子なのかもしれない。

そしてさっきの大きな舵。

あれは運命みたいなものなのか?いくら僕の過去を頼りに這いつくばっても動かせない大きな運命。

僕は誰かの見えざる手を頼りに自然の流れに身を任せ、ありのまま全ての現象を受け入れるしか無いのだろうか?

いや、そうでもあり、違うとも言える。

僕はまだまだ変われる。この旅でもっと強くなって、もっと磨かれるんだ。

変わった僕は自分だけがなれるネジを見つけて、蛍光の糸をしっかり巻き付けるんだ。


時間を確認すると2:30を過ぎていた。


僕はシャーマン、マテオの方向に手を合わせ、自分の部屋に戻った。



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note頑張って更新します!目標は週2,3回、、、、【旅の準備→世界一周→起業→会社売却】までを気長にまとめようと思います。面白いと思った方はnoteまたはTwitterをフォローいただければ幸いです。

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