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無職男と時給870円女子の起業物語【第3話:半径1mの資金調達】

前回までのあらすじ。無事に六本木駅徒歩1分の俳優座ビルで家賃10万の物件を見つける。開店資金をどう調達するか問題に。


物件も見つかり、いよいよ現金が出ていくフェーズに入った。27歳の麻美、36歳のカツオ。世間から見れば年上のカツオが開業資金を出すのが普通だろう。しかし彼はバツ2。経験がある方には説明不要だが、男は離婚をすると金が一気に減る。男に非があろうが無かろうが関係ない。
それを短期間で2回もくぐり抜けたカツオ。僕も100%非がないのに減るどころか無くなった。むしろマイナス状態。

今まで歳下の彼女に机上の空論で綺麗な餅を描いてみせても、肝心なお金の話になるとモゴモゴする。

「会社を登記する際は株数っつうのを決めてさ。出資金とかに応じて株を分配するわけよ。2人で同額出しあって株50%ずつにしよう。僕らは信頼してる同士だから大丈夫、大丈夫!」

現場で働くのは麻美なのに詐欺師のようなトーク。
バツ2になった原因も少しは彼にありそうだ。麻美ちゃん大丈夫?!と皆様の声が聞こえてくる。

店舗の家賃が10万でも、敷金礼金などの初期費用で50万、内装と備品で70万。合計120万はかかると見積り、運転資金も考慮し資本金300万円で会社を登記することにした。

150万を担当することになった僕。無論そんな金はない。来月の生活費だって危ういのだ。
そこで、工場勤務をし女手ひとつで僕を育てあげた年金生活者の母に聞いてみることにした。言いたい事はわかる。いい歳した男が年老いた母に金を無心するとは情け無いな?カスだよな?しかし僕は以前、あかぎれした手で洗い物をする母が放った言葉を覚えていた。

「あんたが将来困った時のために少しずつ積み立てるから、何かあったら言ってね」

まさに困ってるナウであった。母は細かい事を聞かず50万円を貸してくれた。

次は幼少期から離れて暮らす父に連絡。
世界一周の旅から戻った息子がいよいよ起業するという。期待を膨らませた父は嬉しそうに待ち合わせ場所のファミレスにやってきた。

「事業を興す。ワックス脱毛サロンを彼女と開業するんだ。しかし金がない、貸してくれないか?」

親父はブラジリアンワックスを知らなかったので、デリケートゾーンの脱毛だと説明すると、周囲の客を気にせず声を張り上げた。


「世界一周までして見つけてきた商売が、人様の陰毛を抜くことか!!!」


ショ、ショ、ショ、ショーーーーーック!!!
ストレートな表現するなよ!!
その通りだけど!!
だからこそボリュームを目一杯下げてくれ!!ここはファミレスだ!

僕は小声で
「そうだよ、人様の陰毛を抜く商売だよ!!他の部位も脱毛するんだけどポイントはそこじゃないんだ。TVCMでも見たことがあるだろ?人様のムダ毛を処理するだけで何百億、何千億の金が動いてる業界なんだ。しかも抜いても抜いても翌月には生えてくる。僕が話しているのは金のなる木、いや金のなる毛がそこらじゅうに生えてるってことなんだ。」

「そこで女に働かせて、カツオは何をするつもりなんだ?!」

モゴモゴしてからミュートするカツオ。

家族連れの楽しそうな声が聞こえてくる。
「麻美と結婚を考えている。僕ら2人で泥臭く小さいところから始めたいんだ」

親父は僕のためというより、麻美さんへの応援代だ!ということで50万を貸してくれた。

残り50万。いや正直あと100万は欲しい。
カツオは起業がそんな甘くないことを知っている。すぐに金儲けなんて出来ない。当面の生活費も必要だ。とにかく金を集めるしかない。

麻美の状況を聞くと高校生時代からバイトしてコツコツ貯めてなんと300万近くの貯金があった。立派だと思う。つまりカツオがいなくても開業できる状態だ。カツオの存在ピンチ!

そこで僕は隣にいる麻美に頭を下げることにした。この文字を読んだ貴方の言いたいことはわかる。
「こいつはカスだ、カツオじゃない。カスオだ。麻美ちゃん早く逃げてー!」だな。満場一致だと思う。

カスオはビジネスパートナーの重要性を説いた。麻美は現場で働く、カスオは裏方で必死に働く。つきましては出資金90万ほど負担して欲しい。ただし株は50%で対等の立場でよろしくお願いします。と伝えた。

そしてどれくらい本気かというと俺は死ぬ気で働く。なぜなら麻美が世界で一番大切だし大好きだから。麻美に結婚を申し込んだ。
商売が失敗して幻滅されたり、周りから逃げた方が良いよと言われる前に結婚して法的にも守られたいのだ!鉄、いや結婚は熱いうちに打て作戦。

婚約指輪も結婚指輪も何もなし。2000円で小さいガラスの靴に入った花をプレゼントした。

僕らは結婚し、資本金300万円で会社を登記。代表取締役はもちろん麻美。
株式会社ファイブテイルズと新家族の誕生だ。店舗名は二人で旅して最高に楽しかったスペインのパーティーアイランドIbiza島からIbiza Waxと名付けた。

Ibiza島のCafe Del Marにて

店の雰囲気は綺麗な夕日が見えるIbizaの人気店 Cafe Del Marからインスピレーションをもらう。

友人に手伝ってもらい内装をDIY。

ポイントの青とマーブル柄フロアでCafe Del Malを表現できてる気がする!

2014年真夏の8月1日にオープンが決まった。
次回は店を軌道に乗せるまでにやった集客方法について書いていく。


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ホームレスになったヒモ男、世界一周したら小金持ちになった話。

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無職男と時給870円女子の起業物語
【第1話:火傷しない商売のルール】
【第2話:スパイ大作戦と砦の確認】
【第3話:半径1mの資金調達】
【第4話:六本木No.1戦略】
【第5話:洗面器に顔を突っ込む】
【第6話:飛び道具の開発方法】
【第7話:無鉄砲な当てずっぽう】
【第8話:順調は不調の始まり】
【第9話:1億円を燃やして得た教訓】
【最終話:最高のマーケティング、そして売却へ】

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