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#108『昔歳の糸⑧』

再度車に荷物を積み、キャンプ場を後にした。
ただの緑。
僕には、窓の外がそうとしか捉えられなかった。
帰りの車に楽しみはなかった。
茫然自失としていると家に着いた。
帰宅してすぐ絵日記に取り掛かり、キャンプ場であったことを書き連ねた。
星を見たことは書かなかった。
というか、書けなかった。
記憶の中の星が生きていない。
名前までも失った。
出し抜けの流れ星でさえ、僕の記憶の中では輝きを無くした。
今の僕は空き缶だ。

それからというもの、僕はそこらによくいるおませな子どもになり、物事を心底楽しむことが減った。
正確には、興味を持つことが壊滅的に下手になったと言うべきだろう。
新しく見聞きしたことも、何故か知っているという錯覚が僕を辛辣に襲った。
俗に言う知ったかぶりだ。
外の世界に一切の夢を感じず、自分の内側へと理想を求めた。
僕は内向的な人間へと急速な進化を遂げた。
元々なかんずく活発なわけではなかったが、僕の好奇心のエンジンは殊の外早く止まった。

そして、今の僕に至る。

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高松 克成
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