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#105『昔歳の糸⑤』

次の楽しみを見つけるべく弟と作戦会議を開く。
多くの案が出るわけもなく、唯一の案である山の探検に行くことにした。
それから父に希望を話し、体勢を整えた。
右手に木の棒、左手にも木の棒で、頭に麦わら帽を乗せた僕ら兄弟の風貌は滑稽なものだっただろう。
悪いね!虫取り網が無かったんだよ!
と、愚痴は置いておいて、探検隊の出発だ。
探検というだけで心が躍るのは、僕ら兄弟だけじゃないだろう?
男性諸君。


山の起伏は、(両手の木の棒を手放さざるをえなかったのは、かなり、というか無茶苦茶悔しいが)なんとか登れる程度だった。
まあ、登り終えた後にいくらでも手に入るだろう。
道のように見える道を無秩序に進み続けること数十分、探検隊はお地蔵さんと邂逅した。
僕と弟は新発見をしたと思って目を輝かせたが、そんなことはなかったらしい。
管理人さんの話では、いつ建てられたかは分からないが、戦時下、疎開していた子どもたちを護ったと言われている凄いお地蔵さんらしい。
かなり苔生していたが、僕はその両目に心を落ち着かせ、僕たちを惹きつける淡い光をはっきりと見た。

その後にも色々あったのだろうが、何故か覚えていなかった。
気付いたら僕はコテージにいた。
父が言うには、歩いてきた道とは違う道を進みだし、比較的なだらかな道を先行したらしい。
僕たちが家に向かっている頃、地蔵に合うまでに通った道で落石があり、負傷者が出たと聞いた。
両親は青ざめ、安堵していたが、僕は頭にハテナが詰め込まれていた。
覚えてないのだから仕方ない。

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高松 克成
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