【小説】うさぎの女王様~私は下僕です~④
10日目~黒真珠~
「王女様……。昨日よりもさらにくつろいでますね」
真上から見ると大の字になって眠っている、多分。
うさぎ様は目を開けて眠るのでわからない。
多分寝ている。
「環境になれていただけて何よりです」
うさぎ様ってこんなに伸びるのか。
胴体が……長い。
「聞こえておるぞ。あたちの悪口を言っただろ」
「言ってません。3日目にしてこんなに……。うさぎ様は繊細な生き物だと伺っていたので」
「繊細じゃ! 失礼な! 契約したときに何を聞いておったんじゃ! 貴様の耳はどうなっているんじゃ!」
3日目にして大の字で寝るなんて聞いていない。
「ご飯にしましょう」
「飯じゃ飯じゃ」
「私は今日仕事で外出してきますから。初めてのお留守番ですね。大人しくしててください。近所迷惑ですから」
「なんじゃと! 留守番くらい知っとる!もぐもぐ」
「食べるか喋るかどちらかにしてください。どんどん外に散らばってるじゃないですか」
はあ。
俺は女王様のお世話の他に事務仕事をしている。
女王様に関する日々の業務連絡だ。
観察日記のようだが、これがとても大変重要な仕事である。
ご飯の量、黒真珠の量、おしっこの量、体重、その他もろもろ。
黒真珠とはうさぎ様のうんぴのことである。
その形状からそのように呼ばれている。
業務日誌にも「黒真珠」と書かれている。
そしてうさぎ様の下僕の中には黒真珠収集家が少なからず存在する。
毎日いくつの黒真珠があるか一つ一つ数え、瓶詰めにするのだ。
まあ、俺はゴミ箱へポイだけど。
この黒真珠について少し話すと、大きさや色で体調がわかるのだ。
牧草の色が混ざり、大きく、繋がっていない、これが基本だ。
繋がっていたり、小さかったりすると「うっ滞」という病気の可能性があるから即病院だ。
うっ滞についてはいつか詳しく話すことがあるだろう。
今日の女王様の黒真珠はつやがありとても綺麗な形をしている。
健康そのものだ。
さて、これだけなじんでいれば留守番も安心して任せられる。
「行ってきますね」
そう声をかけてドアを閉めた。