子どもの短距離走指導における注意点
〜『月刊陸上競技』のAthletics Science Report第3回より〜
短距離走能力の発達は加齢に伴い直線的か?
疾走速度はPHV年齢の手前までは加齢に伴い発達し、PHV年齢付近で一時停滞もしくは低下する、そしてPHV年齢より後に加齢に伴って再び発達する。
PHV(Peak Height Velocity)年齢とは?
→身長が急激に伸びる身長スパートが起こる時期のこと。
PHV年齢予測
①Boys
=-9.236+0.0002708(leg length × sitting height)+0.001663(age × leg length)+0.007216(age × sitting height)+0.02292(weight / height × 100)
②Girls
=-9.376+0.0001882(leg length × sitting height)+0.0022(age × leg length)+0.005841(age × sitting height)+0.002658(age × weight)+0.07693(weight / height × 100)
疾走速度の加齢に伴う成長は何に起因しているのか?
Ⅰ.PHV年齢より前は身長の増大に伴う歩幅の増大が影響
主に形態の変化によって疾走速度が発達すると考えられている。
ストライドは、およそ15歳まで加齢に伴って右肩上がりに増大していく。
ストライドを身長で除した値については、6歳以降で一定であるという報告も加味して考えると、ストライドの発達の大きな要因は身長の増大によるものであり、身長が伸びればその分、ストライドが大きくなることが考えられる。
Ⅱ.PHV年齢以降は短距離走に欠かせない筋量の増大が影響
短距離走能力と筋量との間には有意な相関関係が認められている。
つまり、大きな力を出すために必要な筋量が成長に伴って増大することで、疾走速度の発達が起こると考えられる。
Ⅲ.PHV年齢前の疾走速度の停滞要因
PHV前、もしくはPHV期間中に、疾走速度の一時停滞が起きる要因として以下の2つが考えられる。
⑴ピッチの低下
→原因は増大した下肢の重量に対して、それ以前と比較して、脚をスムーズにスウィングすることが困難になるために起こる、ぎこちなさによるものである可能性が示唆されている。
→また、増大した下肢の質量や総体重に対して、筋力やパワー発揮といった機能の発達が追いつかなくなることに起因するとも考えられている。
⑵地面に対して発揮するパワー値の一時的な停滞
したがって、動きが崩れないよう最適化することや、PHV年齢付近から筋力トレーニングを開始することで、負の影響を低減できる可能性がある。
成熟度と年齢
PHV年齢はおよそ12歳とされている。
しかし個人差があることを忘れてはならない。
早熟な子どもと晩熟な子どもを比較すると、およそ4歳の差があると言われている。
つまり年齢による組分けを行うと、身体の成熟度が異なる子ども同士を競わせることになり、成熟が進行している者が勝つシステムになってしまう。
そこでヨーロッパやアメリカなどでは、身体の成熟度ごとに組分けを行い、スポーツ活動を実施する「バイオバンディング」という概念が推奨されている。
お忙しい中最後までお読み頂き本当にありがとうございます。表現力もままならず、拙い文章ではありますが今後とも見守って頂けますと嬉しいです。ぜひまたお時間の許すときにお立ち寄り下さい!お待ちしております。