おやすみ、母さん。
星と星が喧嘩した。
そして、
ぼくと母さんは、離れ離れになった。
「母さん行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
それがぼくと母さんが最後に交わした言葉。
ぼくは、1人でとなりの、星へおつかいにいったんだ、母さんは、とても心配したけど、ぼくは、ちょっと大人に近付いたから、だから、母さんの誕生日の日に、となりの星にあるキラキラ光る砂を取ってきてあげるんだ!
母さんには、その事は内緒で。
「母さんきっとよろこぶぞ!」
そして、いきなり星と星との喧嘩が始まったんだ。
ぼくは、母さんのいる星へ帰れなくなった。
帰ろうとした人達が、何人も銃でうたれていたよ。
「母さん、母さん、会いたいよ、帰りたいよ」
ぼくは、毎日毎日、母さんの顔を想い浮かべ、母さんの声を思い出し、ずっと光る砂を入れた小さな瓶と、お手紙を握りしめていたよ。
休む場所もなく、みんな、外で寝たりしていた。
ある日、銃を持った大人の人が、ぼくのとなりにいた、女の子の腕をひっぱっていき、それに逆らったその子のお父さんが、銃でうたれたよ。
何度も何度も、お父さんは、その子を助けようと逆らって、銃でうたれた。ぼくは、とても怖くてずっとふるえていたよ。
ぼくに、お父さんがいたら、同じように守ってくれたかな?
お父さんは、ぼくが、今より少し小さな頃に、病気でいなくなっちゃった。
「母さん」
結局、女の子は、帰ってこなかったよ。
もう、何日も、何も食べてないから、お腹と背中がくっついちゃった。そして、なんだかとても寒いんだ。
母さん、とても心配してるだろうな、早く帰らなきゃ、そして、光る砂を。
ドガーン
と、寝ていたらいきなり眩しい光と、大きな音が聞こえたよ。周りにいた銃を持った大人の人達が、みんな両手を空に上げて、喜んでいたよ。
なんだろ?おまつりかな?
もしかして、もう帰れるのかな?
だとしたら、母さんに会いたいな、早く光る砂とお手紙わたさなきゃ。
「母さん、もうすぐ帰れるよ!」
早く会いたい、ぼくは立ち上がろうとしたんだ、そしたら、あれれ、立てないや、体が言うことを聞いてくれないの。今日は、帰れないかも。
「母さん、もう少し待っていてね。」
少しだけ寝たら、会いにいくからね。
少しだけ寝たらね。
「おやすみなさい。」
~手紙~
〖大好きな母さんへ
いつも美味しい料理をありがとう。
いつも、優しい笑顔をありがとう。
いつも、イタズラしてもあまり怒らないでくれて、ありがとう。
いつも、一緒に寝てくれてありがとう。
母さんずっとそばにいてね、
ずっと一緒にいようね。〗
「早く会いたいな。」
「母さん、おやすみなさい。」
一刻も早く、この星から喧嘩がなくなりますように。