翼をください
神様『ばかもーん!』
シェリル『ごめんなさーい!!』
むか〜しむかし、キミたちの知らない世界のお話し、遠いようで近いような世界、とある天使のお話し。
神様『これで何度目だ!また違う魂を天国へみちびきかけたな!』
シェリル『違うの神様、あの魂は、悪い事ちゃんと反省して、助けて欲しいと言ったのよ!だから、救いたかったの。憧れの天使、テレサ様のように、深い愛をもって。』
神様『いつも言っとるじゃろ、悪い事をした魂は、すぐに天国へは導けぬ、ばつをあたえねばならないのじゃ!天使シェリルよ、お前は、愛に深い。じゃが、深すぎる。』
と、シェリルは、ぽろぽろと涙を流し言いました。
シェリル『何がいけないの?わたしは、沢山の魂を愛でいっぱいにしたい。世界を愛でつつみたい。人を幸せにしたい!きっと悪い事をした人も、救えるわ。』
神様『だめじゃ、そんな簡単な事ではない。そして、お前のした事も、簡単には許されぬ。シェリルよ、試練を与える。まずは、翼を片方、地上に落とす。』
シェリル『え、翼が片方じゃ天使の力が半分しか使えないわ、それに、飛べない!』
神様『よいか!翼を最初に拾った人間を、幸せにしなさい。そうすれば、翼を戻してまた天界にも戻してやる。』
シェリル『なーんだ!かんたん!わたしの深い愛で、たちまち幸せにできるもん!』
と、神様はあきれ、言いました。
神様『はぁ、お前は何もわかってないな。
まーよい!』
すると、神様が、シェリルに向かい右手をかざすと、まばゆい光にシェリルが包まれ、あっという間に天使の翼が片方消えてしまいました!
シェリル『あー!左の翼がない!ほんとに、とれちゃった、えーん。』
神様『さぁ、翼は地上に落とした、さぁ、次はシェリル、お前が地上に落ちる番じゃ。』
シェリル『え!えっと』
すると、今度は、神様は左手をシェリルにかざしました。と、たちまちにシェリルは、地上へ真っ逆さまに、ヒューーッと、落ちていきました。
シェリル『ちょ、まーーーーー!!!』
神様『やれやれ。』
ある教会に、一人の男の子がおりました。
名前は、ムート。
ムート『今日も良い事が、たくさんできました。神様、いつも見守ってくれてありがとうございます。』
ムートは、お祈りを終え、教会の外に出ました。すると、空がキラキラ輝き、綺麗な綺麗な翼が片方、ひらひらと空から降ってきました。
ムート『え、なんだあれ、翼が、片方降ってきた!』
と、あわてて、翼をキャッチ!
ムート『綺麗な翼。それに、とっても軽い』
と、ムートが翼を見ていると、またまた空がキラキラ輝き、なんと空から、女の子がゆっくり、フワフワと、降ってきました!!
ムート『えー!!空から女の子が!』
あわてて、ムートは、翼を置き、女の子をキャッチ!!
ムート『軽い!えっ!?翼がある、しかも片方だけ、まさか、て、て、天使!?』
シェリル『う、うー、うん?』
ムート『あ、気が付いた!』
シェリルは、ムートの腕の中で目覚めました。
シェリル『いつの間にか気を失ってたのね、て、あなただれ!?』
ムート『ぼくは、ムート。きみが突然、空から降ってきたんだ。きみは、天使?』
シェリル『あっ!』
と、置いてある翼に気付き、
シェリル『わたしの翼!』
と、ムートの腕から降りました。
ムート『やっぱり!天使だー!!凄い
や。』
シェリル『最初に翼を拾った人間、、、』
ムート『そ、そうだけど。』
シェリル『わたしは、天使シェリル、あなたを幸せにします。』
ムート『え、』
シェリル『何か、困っている事はない?』
すると、ムートは置いていた翼を拾い上げ、
ムート『翼をください!!』
シェリル『はぁーー!?』
ムート『ぼくは、天使になりたいの!!』
シェリル『そ、そんな、簡単になれるわけないでしょ。』
ムート『ぼくは、沢山の人を救いたい、そして、沢山の人を幸せにしたい。だから、』
シェリル『いま、なんて?』
ムート『沢山の人を幸せにしたい。ぼくは、ずっと一人ぼっちだったから、悲しくて悲しくて、しんどかったから、こんな気持ちを誰にもしてほしくない。だから、天使になって神様のもとで、もっと沢山の人を救いたいんだ。』
シェリル『わたしもよ、世界を沢山の愛で包みたい、沢山の人を幸せにしたい。そう思ってやってきた、けど失敗ばかり。神様に怒られて、翼をとられ、落っことされちゃった。』
ムート『この翼、きみのなんだね、困っているんだね、返すね。』
と、翼を返しました。
シェリル『ありがとう、でも神様じゃないと、もとにもどせないの。わたし、どうしよう。最初に翼を拾ったあなたを、幸せにしなきゃならないの。』
と、シェリルは涙をぽろぽろと流しました。
ムート『かわいそうに、ぼくは、きみを助けたい。それに、ぼくは今、とても幸せだよ。』
シェリル『え、』
ムート『夢にまで見た、天使に会うことができたから、ぼくも一緒に神様にお願いしてあげる。』
ムートは、教会の中に入り、お祈りをささげました。
シェリル『わたし、なにしてんだろう、自分の気持ちばかり考えてた、わたしの為に、こんなに純粋な心をもった人間、なんて美しいんだろ。』
ムート『神様に届いたかな。シェリルがもとに戻れますようにって沢山お祈りしたからね。』
シェリル『ねぇ、あなたは、ちょっと私に似ている、けど、私は良い人も悪い人だってみんな、沢山救いたいの、けどそれは許されない事なの。悪い人には、ばつがあるから。』
ムート『ぼくも、悪い人救いたいって思うよ、けど、それで、悪い人のために、傷ついた人もいる。ぼくは、パンを盗んだ事があるの。』
シェリル『え、』
ムート『すむ家もなくて、食べるものもなくて、とてもとてもお腹すいちゃって、お店にあるパンを盗んだ。今でもずっとその時の悲しげなパン屋さんの顔を夢にみる。』
シェリル『そう、あなたは、とても純粋なのね。』
ムート『けど、ぼくは悪い事をしたから、それからいつも、お祈りささげてる。毎日毎日、困っている人を助けてる。』
シェリル『わたし、あなたのようになれるかな?』
すると、そこへどこからあらわれたのか、おじいさんがやってきました。
おじいさん『すまんが、何か食べものをめぐんでおくれ、昨日からなにもたべておらん。』
ムート『大丈夫?すぐに何かもってくるね。』
と、ムートは、食べものを探しに、行きました。
おじいさん『イヒヒヒ、だまされただまされた。』
なんと、おじいさんはお腹なんてへっていません、どろぼうでした!
シェリル『なんてこと!ムートにしらせなきゃ』
そうそう、
天使の姿は、おじいさんにはみえてません。
悪い心のものには、見えないのです。
おじいさん『お、こんなところに十字架のネックレスが、イヒヒヒ。』
と、そこへムートが、
ムート『え、そのネックレス』
おじいさん『ちっ、ずいぶん早く戻ってきおった!』
と、おじいさん、ムートに、襲いかかりました!
シェリル『やめなさい!!!』
そのシェリルの声と同時に、おじいさんが石のように、かたまってしまいました。
ムート『何が、起きたの!?』
シェリル『わたしの、半分もっていた力で、この人の魂を抜いたの。』
ムート『戻してあげて。』
シェリル『けど、またあなたを襲うかもしれない。』
ムート『シェリル言ったよね、悪い人も救いたいって。』
シェリル『言ったよ、けどそれでは、だめなの、だめなのよ。悪い人にはばつをあたえる。そうでなきゃ、傷ついた人が、、、傷つく人が、けど、それでもわたし、わたしの愛は。いったいどうしたら良いの?わからない、わからないのよ。』
ムート『きみの、思うがままに。』
シェリル『思うがままに、、、わたしの、思うがままに。』
と、
シェリルは、おじいさんの魂を優しく戻してやりました。
おじいさん『いったいなにがあったんじゃ?まーいい、おい、小僧、金をだせ!』
と、再びムートに襲いかかろうとしています。
シェリル『だめ!お願い!やめて!もう
力が出ない。やっぱり救えないの、、、ムート逃げて!』
しかし、どうしたことか、ムートは逃げません。それどころか、にこにこ笑っております。
おじいさん『ま、ここまでじゃろ、テレサ。』
ムート『そうですね、神様。』
シェリル『え、神様?テレサ?』
すると、おじいさんとムートがキラキラ輝き、光に包まれ、神様と天使テレサの姿になりました!
シェリル『えーーー!!!神様に、天使テレサ様!?』
神様『まだまだじゃの、シェリルよ。』
テレサ『実は、あなたをずっと試していたのよ。あなたの、その愛の深さを知るために。そして、あなたが愛の深さを知るために。』
シェリルは、泣きながら言いました。
シェリル『わたし、わからない。愛の深さって、悪い人は悪い、けれどそれでも、反省すれば良い人になれるって、そう信じてきた。魂をみちびいてきた、けど、それが間違いならば、わたしなんて、いらない。わたしは消えます。』
神様『こりゃっ!逃げるでない。シェリル、お前の愛は間違いではない。まだまだこれから魂をみちびく中で、成長していくんじゃ。』
テレサ『そうよ、そんなあなたに、とっておきの場所があるのよ、ただ、今よりちょっとしんどいけど、それでも、覚悟はあるかしら?』
シェリル『わたし、見つけたい、わたしのほんとの愛の深さを。』
テレサ『わかりました、あなたはこれからわたしと一緒に、地獄におちた迷える魂を救い出す!』
シェリル『地獄、、、。』
神様『どうした?嫌ならこのまま消えてしまうか?』
シェリル『いえ、わたし行く!テレサ様とともに。』
神様『シェリルよ、愛深き天使よ!』
テレサ『さぁー、しゅっぱーつ!!』
シェリル『ちょ、ちょ、ちょ、その前に、片方の翼をつけてくださいな。』
神様『あっ』
テレサ『てへ』
シェリル『ちょ、もーーーー!!!
翼をくださーーーい!!!』
今も、どこかキミたちの知らない世界で、天使シェリルは、愛の深さを探しながら、迷える魂を救っているのかも。
おーしまい